根号($ \sqrt{\quad}$)の中に根号($ \sqrt{\quad}$)、さらにその中にも根号($ \sqrt{\quad}$)・・・。
高校数学では二重根号まで習いますが、今回は無限に根号の中に根号がある式の値を求めます。
Ⅰ 無限多重根号とは
Ⅱ はさみうちによる解法
Ⅲ 置き換えによる解法
この記事は①(解法編)と「②(計算結果編)」の二部作です。
Ⅰ 無限多重根号とは
数学Ⅰで、二重根号の外し方を習いました。具体的には、
\begin{align}
&\sqrt{8+2\sqrt{15}} \\
&=\sqrt{(\sqrt{5}+\sqrt{3})^2} \\
&=\sqrt{5}+\sqrt{3}
\end{align}
というような形でした。
また、少し難しい形になると、
\begin{align}
&\sqrt{5-\sqrt{21}} \\
\\
&=\displaystyle \sqrt{\frac{10-2\sqrt{21}}{2}} \\
\\
&=\sqrt{\frac{(\sqrt{7}-\sqrt{3})^2}{2}} \\
\\
&=\frac{\sqrt{7}-\sqrt{3}}{\sqrt{2}} \\
\\
&=\frac{\sqrt{14}-\sqrt{6}}{2} \\
\end{align}
というところまで学んでいます。
今回は”二重”ではなく、“無限多重”ですので、根号の中に根号が無限に並んでいく式を考えていきます。
具体的に、今回解いていく式は次のようなものです。
次の値を求めなさい。
\begin{equation}
\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2+\cdots}}}}
\end{equation}
これが延々と連なっていきますので、この値がいくつになるのかは見当つきませんよね。
しかし、とある計算方法を施していけば、この式の値が求まり、しかもきれいな数値が出てきます。
では、実際に計算していきましょう。
Ⅱ はさみうちによる解法
まずは「はさみうちの原理」による解法です。先ほどの無限多重根号の式を 数列 として考えてあげます。
漸化式 $~a_{n}=\sqrt{2+a_{n-1}},a_{0}=0~$ を考える。
この数列 $~\{ a_{n} \}~$ は、
\begin{align}
a_{1}&=\sqrt{2} \\
a_{2}&=\sqrt{2+\sqrt{2}} \\
a_{3}&=\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2}}} \\
a_{4}&=\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2}}}} \\
\end{align}
となるため、
\begin{equation}
\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_{n}=\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2+\cdots}}}}
\end{equation}
\begin{align}
\displaystyle &\lim_{n \to \infty}a_{n} \\
&=\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2+\cdots}}}}
\end{align}
を求めればよい。
ここで、特性方程式 $~X=\sqrt{2+X}~$ を考える。
特性方程式の両辺を2乗して、 $~X~$ を求めると
\begin{align}
X^2&=2+X \\
X^2-X-2&=0 \\
(X-2)(X+1)&=0 \\
X&=-1, 2
\end{align}
となり、特性方程式の右辺は $~\sqrt{2+X}~$ であるため、 $~X \ge 0~$ 。
したがって、 $~X=2~$ である。
そこで、数列 $~\{ a_{n}-2 \}~$ の絶対値を考えていくと、
\begin{align}
|a_{n}-2|&=|\sqrt{2+a_{n-1}}-2| \\
\\
&=\displaystyle \left| \frac{(\sqrt{2+a_{n-1}}-2)(\sqrt{2+a_{n-1}}+2)}{\sqrt{2+a_{n-1}}+2} \right| \\
\\
&=\left| \frac{2+a_{n-1}-4}{\sqrt{2+a_{n-1}}+2} \right|\\
\\
&=\left| \frac{a_{n-1}-2}{\sqrt{2+a_{n-1}}+2} \right| \\
\\
&=\left| \frac{1}{\sqrt{2+a_{n-1}}+2}(a_{n-1}-2) \right| \\
\end{align}
\begin{align}
&| a_{n}-2 |
\\
&=| \sqrt{2+a_{n-1}}-2 | \\
\\
&=\displaystyle \left| \frac{(\sqrt{2+a_{n-1}}-2)(\sqrt{2+a_{n-1}}+2)}{\sqrt{2+a_{n-1}}+2} \right| \\
\\
&=\left| \frac{2+a_{n-1}-4}{\sqrt{2+a_{n-1}}+2} \right| \\
\\
&=\left| \frac{a_{n-1}-2}{\sqrt{2+a_{n-1}}+2} \right| \\
