除法を乗法にできる理由
逆数を使えば、割り算を掛け算に直すことができます。それがなぜ成り立つのかを文字式で証明します。
Ⅰ 逆数と除法
Ⅱ 除法を乗法に直せる理由
Ⅰ 逆数と除法
はじめに、除法では欠かすことのできない「逆数」について確認しておきます。
ある数 \(~a~\) に対して、 \(~\displaystyle \frac{1}{a}~\) を \(~a~\) の逆数という。
また、文字式を習っていない小学生や中1の最初では、次のような説明が教科書に書かれています。
2つの数の積が 1 となるとき、一方の数を他方の数の逆数という。
この説明だと、数学が苦手な子には難しいので、教える際は
分母と分子を入れ替えた数
という説明もありでしょう。
逆数の例もいくつか挙げておきます。
・ \(~\displaystyle \frac{2}{3}~\) の逆数は \(~\displaystyle \frac{3}{2}~\)
・ \(~\displaystyle 5~\) の逆数は \(~\displaystyle \frac{1}{5} ~\)
・ \(~\displaystyle -\frac{1}{4}~\) の逆数は \(~-4 ~\)
・ \(~\displaystyle 1~\) の逆数は \(~1 ~\)
・ \(~\displaystyle -1~\) の逆数は \(~-1~\)
ただし、0の逆数は存在しないので注意。
ということで、符号はそのままで分母と分子を逆にすれば逆数は求まります。
この逆数によって、次のような(分数)÷(分数)の計算が可能になりました。
\begin{align}
\displaystyle \frac{3}{4} \div \frac{2}{5}&=\frac{3}{4} \times \frac{5}{2} \\
\\
&=\frac{15}{8}
\end{align}
分数の割り算は、逆数を使ってかけ算にするという作業は誰にでも経験があるはず。なぜこれが成り立つのかを次章で考えてみましょう。
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Ⅱ 除法を乗法に直せる理由
では、本題です。ここで示したいのは次の等式です。
\(~b \neq 0,c \neq 0,d \neq 0~\) とする。
\begin{equation}
\displaystyle \frac{a}{b} \div \frac{c}{d} =\frac{a}{b} \times \frac{d}{c}
\end{equation}
では、証明していきましょう。
余りを考えない割り算においては、割り算を分数で表すことができる。
\begin{equation}
\displaystyle \frac{a}{b} \div \frac{c}{d} =\frac{\frac{a}{b}}{\frac{c}{d}}
\end{equation}
ここで、分母を \(~1~\) にするため、分母と分子に \(~\displaystyle \frac{d}{c}~\) をかけると、
\begin{align}
\displaystyle \frac{\frac{a}{b}}{\frac{c}{d}}&=\frac{\frac{a}{b} \times \frac{d}{c}}{\frac{c}{d} \times \frac{d}{c}} \\
\\
&=\frac{\frac{a}{b}\times \frac{d}{c}}{1} \\
\\
&=\frac{a}{b}\times \frac{d}{c}
\end{align}
以上より、題意は示された。 \(~\blacksquare~\)
文字式を使えば、簡単に解決することができました。
小学生や中1にこの証明は難しいので、別の説明方法を考えないといけません・・・。
※追記(2018.5.4)
しなさんより、小学生でも理解ができるような説明をいただきました。
割り算では、 \(~6 \div 3=12 \div 6=2~\) のように、割られる数と割る数に同じ数をかけても商は同じになる。
そこで、次の計算を考える。
\begin{equation}
\displaystyle \frac{3}{4} \div \frac{2}{5}
\end{equation}
割られる数と割る数に\( \displaystyle \frac{5}{2}~\) をかけて計算すると、
\begin{align}
\displaystyle \frac{3}{4} \div \frac{2}{5} &= \left( \frac{3}{4} \times \frac{5}{2} \right) \div \left( \frac{2}{5} \times \frac{5}{2} \right) \\
\\
&=\left( \frac{3}{4} \times \frac{5}{2} \right) \div 1 \\
\\
&=\frac{3}{4} \times \frac{5}{2}
\end{align}
以上より、分数の割り算は逆数をかけることで表される。 \(~\blacksquare~\)
しなさん、ありがとうございます。小学生や中1相手に説明するなら、 \(~\displaystyle \frac{分数}{分数}~\) よりもこちらの説明のほうが理解させられそうです!!
ディスカッション
私学適正の解答では大変お世話になりました。×(逆数)にできるというのは、意外と説明しろと言われるとできないイメージがあります(笑)
(分数)分の(分数)にしない説明でもいいかなと思いコメントさせていただきます。
まず、例えば6÷3=2と12÷6=2のように、割られる数と割る数に同じ数字をかけても答えは変わらないことを確認します。
ここで3/4÷2/5について考える。
割る数を1にするために、割られる数と割る数に5/2をかけると、
(3/4×5/2)÷(2/5×5/2)
=(3/4×5/2)÷1
=3/4×5/2
=15/8
証明と同じことですが、(分数)分の(分数)に抵抗がある子どもにはこれで理解して欲しいと思っています…
数学から離れない良いきっかけにもなります。いつも記事で楽しませていただいています。
よりわかりやすいご意見ありがとうございます。
しなさんの考え方も記事の中に組み込ませていただきました。
いつもコメント励みになります。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。