オイラーの多面体定理
凸多面体における、頂点と辺と面の数に関する定理です。平面グラフの知識にも触れながら、証明をしています。
Ⅰ オイラーの多面体定理
Ⅱ 平面グラフ
Ⅲ 証明
Ⅰ オイラーの多面体定理
まずはどのような定理なのかを見てみましょう。
凸多面体において、頂点の数を \(~v~\) 、辺の数を \(~e~\) 、面の数を \(~f~\) とすると、次の公式が成り立つ。
\begin{equation}
v-e+f=2
\end{equation}
この定理のすごいところは、どんな複雑な空間図形であっても、凸多面体(へこみがなく、穴が開いていない多面体)であれば、上の公式が成り立つということです。
17世紀にデカルトによってこの定理が予想され、1752年にオイラーによって証明されました。
ちなみに、 \(~v,e,f~\) は頂点(vertex)、辺(edge)、面(face)の頭文字をとっています。
例からこの公式を体感してみましょう。
①直方体
頂点 \(~v=8~\) 、辺 \(~e=12~\) 、面 \(~f=6~\) より、
\begin{equation}
8-12+6=2
\end{equation}
②三角錐
頂点 \(~v=4~\) 、辺 \(~e=6~\) 、面 \(~f=4~\) より、
\begin{equation}
4-6+4=2
\end{equation}
③正二十面体
頂点 \(~v=12~\) 、辺 \(~e=30~\) 、面 \(~f=20~\) より、
\begin{equation}
12-30+20=2
\end{equation}
確かに、どの凸多面体もオイラーの多面体定理が成り立っています。
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Ⅱ 平面グラフ
オイラーの多面体定理を証明するために必要な平面グラフというものを説明しておきます。
まずは、平面グラフの定義と性質についてです。
平面上の頂点集合とそれを交差なく結ぶ辺集合からなるグラフのことを平面グラフという。
次の2つは平面グラフである。
次の図形は平面グラフではない。
<平面グラフではない理由>
・つながっていない頂点がある。
・端が頂点になっていない辺がある。
・辺が交差している。
平面グラフにおける頂点と辺は見た通り定義されていますが、面はどこになるのでしょうか。
面について、定義しておきます。
平面グラフにおいて、辺で囲まれた閉領域を面とする。ただし、グラフの外側に広がる開領域も1つの面として数える。
先ほどの2つの平面グラフについて、頂点・辺・面を数えてみましょう。
頂点 \(~v=5~\) 、辺 \(~e=6~\) 、面 \(~f\)\(=3~\) となる。
頂点 \(~v=4~\) 、辺 \(~e=4~\) 、面 \(~f=2~\) となる。
面の中にインクを大量に流し込んだ時に、そのインクが漏れ出なければ(穴が開いていなければ)1つの面ということですね。図形の外側も1つの面として数えるので注意です。
2つの例の \(~v,e,f~\) の値を見てみると、
\begin{equation}
v-e+f=2
\end{equation}
がわかります。平面グラフでもオイラーの多面体公式は成り立っているようですね。
話を戻します。立体におけるオイラーの多面体定理を証明するために必要なことは以下の2つです。
・立体を平面図形に直す方法
・平面グラフでオイラーの多面体定理が成り立つことの証明
これらを最後の章で証明をします。
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Ⅲ 証明
まず、凸多面体を平面グラフに変換することを考える。
下のように、凸多面体の一点(頂点や辺上を除く)に穴を開ける。
(例として、直方体の上底面に穴を開ける)
その穴を広げ、平面にする。
(全ての辺がゴムでできていると考えるとわかりやすい。上底面であった部分は黄色、下底面であった部分は水色で示してある。)
この考え方により、凸多面体は平面グラフに変換することができる。
(ちなみに、この平面グラフでは \(~v=8,e=12,f=6~\) となり、確かに直方体の各値を同じである。)
次に、任意の平面グラフは \(~v-e+f=2~\) であることを示す。
①1つの頂点からなる平面グラフの場合
平面グラフで最も簡単なものは、1頂点からなる平面グラフである。
このグラフにおいて、 \(~v=1,e=0,f=1~\) より、
\begin{equation}
1-0+1=2
\end{equation}
で、オイラーの多面体定理は成り立つ。
この状態から、2通りの手順を繰り返していくことで、任意の平面グラフを作ることができる。
②新しい頂点とそれを結ぶ辺を追加する場合
この場合、頂点 \(~v~\) と辺 \(~e~\) がそれぞれ \(~+1~\) される。
よって、 \(~v=v+1,e=e+1~\) として、計算すると
\begin{align}
(v+1)-(e+1)+f&=v+1-e-1+f \\
&=v-e+f \\
&=2
\end{align}
となり、この手順によって、等式が成り立たなくなることはない。
(上の図だと、 \(~v=1,e=0,f=1~\) が \(~v=2,e=1,f=1~\) になっている)
③既存の2頂点を結ぶ辺の追加をする場合
この場合、頂点 \(~e~\) と辺 \(~f~\) がそれぞれ \(~+1~\) される。
よって、 \(~e=e+1,f=f+1~\) として、計算をすると
\begin{align}
v-(e+1)+(f+1)&=v-e-1+f+1 \\
&=v-e+f \\
&=2
\end{align}
となり、この手順によって、等式が成り立たなくなることはない。
(上の図だと、 \(~v=3,e=2,f=1~\) が \(~v=3,e=3,f=2~\) になっている)
以上の2手順で、等式が成り立たなくなることはない。
また、任意の平面グラフは1頂点だけのグラフから2手順を繰り返すことで作られるため、任意の平面グラフでオイラーの多面体定理が成り立つことが示された。 \(~\blacksquare~\)
数学的帰納法のように示すことができました。
トポロジー的な考え方の便利さを初めて実感。ケーニヒスベルクの橋と同様、オイラー先生の思考の柔らかさの賜物です。
◇参考文献等
・「ジー先生のブログ」,<http://gsen.hateblo.jp/entry/2017/12/08/024227> 2018年6月21日アクセス
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