ヘロンの公式

数学Ⅰ平面図形数学Ⅰ

 3辺の長さから三角形の面積を求める公式です。
中学生から高校生まで、知っていると非常に便利な計算方法です。
①ヘロンの公式と名前の由来
②証明(中3レベル)
③証明(数Ⅰレベル)


目次
  • 1. ①ヘロンの公式と名前の由来
  • 2. ②証明(中3レベル)
  • 3. ③証明(数Ⅰレベル)

①ヘロンの公式と名前の由来

ヘロンの公式

 3辺の長さが \(~a ,b,,c~\) の三角形がある。

この三角形の面積 \(~S~\) は \(~\displaystyle s=\frac{a+b+c}{2}~\) を使って、次のように表される。
\begin{equation}
S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}
\end{equation}

3辺の長さが整数の三角形であれば、面積は簡単に求められそうですね。
実際の例で見てみましょう。

次の△ABCの面積を求める。

まずは、 \(~s~\) の値を求めると、
\begin{align}
s&=\displaystyle \frac{8+5+7}{2} \\
\\
&=10
\end{align}
よって、求めたい△ABCの面積 \(~S~\) は、
\begin{align}
S&=\sqrt{10(10-8)(10-5)(10-7)} \\
&=\sqrt{10 \cdot 2 \cdot 5 \cdot 3 } \\
&=10\sqrt{3}
\end{align}
と求められる。

本来であれば、AからBCに垂線を引いて三平方の定理を利用したり、余弦定理から面積の公式を使ったりと非常に面倒な計算をしなければなりません。
しかし、辺の長さが整数であれば、ヘロンの公式で計算を楽にすることができます。
 
ヘロンの公式は、紀元前から知られていました。

アルキメデスがヘロンの公式を知っていたことから、紀元前3世紀には公式自体は存在していた。紀元前1世紀末、エジプト人数学者であるヘロンが著書の中でこの公式の証明の1つを発表したため、アラブの数学者たちが彼の名前を公式に付け、「ヘロンの公式」が誕生した。ヘロンはギリシャ文化とバビロニア文化に精通した知識人であり、数学の中でも特に幾何分野に関して業績を残した人物である。

では、その証明を見てみましょう。


②証明(中3レベル)

まずは、三平方の定理を使っていく証明方法です。

証明

AからBCに垂線BHを引く。 \(~BH=x~\) とする。

△ABHで三平方の定理より、
\begin{equation}
AH^2=c^2-x^2・・・①
\end{equation}
また、△ACHで三平方の定理より、
\begin{equation}
AH^2=b^2-(a-x)^2・・・②
\end{equation}
① , ②より、
\begin{align}
c^2-x^2 &= b^2-(a-x)^2 \\
c^2-x^2 &= b^2-(a^2-2ax+x^2) \\
c^2-x^2 &= b^2-a^2+2ax-x^2 \\
-2ax&=b^2-a^2-c^2 \\
\\
x&=\displaystyle \frac{a^2+c^2-b^2}{2a}
\end{align}
よって、△ABCの高さAHは、
\begin{align}
AH&=\sqrt{c^2-x^2} \\
\\
&=\displaystyle \sqrt{c^2-\frac{(a^2+c^2-b^2)^2}{4 a^2}} \\
\\
&=\sqrt{c^2-\frac{a^4+c^4+b^4+2 a^{2} c^2-2 b^{2} c^2-2 a^{2} b^2}{4 a^2}} \\
\\
&=\sqrt{\frac{4a^2c^2-(a^4+c^4+b^4+2 a^{2} c^2-2 b^{2} c^2-2 a^{2} b^2)}{4 a^2}} \\
\\
&=\sqrt{\frac{4a^2c^2-a^4-c^4-b^4-2 a^{2} c^2+2 b^{2} c^2+2 a^{2} b^2)}{4 a^2}} \\
\\
&=\sqrt{\frac{-a^4-c^4-b^4+2 a^{2} c^2+2 b^{2} c^2+2 a^{2} b^2)}{4 a^2}} \\
\\
&=\sqrt{\frac{-(a^4+b^4+c^4-2 a^{2} c^2-2 b^{2} c^2-2 a^{2} b^2)}{4 a^2}} \\
\\
&=\sqrt{\frac{-\{ (a^2-b^2-c^2)^2-4b^{2}c^2 \}}{4 a^2}} \\
\\
&=\sqrt{\frac{-\{ (a^2-b^2-c^2)+2bc\}\{ (a^2-b^2-c^2)-2bc\}}{4 a^2}} \\
\\
&=\sqrt{\frac{-\{ a^2-(b^2+c^2-2bc)\}\{ a^2-(b^2+c^2+2bc)\}}{4 a^2}} \\
\\
&=\sqrt{\frac{-\{ a^2-(b-c)^2\}\{ a^2-(b+c)^2\}}{4 a^2}} \\
\\
&=\sqrt{\frac{-(a+b-c)(a-b+c)(a+b+c)(a-b-c)}{4 a^2}} \\
\\
&=\sqrt{\frac{-(a+b+c)(a-b-c)(a-b+c)(a+b-c)}{4 a^2}} \\
\\
&=\sqrt{\frac{(a+b+c)(b+c-a)(a-b+c)(a+b-c)}{4 a^2}} \\
\\
&=\sqrt{\frac{(a+b+c)}{2}\cdot \frac{(b+c-a)}{2}\cdot \frac{(a-b+c)}{2}
\cdot \frac{(a+b-c)}{2}\cdot \frac{4}{a^2}} \\
\\
&=\sqrt{\frac{(a+b+c)}{2}\cdot \frac{(a+b+c-2a)}{2}\cdot \frac{(a+b+c-2b)}{2}
\cdot \frac{(a+b+c-2c)}{2}\cdot \frac{4}{a^2}} \\
\\
&=\frac{2}{a} \sqrt{\left( \frac{a+b+c}{2} \right) \left( \frac{a+b+c}{2}-a \right) \left( \frac{a+b+c}{2}-b \right) \left( \frac{a+b+c}{2}-c \right) }
\\
\end{align}
ここで、 \(~s=\displaystyle \frac{a+b+c}{2} ~\) より、
\begin{equation}
AH=\displaystyle \frac{2}{a} \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}
\end{equation}
が求まる。
最後に△ABCの面積を求めると、
\begin{align}
△ABC&=\displaystyle \frac{1}{2} a \cdot AH \\
\\
&=\frac{1}{2} a \cdot \frac{2}{a} \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)} \\
\\
&=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}
\end{align}
となり、ヘロンの公式が得られた。

