数学の変遷をたどる学問である数学史。
数学史を学ぶにあたり、どんな本を選べばいいか悩んでいませんか?
数学史は学校で学ぶ機会がほとんどない分、市場に出回っている本の種類は少なく、1冊1冊が高価となっています。
また、読者が少ない分、本に関する十分なレビューが得られないのも現状。
そこで、数学史に関する本を10冊以上参考にしながら、数学史の記事を作成している当ブログ管理人が、おすすめの数学史の本を紹介。
本のサイズや重さといった基本情報から、記載されている内容や実際に使用した感想まで細かく解説しています。
この記事を読むことで、目的に合った数学史の本を手に入れることができます。
このサイトで使用中の数学史の本リスト
書籍名をクリックすると、詳しい解説までスクロールします。
タイトル | 主な内容 | 時代 | おすすめ度 | |
1 | カッツ 数学の歴史 | 出来事・人物 | 全時代 | ★★★★★ |
2 | メルツバッハ&ボイヤー 数学の歴史Ⅰ | 出来事・人物 | ~17世紀前半 | ★★★★★ |
3 | メルツバッハ&ボイヤー 数学の歴史Ⅱ | 出来事・人物 | 17世紀後半~ | ★★★★★ |
4 | 数学の流れ30講上 | 出来事・人物 | ~16世紀 | ★★★★ |
5 | 数学の流れ30講中 | 出来事・人物 | 17~19世紀 | ★★★★ |
6 | 数学の流れ30講下 | 出来事・人物 | 20世紀~ | ★★★★ |
7 | 数学史 数学5000年の歩み | 出来事 | 全時代(古代中心) | ★★★ |
8 | 数学の歴史物語 | 出来事 | 全時代 | ★★ |
9 | 世界数学者事典 | 人物 | 全時代 | ★★★★★ |
10 | 数学者図鑑 | 人物 | 全時代 | ★★★★★ |
11 | ずかん 数字 | 数字 | ~中世 | ★★★★★ |
12 | フィボナッチの兎 | 出来事 | 全時代 | ★★★ |
13 |
13冊目以降、適宜更新していきます。
1. カッツ 数学の歴史
おすすめ度は5点中5点。
数学史を本格的に学ぶ人は、持っておきたい1冊です。
基本情報
書籍名 | カッツ 数学の歴史 |
著者等 | 著:ヴィクター・J・カッツ 監訳:上野健爾・三浦伸夫 翻訳:中根美知代・高橋秀裕・林知宏・大谷卓史・佐藤賢一・東慎一郎・中澤聡 |
出版社 | 共立出版 |
初版発行日 | 2005年6月30日 |
値段 | 19,000円+税 |
サイズ | B5・1024ページ・厚さ5.3cm・2.1kg |
刷色 | 白黒 |
このサイトで使用しているのは、2009年6月15日発行の初版3刷です。

使用感:出来事も人物も古代から現代まで抜かりない
大きくて、厚くて、重い。
持ち運ぶには適さないサイズとなっています。
しかし、その分情報量が豊富。
数学の発展に欠かせない出来事や人物が細かく解説されています。
構成としては、時代ごとに章立てされており、その章の中で分野ごとに節立てされています。
そのため、同時代の他地域や他人物の功績を比較しながら読んでいくことが可能です。
数式や図、写真が随所に挿入されているため、読み進めるうえでの理解にもつながります。
また、情報量が多い分、時代ごとの年表、用語別・著書別・人名別の索引、理解を促す練習問題まで掲載されているのが嬉しい点。(練習問題の解説が無いのが残念ですが‥‥)
「数学史と言えばカッツ」というくらい有名なので、数学史を本格的に学ぶ人は是非手にしたい1冊です。
1章「古代の数学」は、カッツ 数学の歴史で試し読みできるので、是非ご覧ください!
2~3. メルツバッハ&ボイヤー 数学の歴史Ⅰ・Ⅱ
おすすめ度は5点中5点。
数学史を本格的に学びたいけど、カッツの情報量がきついという方はこちら!
基本情報
『メルツバッハ&ボイヤー 数学の歴史』は、ⅠとⅡの2冊構成となっています。
書籍名 | メルツバッハ&ボイヤー 数学の歴史 Ⅰ:数学の萌芽から17世紀前期まで Ⅱ:17世紀後期から現代へ |
著者等 | 著:Uta C.Merzbach and Carl B.Boyer 監訳:三浦伸夫・三宅克哉 翻訳:久村典子 |
出版社 | 朝倉書店 |
初版発行日 | 2018年4月10日 |
値段 | Ⅰ:6,500円+税 Ⅱ:5,500円+税 |
サイズ | Ⅰ:A5・484ページ・厚さ2.7cm・630g Ⅱ:A5・372ページ・厚さ2.3cm・510g |
刷色 | 白黒 |
このサイトで使用しているのは、2018年4月10日発行の初版1刷です。

