可算無限集合

無限集合は、数えられる集合か数えられない集合に分類できます。
 この記事では、数えられる可算無限集合について解説します。

目次

Ⅰ 無限集合の種類

 数学Ⅰの「集合」でも出てくる通り、「\(~5~\)以下の自然数全体の集合」のような有限個の要素からなる集合を有限集合といい、「自然数全体の集合」のような無限に多くの要素からなる集合を無限集合と言いました。
 
 無限集合は、ドイツの数学者ゲオルク・カントール(Georg Cantor, 1845-1918)によって研究されました。

ゲオルク・カントール
ゲオルクカントール
User Rudolf 1922 on sv.wikipedia, Public domain, via Wikimedia Commons

 
 カントールは、無限集合の大きさを考えるうえで、次のような言葉を定義しています。

無限集合の濃度

 2つの集合\(~A~,~B~\)の間に全単射(一対一対応)が存在するとき、「\(~A~\)と\(~B~\)は対等である」または「\(~A~\)と\(~B~\)の濃度は等しい」と言い、\(~|A|=|B|~\)で表す。

 この考え方により、本来数え上げることのできない無限集合どうしの大きさの比較を可能にしました。
 
 実際に1つ比較してみましょう。

正の偶数全体の集合の濃度

 正の偶数全体の集合\(~E~\)と自然数全体の集合\(~\mathbb{N}~\)の濃度は等しい。

\begin{align}
\mathbb{E}&=\{~2~,~4~,~6~,~8~,\cdots~\} \\
\mathbb{N}&=\{~1~,~2~,~3~,~4~,\cdots~\}
\end{align}
であるため、感覚的には\(~\mathbb{N}~\)のほうが要素の個数が多いように思えます。
 しかし、カントールの一対一対応の考えを使うと、次のようになります。

証明

 \(~f~:~\mathbb{N} \to E~\)を次のように対応させる。

\(\mathbb{N}\) \(1\) \(2\) \(3\) \(4\) \(5\) \(6\) \(7\) \(\cdots\)
\(E\) \(2\) \(4\) \(6\) \(8\) \(10\) \(12\) \(14\) \(\cdots\)

 すなわち\(~f(x)=2x~\)で、このとき\(~f~\)は全単射となるため、\(~|\mathbb{N}|=|E|~\)は示された。\(~~~\blacksquare~\)

 このように、全単射(一対一対応)となるような写像\(~f~\)を見つけられれば、2つの集合の濃度が等しいことが言えます。
 
 今回の例で出てきた\(~|\mathbb{N}|~\)ですが、無限集合の濃度の基本となっているため、カントールは次のように表しました。

加算無限集合

 無限集合\(~A~\)の濃度が、自然数全体の集合\(~\mathbb{N}~\)の濃度と同じであるとき、\(~A~\)を可算無限集合と言い、その濃度を
\begin{equation}
|A|=\aleph_0~~~~~(アレフ・ゼロ)
\end{equation}
と表す。

 可算無限集合は単に「可算集合」と言うこともあります。
 また、\(~\aleph~\)はヘブライ文字で、\(~0~\)は添え字です。
 
 先ほどの正の偶数全体の集合\(~E~\)のように、\(~\mathbb{N}~\)と一対一対応できるような集合の濃度は\(~\aleph_0~\)となります。(当然、\(~|\mathbb{N}|=\aleph_0~\))
 
 逆に\(~\mathbb{N}~\)と一対一対応できないような集合は非可算無限集合と言います。
 つまり、\(~1~\)番目、\(~2~\)番目、\(~3~\)番目、\(~\cdots~\)と番号を振っていけるレベルの無限は可算、番号すら振れないほど大きい無限は非可算ということです。(詳しくは「非可算無限集合」へ)


Ⅱ 整数の集合の濃度

 \(~\mathbb{N}~\)は加算無限集合の基本となっていて、\(~|\mathbb{N}|=\aleph_0~\)でした。
 では、自然数から範囲を広げて整数全体の集合\(~\mathbb{Z}~\)はどうでしょうか?
 結論から示します。

整数全体の集合の濃度

 整数全体の集合\(~\mathbb{Z}~\)の濃度は\(~\aleph_0~\)である。

 これが何を意味しているのかというと、

整数と自然数の要素の個数は同じ(\(~|\mathbb{Z}|=|\mathbb{N}|~\))

