複素数の対数関数

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対数と言えば \(~\log{x}~\) ですが、この定義域を複素数の範囲まで拡張すると、話が単純ではなくなってしまいます。対数関数の表し方とその導き方を紹介します。
Ⅰ 対数関数の定義
Ⅱ 例


目次
  • 1. Ⅰ 対数関数の定義
  • 2. Ⅱ 例

Ⅰ 対数関数の定義

複素数の対数関数の分枝

  \(~z \in \mathbb{C}-\{0\}~\) に対して、 \(~z~\) の対数関数を次のように定義する。
\begin{equation}
\log{z}=\log{|z|}+i \arg{z}
\end{equation}
ただし、 \(~\log{|z|}~\) は正の実数 \(~|z|~\) の自然対数である。

定義の式の中に \(~\arg~\) が出ています。これは \(~z~\) の偏角のことであり、 \(~z~\) の偏角の1つを \(~\theta~\) とすると、
\begin{equation}
\arg{z}=\theta+2n\pi (nは整数)
\end{equation}
となり、値が一つに定まりません。(このような関数を「多価関数」という)
 
そこで、 \(~\log{z}~\) の値を1つに決めたいときは次のように定義します。

複素数の対数関数の主値

  \(~z \in \mathbb{C}-\{0\}~\) に対して、 \(~z~\) の対数関数の主値を次のように定義する。

\begin{equation}
Log{z}=\log{|z|}+i Arg{z} (-\pi < Arg{z} \le \pi ) \end{equation}


\begin{equation}
Log{z}=\log{|z|}+i Arg{z} \\
(-\pi < Arg{z} \le \pi ) \end{equation}

ただし、 \(~\log{|z|}~\) は正の実数 \(~|z|~\) の自然対数である。

この \(~Log{z}~\) を \(~z~\) の対数関数の主値、先ほどの \(~\log{z}~\) を \(~z~\) の対数関数の分枝といいます。
 
なぜ、分枝が上記のように定義できるのかを証明してみましょう。

証明

\(~z \in \mathbb{C}~\) に対して、 \(~w=\log{z}(w \in \mathbb{C}) \)とする。
指数と対数の関係から、
\begin{equation}
e^w=z ・・・①
\end{equation}
が成り立つ。ここで、 \(~w~\) を実部 \(~u~\) と虚部 \(~v~\) に分け、
\begin{equation}
w=u+iv ・・・②
\end{equation}
と表し、 \(~z~\) を極座標形式で表し、オイラーの公式を使って変形すると、
\begin{align}
z&=|z|(\cos{\theta}+i\sin{\theta}) \\
&=|z|e^{i\theta}  ・・・③
\end{align}
である。( \(~\theta~\) は \(~z~\) の偏角である。)
 
②、③を①に代入することで、
\begin{align}
e^{u+iv}&=|z|e^{i\theta} \\
e^u \cdot e^{iv}&=|z| \cdot e^{i\theta} \\
\end{align}
となり、この式の実部と虚部を比較することで
\begin{cases}
e^u=|z|  ・・・④ \\
v=\theta ・・・⑤\\
\end{cases}
となる。④の式は両辺自然対数をとり、⑤の式で \(~\theta=\arg{z}~\) に変換すると、
\begin{cases}
u=\log{|z|}   \\
v=\arg{z} \\
\end{cases}
であり、
\begin{equation}
\log{z}=w=\log{|z|}+i\arg{z}
\end{equation}
が求まった。 \(~\blacksquare~\)


Ⅱ 例

 上の定義を使って、実際に計算してみましょう。

(1)  \(~\log{(-1)}~\)
(2)  \(~Log(\sqrt{3}+i)~\)

 
(1)  \(~|-1|=1,\arg{(-1)}=\pi+2n\pi(n \in \mathbb{Z})~\) なので、
\begin{align}
\log{(-1)}&=\log{|-1|}+i \arg{(-1)} \\
&=\log{1}+i (\pi+2n\pi) \\
&=0 +i (\pi+2n\pi) \\
&=\pi i+2n\pi i
\end{align}
 
(2)  \(~|\sqrt{3}+i|=\sqrt{(\sqrt{3})^2+1^2}=2~\) ,

\(~Arg(\sqrt{3}+i)=\displaystyle \frac{\pi}{6}\)なので、

\begin{align}
Log(\sqrt{3}+i)&=\log{|\sqrt{3}+i|}+i Arg{(\sqrt{3}+i)} \\
\\
&=\log{2}+i \left(\displaystyle \frac{\pi}{6} \right) \\
\\
&=\log{2}+\frac{\pi}{6}i \\
\end{align}


\begin{align}
&Log(\sqrt{3}+i) \\
&=\log{|\sqrt{3}+i|}+i Arg{(\sqrt{3}+i)} \\
\\
&=\log{2}+i \left(\displaystyle \frac{\pi}{6} \right) \\
\\
&=\log{2}+\frac{\pi}{6}i \\
\end{align}

(1)からもわかるように、高校までの \(~\log~\) では定義できなかった負の実数についても、計算することができます。ただ、 \(~\log{z}~\) で \(~z=0~\) のときは、 \(~|z|=0~\) のために計算することができません。そのため、定義域が \(~z \in \mathbb{C}-\{0\}~\) となっています。


高校数学では、真数条件をということで、 \(~\log_{a}{b}~\) の \(~b~\) は正であるということをやりますが、大学数学では、真数条件の定義が変わってきて、いろいろな数の対数をとれるようになりましたね。便利便利(^^)

   
 
 


◇参考文献等
・藤本淳夫(2012)『複素解析学概説』,pp.31-32,培風館.