絶対値を含んだ方程式での「解なし」条件とは?

プチ研究方程式・不等式プチ研究

 数学Ⅰの教科書に出てくる絶対値を含む方程式の多くは、不適解があるものの、適する解が1つ以上必ず出てきます。
 では、場合分け後の解がすべて不適となる「解なし」が出てくることはあるのか? また、そのための条件を探ってみましょう!


目次
  • 1. Ⅰ 「解なし」の例
  • 2. Ⅱ 「解なし」となるための条件

Ⅰ 「解なし」の例

 絶対値を含んだ方程式と言っても、絶対値が1つだけの基本的なものから、絶対値が3つ以上含まれる複雑なものまであります。
 
 本記事では、数学Ⅰの教科書の例題にもなっている、\(~ax+b=|cx+d|~\)の形の方程式について考えます。
 
 まずは教科書にも載っている問題を1問見てみましょう。

例題1

\(~3x+1=|x+3|~\)を解く。
 \(~x+3 \geqq 0~\)、すなわち\(~x \geqq -3~\)のとき、
\begin{align}
3x+1&=x+3 \\
2x&=2 \\
x&=1
\end{align}
これは、条件\(~x \geqq -3~\)を満たす。
 
 \(~x+3 < 0~\)、すなわち\(~x < -3~\)のとき、 \begin{align} 3x+1&=-(x+3) \\ 3x+1&=-x-3 \\ 4x&=-4 \\ x&=-1 \end{align}  これは、条件\(~x < -3~\)に適さない。
 
 よって、方程式の解は\(~x=1~\)。

 上のように、絶対値の中が正か負かで絶対値の外し方が変わり、出てきた解が条件に適しているかを判断する必要があります。
 
 教科書や問題集を解いていると、解が1つだけとなったり、解が2つになったりすることが多いのですが、以下の問題を解いてみましょう。

例題2

\(~x-4=|2x-1|~\)
 \(~2x-1 \geqq 0~\)、すなわち\(~\displaystyle x \geqq \frac{1}{2}~\)のとき、
\begin{align}
x-4&=2x-1 \\
-x&=3 \\
x&=-3
\end{align}
これは、条件\(~\displaystyle x \geqq \frac{1}{2}~\)に適さない。
 
 \(~2x-1 < 0~\)、すなわち\(~\displaystyle x < \frac{1}{2}~\)のとき、 \begin{align} x-4&=-(2x-1) \\ x-4&=-2x+1 \\ 3x&=5 \\ x&=\frac{5}{3} \end{align}  これは、条件\(~\displaystyle x < \frac{1}{2}~\)に適さない。
 
 よって、方程式の解はない。

 ということでどちらも不適で、「解なし」となってしまいました。
 
 実は、連立方程式
\begin{cases}
y=x-4 & \\
y=|2x-1| &
\end{cases}
として捉えて、グラフで考えてあげると、解なしの理由がわかります。

 確かに交わっていないですね。
 交わらないための条件として、傾き(\(~x~\)の係数)が絡んできそうです。
 
 次章では、解なしとなるための条件を探っていきます。


Ⅱ 「解なし」となるための条件

 先に一般化した結論を述べておきます。

「解なし」の条件

 方程式 \(~ax+b=|cx+d|~\)が、解なしとなるための条件は、
定数\(~a~,~b~,~c~,~d~\)が以下のいずれかの式の組み合わせをすべて満たすことである。
\begin{cases}
a+c > 0 & \\
a-c < 0 & \\ c > 0 & \\
bc < ad & \end{cases} または \begin{cases} a+c < 0 & \\ a-c > 0 & \\
c < 0 & \\ bc < ad & \end{cases}

 ちょっと複雑になってしまいました。

2020.9.30追記
 whityさんのコメントを参考に、
\begin{cases}
|a| < c & \\ c > 0 & \\
bc < ad & \end{cases} または \begin{cases} |a| < -c & \\ c < 0 & \\ bc < ad & \end{cases} と必要な式の数を減らすことができるとわかりました。
 
 絶対値の性質上、\(~|cx+d|~\)において、\(~c > 0~\)としても一般性を失わないので、
\begin{cases}
|a| < c & \\ bc < ad & \end{cases} という式だけでも表せますね。
 
 whityさんが「GeoGebra」で\(~a~,~b~,~c~,~d~\)の関係を図示してくださっています。(すごい!)

