ランドルト環

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視力検査で使われる「C」のことをランドルト環といいます。ランドルト環の大きさは視力に応じてどのように決まっているのか? そこに隠された数学を探ります。
①視力1.0の定義
②ランドルト環の大きさの導出
③視力の計算式



目次
  • 1. ①視力1.0の定義
  • 2. ②ランドルト環の大きさの導出
  • 3. ③視力の計算式

①視力1.0の定義

視力検査では、「C」のマークがよく使われています。この「C」のことを「ランドルト環」といい、1888年にフランスのランドルトという眼科医が考案しました。1909年の国際眼科学会で正式に制定された後、日本でもこのランドルト環が使用されるようになりました。
 
なぜランドルト環を使うのでしょうか?それを説明するにあたって必要な「視角」という言葉を先に理解しておきます。

視角

視角とは、ある視標の両端と目のなす角度のことで、1°の\( \displaystyle \frac{1}{60} \)である1’(1分)を基本単位としている。

そして「視角」という言葉を用いて、正常な目(視力1.0)は次のように定義されます。

視力1.0の定義

文字や形を視標として用いて、各部の太さや間隔を視角1分、その全体を視角5分としたとき、正常な目は見分けることができる。

つまり、こういうことです。↓

※実際の角度よりも大きく表現している。

 何m離れた場所から視力検査をするかによって、ランドルト環の大きさは変わってくるということがわかります。


②ランドルト環の大きさの導出

では、数学を使って視力1を検査するランドルト環の大きさを求めてみましょう。

求め方

\(~l~\) m 離れたところから視力検査することを考える。

上図において、次の式が成り立つ。
\begin{equation}
AB=OB \cdot \tan{\angle AOB}
\end{equation}
ここで、 \(~\displaystyle \angle AOB=\frac{5^\circ}{120}=\frac{1}{4320}\pi~\) より、 \(~\tan{\angle AOB}~\) の値をエクセルで求めると
\begin{equation}
\tan{\angle AOB}\fallingdotseq 0.0007272
\end{equation}
となるため、有効数字3ケタで
\begin{equation}
AB=0.000727 \cdot l (m)
\end{equation}
が成り立つ。
以上より、視力1を検査するランドルト環の全体の大きさ(\(2AB\))は有効数字3ケタで \(~0.00144 \cdot l (m)~\) と求められた。
 
また、同様の方法で、視力1を検査するランドルト環の穴の大きさを求める。
視角1分の半分( \(~\displaystyle \frac{1^\circ}{120}~\) )の \(~\tan~\) の値は、約 \(~0.0001454 ~\) であることを使って計算をすると、視力1を検査するランドルト環の穴の大きさは有効数字3ケタで \(~0.000291 \cdot l (m)~\) と求められる。

今の計算結果をまとめておきます。

視力1のランドルト環

\(~l~\) (m)離れた場所から視力検査を行う場合、視力1を検査するランドルト環について、

環全体の大きさは \(~1.44 \cdot l(mm)\)
穴の大きさは \(~0.291 \cdot l(mm)\)

という関係がある。(有効数字3ケタ)

家庭用の簡易視力検査表は3m離れて検査するものが多いので、これを例に計算してみましょう。

3m離れた場所から視力検査をする場合、視力1のランドルト環は、

・全体の大きさは、 \(~1.44 \cdot 3=4.32(mm)\)
・穴の大きさは、 \(~0.291 \cdot 3=0.873(mm)\)

となる。

実際、家にあった3m用の視力検査表で確かめてみました。

少し見にくいですが、大体合っています。


③視力の計算式

これまでは、視力1を検査するランドルト環について考えてきました。
しかしご存知の通り、視力検査表には視力0.1を測る大きなランドルト環から、視力2.0を測る極小のものまであります。
視力1以外のランドルト環の大きさについても考えておきましょう。
 
まず、視力の計算式を知っておきましょう。

視力の計算式

力は次のような式で求められる。
\begin{equation}
視力=\displaystyle \frac{1}{視角(')}
\end{equation}

意味がわかりにくいので具体例を挙げてみます。

3m離れたところから視力0.5を検査する場合

視力の計算式より、
\begin{equation}
0.5=\displaystyle \frac{1}{視角(')}
\end{equation}
となるため、式変形をして、
\begin{equation}
視角=2’ (\displaystyle \frac{2^\circ}{60} )
\end{equation}
が得られる。

※実際の角度よりも大きく表現している。
※ランドルト環全体の大きさを求めるための距離と穴の大きさを求めるための距離3mは等しい。

視力1を検査する場合、ランドルト環の全体の大きさと穴の大きさは5:1であったため、視力0.5を検査する場合はランドルト環全体の大きさは10’\( (\displaystyle \frac{10^\circ}{60} ) \)、穴の大きさは2’\( (\displaystyle \frac{2^\circ}{60} ) \)となる。
②の導出で述べた方法で、環全体の大きさと穴の大きさを求めると、
\begin{align}
環全体の大きさ&=2 \cdot 3 \cdot \tan{\displaystyle \frac{5^\circ}{60} } \\
\\
&=8.73(mm) \\
\\
穴の大きさ&=2 \cdot 3 \cdot \tan{\displaystyle \frac{1^\circ}{60} } \\
\\
&=1.75(mm)
\end{align}
となる。

先ほど同様、3m用の視力検査表で確かめてみると、大体合っています。↓↓

ということで、視力は視角(全体を5としたとき、1の違いを見分けられる)から定義されていて、それに基づいて視力検査の表(ランドルト環)が作られていることがわかりました。


視力の定義式が割と単純でびっくりです。ただ、角度で定義されるため、三角関数を使ってランドルト環という形にして、視力検査しているんですね。目、良くなりたいな~。

   
 
 


☆参考文献等
・「株式会社ニデック 目のおはなし」,<http://www.nidek.co.jp/eyestory/eye_5.html> 2017年4月4日アクセス

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Posted by Fuku