難しい極限②


「限りなく近づける」という難解な動作を可能にする極限。その中でも難関大学の入試問題や数検1級、数学オリンピックで出てくるような、難しめの極限の問題を紹介します。
 
 


「限りなく近づける」という難解な動作を可能にする極限。その中でも難関大学の入試問題や数検1級、数学オリンピックで出てくるような、難しめの極限の問題を紹介します。


問題

次の極限を求めよ。ただし、$~0 < |a| <1~$とする。 \begin{align} (1) &\displaystyle \lim_{n \to \infty}{na^n} \\ \\ (2) &\lim_{n \to \infty}{n^2a^n} \end{align}

 $~0 < a < 1~$なら、まだ解きやすかったかもしれません・・・。数Ⅱで習うあの定理を使います。


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解答

(1) $~0~$
(2) $~0~$

 捻りのない数が出てきましたが、これを導くのがなかなか難しい!!
 
 これを解くカギになるのが、二項定理なのです!

(1)解法

$~0 < |a| < 1~$より、$~\displaystyle \frac{1}{|a|} > 1~$となるため、$~\displaystyle \frac{1}{|a|} =1+h ~~(h > 0)~$とおける。このとき、
\begin{align}
\frac{1}{|a|^n}&=(1+h)^n \\
\\
&={}_nC_0 \cdot 1^{n} \cdot h^0 +{}_nC_1 \cdot 1^{n-1} \cdot h+ {}_nC_2 \cdot 1^{n-2} \cdot h^2 +{}_nC_3 \cdot 1^{n-3} \cdot h^3 + \cdots \\
\\
&=1+nh+\frac{n(n-1)}{2!}h^2+\frac{n(n-1)(n-2)}{3!}h^3+\cdots \\
\\
& > \frac{n(n-1)}{2!}h^2
\end{align}
が成り立つため、逆数をとれば、
\begin{equation}
|a|^n < \frac{2}{n(n-1)h^2} \end{equation} となり、両辺に $~n~$をかけることで、 \begin{equation} n|a|^n < \frac{2}{(n-1)h^2} \end{equation} が導かれる。    $~0 < n|a|^n~$かつ$~\displaystyle \lim_{n \to \infty}\frac{2}{(n-1)h^2}=0~$より、はさみうちの原理から、 \begin{equation} \displaystyle \lim_{n \to \infty} n|a|^n=0 \end{equation} が求まった。

 $~\displaystyle \frac{1}{|a|} =1+h ~~(h > 0)~$という発想がそもそも難しく、また二項定理からはさみうちの原理が適用しやすい不等式を作るところも知らないと難しそうです。
 
 ただ、今回の式変形を知っていれば(2)も同様の方法で解くことができます。(途中までは(1)と一緒です)

(2)解法

$~0 < |a| < 1~$より、$~\displaystyle \frac{1}{|a|} > 1~$となるため、$~\displaystyle \frac{1}{|a|} =1+h ~~(h > 0)~$とおける。このとき、
\begin{align}
\frac{1}{|a|^n}&=(1+h)^n \\
\\
&={}_nC_0 \cdot 1^{n} \cdot h^0 +{}_nC_1 \cdot 1^{n-1} \cdot h+ {}_nC_2 \cdot 1^{n-2} \cdot h^2 +{}_nC_3 \cdot 1^{n-3} \cdot h^3 + \cdots \\
\\
&=1+nh+\frac{n(n-1)}{2!}h^2+\frac{n(n-1)(n-2)}{3!}h^3+\cdots \\
\\
& > \frac{n(n-1)(n-2)}{3!}h^3
\end{align}
が成り立つため、逆数をとれば、
\begin{equation}
|a|^n < \frac{6}{n(n-1)(n-2)h^3} \end{equation} となり、両辺に $~n^2~$をかけることで、 \begin{align} n^2|a|^n &< \frac{6n}{(n-1)(n-2)h^3} \\ \\ &=\frac{6}{\left( 1-\frac{1}{n} \right)(n-2)h^3} \\ \end{align} が導かれる。    $~0 < n^2|a|^n~$かつ$~\displaystyle \lim_{n \to \infty}\frac{6}{\left( 1-\frac{1}{n} \right)(n-2)h^3}=0~$より、はさみうちの原理から、 \begin{equation} \displaystyle \lim_{n \to \infty} n^2|a|^n=0 \end{equation} が求まった。

 こう考えていくと、$~\displaystyle \lim_{n \to \infty}{n^ma^n}=0~~(m は自然数)~$も成り立ちそうです。(実際、導けます。)
 
 それどころか、$~m~$が任意の実数だとしても上記の式は成り立ちます!! はさみうちの力、恐るべし。
 
 
 


 数検1級の準拠テキストの最初の問題がこれだったので、1級の難しさの洗礼を受けました。

   

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◇参考文献等
・中村力(2016)『数学検定1級準拠テキスト 微分積分』,p.2,森北出版株式会社.

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