\\
&=\left| \frac{1}{\sqrt{2+a_{n-1}}+2}(a_{n-1}-2) \right| \\
\end{align}
ここで、 $~\sqrt{2+a_{n-1}} > 0~$ より、
\begin{equation}
\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2+a_{n-1}}+2} < \frac{1}{2}
\end{equation}
が成り立つので、
\begin{equation}
\displaystyle |a_{n}-2| < \frac{1}{2} |a_{n-1}-2|
\end{equation}
が言える。
この式を繰り返し使っていくと、
\begin{align}
\displaystyle \left| a_{n}-2 \right| & < \frac{1}{2} \left| a_{n-1}-2 \right| \\
\\
& < \frac{1}{2^2} \left| a_{n-2}-2 \right| \\
\\
& < \frac{1}{2^3} \left| a_{n-3}-2 \right| \\
\\
& \cdots \\
\\
\\
& < \frac{1}{2^{n}} \left| a_{0}-2 \right| \\
\\
&= \frac{1}{2^{n}} \left| 0-2 \right| \\
\\
&=\frac{1}{2^{n}} \cdot 2 \\
\\
&=\frac{1}{2^{n-1}}
\end{align}
以上をまとめると、
\begin{equation}
0 < \displaystyle \left| a_{n}-2 \right| < \frac{1}{2^{n-1}}
\end{equation}
となり、 $~\displaystyle \lim_{n \to \infty}{\frac{1}{2^{n-1}}}=0~$ であることから、はさみうちの原理より
\begin{equation}
\displaystyle \lim_{n \to \infty}{\left| a_{n}-2 \right|}=0
\end{equation}
したがって、
\begin{equation}
\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_{n}=2
\end{equation}
が求まった。 $~\blacksquare~$
求めたい式を、数列と極限を使って表し、漸化式をうまく式変形することで、はさみうちが適用できる形になるという技巧的な方法でした。
Ⅲ 置き換えによる解法
もう1つの解法は、厳密さには多少欠けますが、直感的にわかりやすい方法です。
求めたい式を
\begin{equation}
x=\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2+\cdots}}}}
\end{equation}
とおく。(厳密には、右辺が収束することを証明する必要があります。)
このとき、式が無限に続くことを利用して次のように変形できる。
\begin{align}
x&=\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2+\cdots}}}} \\
\\
&=\sqrt{2+\left( \sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2+\cdots}}} \right) } \\
\\
&=\sqrt{2+x} \\
\end{align}
したがって、
\begin{align}
x&=\sqrt{2+x} \\
x^2&=2+x \\
x^2-x-2&=0 \\
(x-2)(x+1)&=0 \\
x&=-1,2
\end{align}
この方程式の右辺は $~\sqrt{2+x} ~$ であるため、 $~x \ge 0~$ 。
以上より、 $~x=2~$ と求まった。 $~\blacksquare~$
どちらの方法にせよ、
\begin{equation}
\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt{2+\cdots}}}}=2
\end{equation}
が求まりました。
無限に根号と $~2~$ が続いていくのに、結局は $~2~$ に等しくなるなんて、根号の無駄撃ちですね。(笑)
今回は根号の中の数が $~2~$ でしたが、他の数のときにはどんな値になるのかを次回調べてみます。
興味があれば、「無限多重根号②(計算結果編)」もご覧ください。
もし、これが有限だったら・・・。それこそ計算できません。無限だから計算できるのです。
◇参考文献等
・「無限多重根号の不思議」,<http://azisava.sakura.ne.jp/math/nested_radical.html > 2019年3月31日アクセス
コメント
コメント一覧 (2件)
はさみうちによる解法の、絶対値をつける直前の式ですが、言えません。
(全体の結果としては問題ありませんが)
1/(√(2+an-1) + 2) < 1/2 なのはいいんですが、
an – 2も、an-1 – 2 も負なので、
an -2 < (1/2) (an-1 – 2)
としてしまうのはまずいです。
コメントありがとうございます。
最初から絶対値を付けた形に修正いたしました。