使用感:カッツよりも手軽で、地域や人物単位でまとまっている
カッツよりも小さい紙のサイズで、2冊構成となったことで持ち運びもしやすくなりました。
お値段も2冊合わせて、カッツの6割ほど。
内容としては、数学の起源からポアンカレ予想の解決(2003年)まで、全時代について扱っており、17世紀で1冊目と2冊目が区切れています。
カッツが時代ごとの章立て、地域や分野ごとに節立てしていたのに対し、メルツバッハ&ボイヤーは地域や分野ごとに章立てをしています。
特に、エウクレイデス、アルキメデス、アポロニオス、オイラー、ガウスの5人に関しては、それぞれ1章ずつ割かれており、著作を中心に各分野への貢献内容が細かく書かれています。
このサイトでは、このメルツバッハ&ボイヤーを教科書としたうえで、他の本で補足を加えて数学史の記事を作成中。
個人的にはカッツよりも読みやすいと思うので、この本を中心に数学史を学ぶことをおすすめします!
1章「起源」から2章「古代エジプト」の途中まで、メルツバッハ&ボイヤー 数学の歴史I ―数学の萌芽から17世紀前期まで―で試し読みできるので、是非ご覧ください!
4~6. 数学の流れ30講上・中・下
おすすめ度は5点中4点。
数学史の主な流れを掴みたい人におすすめです。
基本情報
『数学の流れ30講』は、上と中と下の3冊構成となっています。
書籍名 | 数学の流れ30講 上:16世紀まで 中:17世紀から19世紀まで 下:20世紀数学の広がり |
著者等 | 著:志賀浩二 |
出版社 | 朝倉書店 |
初版発行日 | 上:2007年2月20日 中:2007年9月5日 下:2009年9月25日 |
値段 | 上:2,900円+税 中:3,400円+税 下:3,200円+税 |
サイズ | 上:A5・208ページ・厚さ1.3cm・300g 中:A5・240ページ・厚さ??cm・??g※ 下:A5・232ページ・厚さ??cm・??g※ |
刷色 | 白黒 |
※2022年10月時点、中巻と下巻はまだ購入していません。
このサイトで使用しているのは、2014年10月25日発行の初版4刷です。

使用感:読みやすいが、情報量が乏しい
2022年10月の時点において、上巻のみ使用しているため、以下は上巻のみの使用感となります。
上巻だけで見ると、16世紀までの内容を200ページで述べているため、情報量に乏しいという印象を受けました。
例として、カッツやメルツバッハ&ボイヤーでは細かく語られていた紀元前のインドや中国に関する内容が、数行でまとめられている程度に留まっています。
しかし、数学の「流れ」を掴む上では、それらは本流ではありません。
あくまで数学の流れを30講×3冊で掴むために記されているため、短時間で数学史の主な流れをたどることができます。
実際、1講につき10ページ未満でまとめられているため、1日1講読み進めれば、3ヶ月で紀元前から現代へと旅することができます。
7 数学史 数学5000年の歩み
おすすめ度は5点中3点。
古代に重きを置きつつ、数学史全体の流れを掴みたい人におすすめです。
基本情報
書籍名 | 数学史 数学5000年の歩み |
著者等 | 著:中村滋・室井和男 |
出版社 | 共立出版 |
初版発行日 | 2014年11月23日 |
値段 | 2,000円+税 |
サイズ | 四六版※・304ページ・厚さ1.8cm・320g |
刷色 | 白黒 |
※四六版のサイズは127mm×188mmで、A5サイズよりも若干小さめです。
このサイトで使用しているのは、2015年1月25日発行の初版2刷です。
サイズ感としては以下の通り(右下をA5の紙と合わせています)。