途中で \(~(a+b+c)^2~\) の展開という数Ⅰの知識もちょっと使いますが、基本的な部分は中3までの知識で導けます。


③証明(数Ⅰレベル)

もう1つは三角比を用いた証明方法です。

証明

∠Aに関する余弦定理を使って変形していくと、
\begin{align}
a^2&=b^2+c^2-2bc \cos{A} \\
2bc \cos{A}&=b^2+c^2-a^2 \\
\cos{A}&= \displaystyle \frac{b^2+c^2-a^2}{2bc}
\end{align}
となる。これを \(~\sin{A}~\) に変換すると、
\begin{align}
\sin{A}&=\sqrt{1-\cos^2{A}} \\
&=\sqrt{(1+\cos{A})(1-\cos{A})} \\
&=\displaystyle \sqrt{\left(1+\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc} \right) \left(1-\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc} \right) } \\
\\
&= \sqrt{\left(\frac{2bc}{2bc}+\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc} \right) \left(\frac{2bc}{2bc}-\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc} \right) } \\
\\
&= \sqrt{\left(\frac{b^2+2bc+c^2-a^2}{2bc} \right) \left(\frac{a^2-b^2+2bc-c^2}{2bc} \right) } \\
\\
&= \sqrt{\left(\frac{b^2+2bc+c^2-a^2}{2bc} \right) \left\{ \frac{a^2-(b^2-2bc+c^2)}{2bc} \right\} } \\
\\
&= \sqrt{\left\{ \frac{(b+c)^2-a^2}{2bc} \right\} \left\{ \frac{a^2-(b-c)^2}{2bc} \right\} } \\
\\
&= \sqrt{\left\{ \frac{(b+c+a)(b+c-a)}{2bc} \right\} \left\{ \frac{(a+b-c)(a-b+c)}{2bc} \right\} } \\
\\
&=\frac{1}{2bc} \sqrt{(b+c+a)(b+c-a)(a+b-c)(a-b+c) } \\
\\
&=\frac{1}{2bc} \sqrt{(a+b+c)\{(a+b+c-2a)\}\{(a+b+c-2c)\} \{(a+b+c-2b)\} } \\
\\
&=\frac{1}{2bc} \sqrt{(a+b+c)\{(a+b+c-2a)\} \{(a+b+c-2b)\}\{(a+b+c-2c)\} } \\
\end{align}
ここで、 \(~\displaystyle s=\frac{a+b+c}{2}~\) から、 \(~a+b+c=2s~\) を代入すると、
\begin{align}
\sin{A}&=\displaystyle \frac{1}{2bc} \sqrt{2s(2s-2a)(2s-2b)(2s-2c) } \\
\\
&=\displaystyle \frac{1}{2bc} \sqrt{2s \cdot 2(s-a) \cdot 2(s-b) \cdot 2(s-c) } \\
\\
&=\displaystyle \frac{1}{2bc} \cdot 4 \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c) } \\
\\
&=\displaystyle \frac{2}{bc} \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c) } \\
\end{align}
である。△ABCの面積を \(~\sin{A}~\) を使って求めると、
\begin{align}
△ABC&=\displaystyle \frac{1}{2} bc \sin{A} \\
\\
&=\displaystyle \frac{1}{2} bc \cdot \frac{2}{bc} \sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c) } \\
\\
&=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c) }
\end{align}
と求まる。
 
以上より、ヘロンの公式が示された。 \(~\blacksquare\)

これまたものすごい計算量でした。


3辺の長さが整数、できれば3辺の和が偶数になると、非常に楽な公式ですね。
中学生のときにヘロンの公式に出会い、感動したのを思い出しました。

   
 
 


◇参考文献等
・高橋陽一郎 ほか29名(2016)『詳説 数学Ⅰ 改訂版』,pp.147,啓林館.
・ヘロンの画像©Wikipedia(パブリックドメイン)

数学Ⅰ平面図形数学Ⅰ

Posted by Fuku