であるということです。
 
 証明方法は、正の偶数全体の集合のときと同様。

証明

 \(~f~:~\mathbb{N} \to \mathbb{Z}~\)を次のように対応させる。

\(\mathbb{N}\) \(1\) \(2\) \(3\) \(4\) \(5\) \(6\) \(7\) \(\cdots\)
\(\mathbb{Z}\) \(0\) \(1\) \(-1\) \(2\) \(-2\) \(3\) \(-3\) \(\cdots\)

 このとき\(~f~\)は全単射となるため、\(~|\mathbb{N}|=|\mathbb{Z}|~\)は示された。\(~~~\blacksquare~\)

 強引に関数の形にすると、
\begin{equation}
f(x)=
\begin{cases}
\displaystyle -\frac{1}{2}x+\frac{1}{2}~~~&(~x~は奇数~) \\
\\
\displaystyle ~~~\frac{1}{2}x~~~~&(~x~は偶数~) \\
\end{cases}
\end{equation}
となります。
 グラフにすると・・・、ちょっとわかりづらいですね。
自然数から整数のグラフ


Ⅲ 有理数全体の集合の濃度

 \(~\mathbb{Z}~\)からさらに範囲を広げて、有理数全体の集合\(~|\mathbb{Q}|~\)だとどうなるでしょうか?
 実は、さらに驚くべき結論が導かれます。

有理数全体の集合の濃度

 有理数全体の集合\(~\mathbb{Q}~\)の濃度は\(~\aleph_0~\)である。

 なんと有理数まで、自然数と同じ濃度であることが証明されているのです。
 1873年の末、リヒャルト・デデキント(Richard Dedekind, 1831-1916)との手紙のやりとりからカントールが証明しました。

リヒャルト・デデキント
リヒャルトデデキント
not found, Public domain, via Wikimedia Commons

 どのように\(~f:\mathbb{N}\to \mathbb{Q}~\)を定義すれば、全単射となるのでしょうか?

証明

 \(~m~,~n~\)を整数、\(~m \neq 0~,~n \ge 0~\)を満たす格子点\(~(~m~,~n~)~\)を考える。
自然数から有理数のグラフ①
 各点\(~(~m~,~n~)~\)において、有理数\(~\displaystyle \frac{n}{m}~\)を定義し、既約分数のみを下の図のように番号をつけていく。
自然数から有理数のグラフ②
 すなわち、\(~f:\mathbb{N} \to \mathbb{Q}~\)は下の表のように定義する。

\(\mathbb{N}\) \(1\) \(2\) \(3\) \(4\) \(5\) \(6\) \(7\) \(\cdots\)
\(\mathbb{Q}\) \(0\) \(1\) \(-1\) \(\displaystyle \frac{1}{2}\) \(2\) \(-2\) \(-\displaystyle \frac{1}{2}\) \(\cdots\)

 このとき、\(~f~\)は全単射であり、\(~|\mathbb{N}|=|\mathbb{Q}|~\)は示された。\(~~~\blacksquare~\)

 この方法なら漏れなく、有理数全体の集合\(~\mathbb{Q}~\)のすべての要素に番号付けをすることができます。
 
 整数、有理数までは自然数と同じ濃度であることが示されましたが、実数全体の集合\(~\mathbb{R}~\)は\(~\aleph_0~\)とは異なります。(→証明は「非可算無限集合」へ)


無限なのに、数えられるって違和感あるよね。
ふくすけ汗
当時(19世紀末)も、カントールの理論に違和感を覚える人が多く、彼は痛烈に批判されてうつ病を発症したんだ。
 でも、無限の研究を続けて、今では無限の研究の第一人者として名を馳せているよ。

◇参考文献等
・上野健爾・三浦信夫監訳,中澤聡訳(2009)『カッツ 数学の歴史』,pp.828-831,共立出版.
・黒木哲徳(2021)『なっとくする数学記号』,pp.125-127,講談社
・ポール・パーソンズ、ゲイル・ディクソン(2021)『図解教養事典 数学』,pp.66,115,NEWTON PRESS
・Bertrand Hauchecorne,Daniel Suratteau(2015)『世界数学者事典』,pp.119-123熊原啓作訳,日本評論社.

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

現役の中高一貫校教員で、授業中は数学史ネタをよく喋ります。
教職大学院時代に開設した「Fukusukeの数学めも」が、閲覧者の学習・興味の一助になれば幸いです。
ちなみにFukusukeは我が家のお気に入りのペンギンの人形(8歳)

関連記事

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次
閉じる