使用感:古代エジプトやバビロニアに詳しい
紀元前から現代までを網羅した数学史の本としては、非常に手軽。
しかし、内容としては本文全263ページ中、古代までで139ページ使っていることもあり、中世以降を知るには物足りなさを感じます。
その分、古代エジプト(22ページ分)やバビロニア(38ページ分)の内容が充実しており、特にバビロニアの粘土板が細かく解説されています。
また、時代を縦断するコラムが豊富なので、数学史に関する興味が引き立つ1冊となるでしょう。
§0「『数学』という学問」から§2「古代エジプトの数学」の途中まで、共立出版HPから試し読みできるので、是非ご覧ください!
8 数学の歴史物語
おすすめ度は5点中2点。
数学史の一連の流れを知っている人が、さらに細かい知識を得たいときにおすすめです。
基本情報
書籍名 | 数学の歴史物語 |
著者等 | 著:ジョニー・ボール 訳:水谷淳 |
出版社 | SB Creative |
初版発行日 | 2018年7月20日 |
値段 | 2,700円+税 |
サイズ | 四六版※・520ページ・厚さ3.0cm・540g |
刷色 | 白黒 |
※四六版のサイズは127mm×188mmで、A5サイズよりも若干小さめです。
このサイトで使用しているのは、2018年7月20日発行の初版です。
サイズ感としては以下の通り(右下をA5の紙と合わせています)。

使用感:数学史をある程度知っていないと繋がらない
数学史の一連の流れについて触れられています。
ただ、扱われている話題が様々であり、読んでいて流れが掴みづらいのが特徴です。
逆を言えば、流れの関係上で他の数学史の本では触れられていないような細かい話題も登場するため、数学史を学んだことのある人にとっては興味深い発見がたくさんできる内容となっています。
また、そういった話題が多い時代だからか、古代ギリシャにページの約3割を費やしているのも特徴的です。
「はじめに」から1章「最古の伝説的数学者」の途中まで、数学の歴史物語 古代エジプトから現代までから試し読みできるので、是非ご覧ください!
9. 世界数学者事典
おすすめ度は5点中5点。
数学者を調べる際に必要な1冊です。
基本情報
書籍名 | 世界数学者事典 |
著者等 | 著:ベルトラン・オーシュコルヌ、ダニエル・シュラットー 訳:熊原啓作 |
出版社 | 日本評論社 |
初版発行日 | 2015年9月25日 |
値段 | 6,500円+税 |
サイズ | A5・704ページ・厚さ3.8cm・880g |
刷色 | 白黒 |
このサイトで使用しているのは、2015年9月25日発行の初版です。

使用感:859名収録で網羅性抜群
数学者だけで700ページが埋まるという納得の網羅性。
一番古くは紀元前6世紀頃のタレスから、現在において存命の数学者まで、古今東西あらゆる859名の数学者の情報が収められています。
著作や功績だけでなく、生い立ちや有名な逸話まで掲載されているため、その数学者の人となりを知ることが可能です。
活躍した場所、出生年と死亡年、名前の英語表記などの基本情報も最初にわかりやすく書かれているのも特徴の1つ。
数学者を調べる際には是非持っておきたい1冊と言えるでしょう。
このサイトに出てくる数学者の出生年、死亡年、英語表記はこの本を参考にしています。
10. 数学者図鑑
おすすめ度は5点中5点。
カラーで読みやすく、数学好きなら興味を惹かれる内容が盛りだくさんです。
基本情報
書籍名 | 数学者図鑑 |
著者等 | 著:本丸諒 |
出版社 | かんき出版 |
初版発行日 | 2022年5月23日 |
値段 | 1,800円+税 |
サイズ | B5変型※・192ページ・厚さ1.6cm・420g |
刷色 | カラー |
※この本のサイズは184mm×211mmで、B5サイズ(182mm×257mm)と横幅はほぼ同じです。
このサイトで使用しているのは、2022年7月6日発行の第2版です。