 
 先ほどの例題2で言えば、\(~a=1~,b=-4~,c=2~,d=-1~\)なので、上の組み合わせを満たしていることになります。
 
 次に、このような結論に至った理由をお示しします。

証明

\(~ax+b=|cx+d|~~~(a \neq 0~~,~~c \neq 0)\)を解く。
 \(~cx+d \geqq 0~\)、すなわち\(~\displaystyle x \geqq -\frac{d}{c}~\)のとき、
\begin{align}
ax+b&=cx+d \\
(a-c)x&=-(b-d) \\
x&=-\frac{b-d}{a-c}
\end{align}
この解が不適となるためには、
\begin{align}
-\frac{b-d}{a-c} &< -\frac{d}{c} \\ \frac{b-d}{a-c} &> \frac{d}{c} ~~~~\cdots ①
\end{align}
を満たす必要がある。(ただし、\(~a-c \neq 0~\))
 
 また、\(~cx+d < 0~\)、すなわち\(~\displaystyle x < -\frac{d}{c}~\)のとき、 \begin{align} ax+b&=-(cx+d) \\ ax+b=-cx-d \\ (a+c)x&=-(b+d) \\ x&=-\frac{b+d}{a+c} \end{align} この解が不適となるためには、 \begin{align} -\frac{b+d}{a+c} &\geqq -\frac{d}{c} \\ \frac{b+d}{a+c} &\leqq \frac{d}{c} ~~~~\cdots ② \end{align} を満たす必要がある。(ただし、\(~a+c \neq 0~\))
 
 ここで\(①\)に関して、両辺に\(~\times c(a-c)~\)をして、式を整理する。
(ⅰ) \(~a-c > 0~,~c > 0~\)のとき、
\begin{align}
(b-d)c &> d(a-c) \\
bc-cd &> ad-cd \\
bc &> ad
\end{align}
 
以下同様に、
(ⅱ) \(~a-c < 0~,~c < 0~\)のとき、 \begin{equation} bc > ad
\end{equation}
 
(ⅲ) \(~a-c > 0~,~c < 0~\)のとき、 \begin{equation} bc < ad \end{equation}   (ⅳ) \(~a-c < 0~,~c > 0~\)のとき、
\begin{equation}
bc < ad \end{equation} である。
 
また、\(②\)に関して、両辺に\(~\times c(a+c)~\)をして、式を整理する。
(ⅴ) \(~a+c > 0~,~c > 0~\)のとき、
\begin{align}
(b+d)c &> d(a+c) \\
bc+cd &> ad+cd \\
bc &\leqq ad
\end{align}

 
以下同様に、
(ⅵ) \(~a+c < 0~,~c < 0~\)のとき、 \begin{equation} bc \leqq ad \end{equation}   (ⅶ) \(~a+c > 0~,~c < 0~\)のとき、 \begin{equation} bc \geqq ad \end{equation}   (ⅷ) \(~a+c < 0~,~c > 0~\)のとき、
\begin{equation}
bc \geqq ad
\end{equation}
である。
 
 
 \(~bc~\)と\(~ad~\)の大小関係、\(~c~\)の符号に着目すると、(ⅰ)と(ⅷ)、(ⅱ)と(ⅶ)、(ⅲ)と(ⅵ)、(ⅳ)と(ⅴ)の組み合わせがあり得るものの、
 
(ⅰ)と(ⅷ)では、\(~a > c > 0~\)で、\(~a+c < 0~\)にはなり得ない。
(ⅱ)と(ⅶ)では、\(~a < c < 0~\)で、\(~a+c > 0~\)にはなり得ない。
 
よって、(ⅳ)と(ⅴ)より、
\begin{cases}
a+c > 0 & \\
a-c < 0 & \\ c > 0 & \\
bc < ad & \end{cases} という条件か、(ⅲ)と(ⅵ)より、 \begin{cases} a+c < 0 & \\ a-c > 0 & \\
c < 0 & \\ bc < ad & \end{cases} という条件で、方程式 \(~ax+b=|cx+d|~\)を作ると、解なしとなることが言える。\(~~\blacksquare~\)

 不等式なので、\(~c~\)や\(~a-c~\)、\(~a+c~\)の符号に気を付けないと、不等号が逆になってしまうところが面倒な証明でした。

2020.9.30追記
\begin{cases}
a+c > 0 & ~~~\cdots ③\\
a-c < 0 & ~~~\cdots ④\\ c > 0 & \\
bc < ad & \end{cases} で、\(③\)と\(④\)を式変形すると、 \begin{cases} a > -c & \\
a < c & \\ \end{cases} であり、\(~c > 0~\)なので、\(~c > -c~\)となるため、2つの式を合わせて、
\begin{align}
-c < &a < c \\ |a| &< c \end{align} と表すことができます。(もう1パターンも同様)
 
 コメントいただきましたwhityさん、ありがとうございました。

 もっときれいな条件が出てくるかと思いきや・・・。大変な計算になってしまいました。