12世紀ルネサンスの数学とは?トレドの翻訳者たちや初期の大学を解説!【数学史11-3】

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 ユークリッドアルキメデスプトレマイオスといった古代ギリシャが生んだ数学の巨人たち。

 彼らの知識は、イスラーム世界で大切に保存され、さらに発展を遂げていました。

 そしてついに12世紀、その知識が数百年の時を越えてヨーロッパへと帰還します。

 この「知識の帰還」こそが、12世紀ルネサンスと呼ばれる知的革命の本質でした。

 この記事では、イスラーム世界で発展したギリシャ由来の数学が、いかにしてヨーロッパに戻ってきたのかを、現役数学教員で数学史の先生であるFukusukeが解説します。

 スペインのトレドで活躍した翻訳者たち、彼らがラテン語に移し替えた数学書の数々、そして誕生したばかりの大学でそれらがどう学ばれたのか。

 この翻訳ブームが、中世ヨーロッパを代表する数学者であるレオナルド・フィボナッチを生み出す土壌を整えることになるのです。

この記事を書いた人

Fukusuke(ふくすけ)
数学史の先生

  1. 現役の中学・高校数学教員
  2. 著書2冊重刷、ブログ累計200万PV達成
  3. ブログでは、式変形をとにかくていねいに記述
この記事を書いた人

Fukusuke(ふくすけ)
数学史の先生

  • 現役の中学・高校数学教員
  • 著書2冊重刷、ブログ累計200万PV達成
  • ブログでは、式変形をとにかくていねいに記述
  • 作図や文章校正、Texの打ち込みは文系妻が担当

この記事を読んでわかること

11〜12世紀のヨーロッパの数学史年表

西ヨーロッパ
1085年スペインのトレドがキリスト教徒の手に陥落。翻訳活動の拠点となる
1088年ボローニャ大学設立(近代的な大学システムを持つヨーロッパ最古の大学)
1096年第1回十字軍開始。イスラーム世界との接触が活発化
1126年バースのアデラードがフワーリズミーの『天文表』を翻訳
1142年アデラードがユークリッドの『原論』を翻訳
1145年チェスターのロバートがフワーリズミーの『代数学』を翻訳
1150年頃パリ大学設立。以降、近代的な大学が設立されていく。
1175年クレモナのジェラルドがプトレマイオスの『アルマゲスト』を翻訳
1202年フィボナッチが『算盤の書』を出版

 この時代以降、東ローマ帝国(ビザンツ帝国)は政治的混乱や領土喪失が続き、学問の発展や数学の進展は西ヨーロッパに比べて著しく遅れました。

 そして、1453年のオスマン帝国によるコンスタンティノープル陥落で、東西分裂以降1000年以上続いた東ローマ帝国の長い歴史に終止符が打たれました。

11〜12世紀の翻訳ブーム

数学書がイスラーム世界から流入した

 12世紀のヨーロッパは、知的エネルギーが爆発的に噴出した時代でした 。

 その大きな原動力となったのが、イスラーム世界に保存・発展されていた古代ギリシャの学問、特に数学や天文学の文献が西ヨーロッパに流入したことです。

 その流入のきっかけは大きく3つあります。

  • レコンキスタ(国土回復運動):スペインのイスラム支配地域にあったアラビア語書物がそのまま西ヨーロッパのものとなった。
  • 十字軍遠征:アラビアからイスラームの数学書を直接、または経由地である東ローマ帝国からイスラーム数学書の写本を手にいれることができた。
  • 地中海貿易:イタリアの港町を中心とした交易で、イスラームの数学書を手にいれることができた。

 こうして手に入れた数学書の多くは当然ながらアラビア語で書かれているため、それを中世西ヨーロッパの人々が読めるラテン語にしなければなりません

 言葉の障壁を打ち破り、知の宝庫への扉を開いたのが、12世紀の翻訳活動だったのです。

翻訳の中心地はスペインのトレド

 翻訳活動により、イスラームを経由して古代ギリシャの知識がヨーロッパに帰ってきたこの動きを「12世紀ルネサンス」と呼びます。

 12世紀ルネサンスの鍵を握る翻訳活動の最も重要な中心地となったのが、イベリア半島中部の都市トレドでした。

 レコンキスタによって、1085年にイスラームの支配からキリスト教徒の手に渡ったこの都市には、戦禍を免れたアラビア語の学術文献が豊富に残されていました

 さらに、トレドではキリスト教徒、イスラーム教徒、そしてアラビア語に堪能なユダヤ教徒が共存しており、文化の交流に理想的な環境が整っていたのです。

異教徒が集う都市トレド(AIイメージ)
異教徒が集う都市トレド(AIイメージ)

数学書の翻訳者たち

 翻訳事業では、国際色豊かな多くの学者たちが、多様なギリシャの古典を中世に復活させました。

 代表的な翻訳者とその代表作として、以下のものが挙げられます。

翻訳者活躍した年代翻訳書(代表的なもの)
バースのアデラード1116-1142頃フワーリズミー『天文表』
ユークリッド『原論』
クレモナのジェラルド1150-1185頃ユークリッド『原論』
アルキメデス『円の計測』
プトレマイオス『アルマゲスト』
フワーリズミー『ジャブルとムカーバラの書』
チェスターのロバート1141-1150 活躍フワーリズミー『ジャブルとムカーバラの書』

 アデラードは『原論』を初めてラテン語訳したことで、ジェラルドは生涯で70冊以上もの文献を翻訳したことで、ロバートはヨーロッパで「代数学」という学問を本格的に紹介したことで、それぞれ有名な翻訳者です。

バースのアデラード(左)
バースのアデラード(左)
(出典:See page for author, Public domain, via Wikimedia Commons)

 この3人以外にも、アリストテレスの著作を翻訳したヴェネツィアのジャコモ(1128〜1136頃活躍)、アルキメデスの著作を数多く翻訳したムールベケのギヨーム(1260〜1280頃活躍)などがおり、翻訳ブームの大きさがわかります。

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