使用感:絵本のように読みやすい
オールカラーで、図や絵であふれているため、数学好きでなくても楽しめる1冊となっています。
内容としては、タレスからアラン・チューリングまで、古今東西の数学者の中でも著名人34名が紹介されています。
そのため、一人あたりに割かれているページ数が多く、その数学者の功績だけでなく、有名なエピソードまで収録。
数学史を細かく学ぶ上では、掲載されていない数学者が多いように感じるかもしれません。
しかし、数学者の有名どころをしっかり抑えているため、まずは読んで興味の幅を広げてみるのもよいでのはないでしょうか?
オールカラーで相当なボリュームなのに、2000円以下というのも嬉しいポイントです。
実際の本の雰囲気は数学者図鑑の試し読みで味わってみてください。
目次から、扱われている数学者もわかります!
11. ずかん 数字
おすすめ度は5点中5点。
「数字」の歴史を知ることができるカラー本です。
基本情報
書籍名 | ずかん 数字 |
著者等 | 監修:中村滋 |
出版社 | 技術評論社 |
初版発行日 | 2019年6月5日 |
値段 | 2,680円+税 |
サイズ | B5・128ページ・厚さ1.0cm・520g |
刷色 | カラー |
このサイトで使用しているのは、2019年6月5日発行の初版第1刷です。

使用感:端的な説明と絵によりわかりやすい
「ずかん」というだけあって、オールカラーで見ていて楽しい中身となっています。
数字だけに焦点を当てているため、古代エジプトやバビロニアなどの地域別の数字や、$~0~$や小数の発明についてなど、誰もが楽しめる題材となっています。
説明文は短いながらも、当時の数字を理解するうえで必要な情報が含まれており、子どもだけでなく大人も学ぶことができます。
誰もが知る数字を深く理解するために適した1冊。
数字 (ずかん)の画像では、見開きページの例を見ることができます。
本のわかりやすさを実感してみてください!
12. フィボナッチの兎
おすすめ度は5点中3点。
数学史に関する読み物として楽しめます。
基本情報
書籍名 | フィボナッチの兎 |
著者等 | 著:アダム・ハート・デイヴィス 訳:緑慎也 |
出版社 | 創元社 |
初版発行日 | 2020年10月10日 |
値段 | 1,800円+税 |
サイズ | A5変型※・176ページ・厚さ1.5cm・720g |
刷色 | カラー |
※この本のサイズは152mm×210mmで、A5サイズ(148mm×210mm)と縦幅は同じです。
このサイトで使用しているのは、2020年10月10日発行の初版第1刷です。


使用感:時代を超えた話題が多い
タイトルだけ見ると、数学者レオナルド・フィボナッチに焦点を当てた本のように思えますが、実際は数学的な面白い発見を断片的に紹介している本となっています。
本書のまえがきには、以下のように書かれています。
数学的発見はすべて、フィボナッチのウサギの数列のように、先行する何かの上に築かれ、さらに大きく育ったものだ。その成長はいまもつづいている。
『フィボナッチの兎』p9より
フィボナッチは現在使われているアラビア数字($~1~,~2~,~3~,\cdots$)を、西欧に紹介した人物として知られています。
彼の貢献があったからこそ、その後の数学者によるたくさんの数学的発見があり、そういった意味で数学が過去未来とつながっていると述べられています。
本の書かれ方としても、1つの話題に対して、過去や未来とどう繋がっているのかが述べられているため、数学のつながりを感じながら興味深い話題を理解することができます。
フィボナッチの兎: 偉大な発見でたどる数学の歴史 (創元ビジュアル科学シリーズ3)の画像では、見開きページの例を見ることができます。
本書随所にちりばめられているシュールな絵も特徴です!