ディオファントスの墓

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墓

 3世紀の数学者ディオファントスが、自身の墓に残した一次方程式の問題です。
 その解法を2通り紹介します。

この記事を読んでわかること
  • 3世紀の数学者であるディオファントスについて
  • ディオファントスの墓に刻まれたとされる問題
  • その問題の解き方2通り
この記事を読んでわかること

Ⅰ 問題と一般的な解法

 ディオファントス(Diophantus , 210頃-290頃)は、方程式をはじめとする代数分野を本格的に研究した初のギリシャ人数学者です。

 「代数学の父」とも呼ばれた彼の研究は、一次方程式のみならず、二次方程式や三次方程式にまで広がっており、著書『算術』にまとめられています。

 彼の詳しい生涯については不明であるものの、彼の墓碑銘に関する以下の問題は有名となっています。

ディオファントスの墓

 ディオファントスは一生の$~\displaystyle \frac{1}{6}~$を少年として、さらに一生の$~\displaystyle \frac{1}{12}~$を青年として過ごした。その後一生の$~\displaystyle \frac{1}{7}~$を過ぎて結婚し、$~5~$年後に息子ができた。その子は父の半分しか生きられず、ディオファントスより$~4~$年早く亡くなった。

 ディオファントスは何歳のときに亡くなったか求めなさい。

 「素直に年齢を書けばいいのに・・・」というツッコミはなしにして、まずは方程式で解いてみましょう。

方程式による解法

 ディオファントスの享年を$~x~$歳とする。
 このとき、文中の表現をそれぞれ$~x~$を使って表すと、

\begin{align*}
少年時代&\cdots ~\frac{1}{6}x~年  \\
青年時代&\cdots ~\frac{1}{12}x~年 \\
結婚まで&\cdots ~\frac{1}{7}x~年 \\
結婚から息子誕生まで&\cdots ~5~年 \\
息子と生きた期間&\cdots~\frac{1}{2}x~年 \\
息子の死から自身の死まで&\cdots ~4~年 \\
\end{align*}


となり、これらの和がディオファントスの享年となるため、

\frac{1}{6}x+\frac{1}{12}x+\frac{1}{7}x+5+\frac{1}{2}x+4=x

という方程式ができる。

 両辺を$~84~$倍することで、

\begin{align*}
14x+7x+12x+420+42x+336&=84x \\
-9x&=-756 \\
x&=84 
\end{align*}

が求まるため、ディオファントスの享年は84であることがわかった。

 これでお墓の問題は解決しました!

Ⅱ 視点を変えた解法

 人間の享年を$~x~$としたとき、$~x~$の変域は$~0 \le x \le 120~$くらいなので・・・。
 次のような解き方もできそうです。

公倍数を使った解法

少年時代や青年時代などの各期間は、整数年で表されるのが一般的である。


そのため、それぞれの期間が整数であるためには、ディオファントスの享年が$~6~$と$~12~$と$~7~$と$~2~$の公倍数、つまり$~84~$の倍数でなければならない。
 
しかし、人間の寿命は多く見積もっても120歳ほどである。
 
よって、彼の享年は84歳である。

 仮定が曖昧ではあるものの、一応筋は通っているように思えます。

 ただ、本当にディオファントスが$~84~$歳で亡くなったかどうかは定かではなく、10世紀以降に編纂された『ギリシャ詞花集』に載っていたのが今回の問題です。

 本当に墓に刻んであったのかもしれませんし、代数学の父であるディオファントスを偲んで誰かが作成しただけの問題かもしれません。


「一生の$~\displaystyle \frac{1}{12}~$を青年として過ごした」の代わりに「一生の $~\displaystyle \frac{1}{12}~$ が経ってからヒゲが生えた」と伝える参考書もありました。

え、そうするとヒゲが生え始めるのが21歳ということに・・・。
不適では?

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