ランドルト環~視力検査のCの仕組みを数学で解説! 使われているのは反比例だった?~

 視力検査で使われる「C」のことをランドルト環といいます。
 測りたい視力と距離に応じて、ランドルト環の大きさはどのように決まっているのかを解説します。

この記事を読んでわかること
  • ランドルト環の名前の由来
  • 視力の定義とは?
  • ランドルト環の大きさはどう決まる?
目次

Ⅰ 視力とは?

Ⅰ-① ランドルト環とは?

 視力とは、目の見え方を数値化したものです。
 車の免許の更新の際には、左右片目で共に0.3以上、さらに両目で0.7以上が求められるため、そこでの視力検査に合わせて眼科や眼鏡店に行く方も多いのではないでしょうか?

 その視力検査で、多くの方が経験されているのが「C」のマークで穴の開いている部分の左・右・上・下を答える というもの。(場合によっては、ナナメも)

 この「C」のことを「ランドルト環」といい、1888年にフランスの眼科医エドムンド・ランドルトEdmund Landolt , 1846-1926)という眼科医が考案しました。
 1909年の国際眼科学会で正式に制定された後、日本でもこのランドルト環が使用されています。

エドムンド・ランドルト
<図1> エドムンド・ランドルト
(出典:anonymous/unknown, Public domain, via Wikimedia Commons)

Ⅰ-② 視角

 ランドルト環の大きさはどのように決まっているのでしょうか?

 その説明に必要な「視角」という言葉を先に解説します。

視角の定義

 視角とは、ある視標の両端と目のなす角度のことをいう。
 $~1^{\circ}~$の$~\displaystyle \frac{1}{60}~$である$~1~$分($~1^{\prime}~$)を基本単位としている。

視角
<図2> 視角

 視標とは、視力を測るときに見る目標物のことです。

Ⅰ-③ 視力 1.0 の定義

 「視角」という言葉を用いて、視力$~1.0~$は次のように定義されます。

視力 1.0 の定義

 視標全体を視角$~5~$分としたとき、見分けたい細部の太さや間隔を視角$~1~$分とする。
 この細部の太さや間隔を見分けることができるとき、その人の視力は$~1.0~$以上であるという。

 視力$~1.0~$以外を測る場合でも、視標全体の視角と細部の視角の比は$~5:1~$となります。
 視力$~1.0~$の場合は、細部の視角が$~1~$分と決まっています。(Ⅲ章で解説)

 目とランドルト環の関係は、以下のようになります。

視力1.0のランドルト環(実際の角度よりも大きく示している)
<図3> 視力1.0のランドルト環(実際の角度よりも大きく示している)

 当然ではありますが、ランドルト環から離れれば離れるほど、ランドルト環のサイズは大きくなることがわかります。

Ⅱ 視力 1.0 の距離と大きさの関係

Ⅱ-① 視力 1.0 のランドルト環の大きさ

 視力$~1.0~$を測るためのランドルト環は、どう作ればいいのでしょうか?

 距離に応じたランドルト環の大きさは以下の通りです。

視力 1.0 のランドルト環

 $~\ell~$ (m)離れた場所から視力検査を行う場合、視力$~1.0~$を検査するランドルト環について、

  • 環全体の大きさは$~1.45\ell~$(mm)
  • 穴の大きさは$~0.29 \ell~$(mm)

という関係がある。(小数第2位までで表している。)

<図4> 視力 1.0 のランドルト環の関係
<図4> 視力 1.0 のランドルト環の関係

 数値からわかる通り、視力$~1.0~$のランドルト環では、環全体と穴の大きさの比も$~1.45\ell : 0.29\ell=5:1~$となっています。 

 これは、角度$~\theta~$が非常に小さいとき、$~\tan{\theta}~$はほぼ比例の関数になるためです。

Ⅱ-② 視力 1.0 のランドルト環の大きさの証明

 では、これを証明していきましょう。三角比を使います。

視力 1.0 のランドルト環の解説

 $~\ell~$m 離れたところから、 視力$~1.0~$を検査するランドルト環の全体の大きさを求める。

 目の位置を$~O~$とし、ランドルト環の中心を$~B~$、$~OB~$と垂直なランドルト環の半径を$~AB~$とする。

視力 1.0 のランドルト環の導出
<図5> 視力 1.0 のランドルト環の導出

 このとき、$~\tan{}~$の定義から、次の式が成り立つ。

\begin{align*}
AB&=OB \cdot \tan{\angle AOB}  \\
&=\ell \cdot \tan{\angle AOB}  ~~~\cdots ①
\end{align*}

 ここで、$~\angle AOB~$の大きさは、視角$~5~$分の半分となるので、

 \angle AOB=\frac{5^{\circ}}{60}\cdot \frac{1}{2}=\frac{1}{4320}\pi

である。
 $~\tan{\angle AOB}~$ の値をエクセルで求めると

\tan{\angle AOB}\fallingdotseq 0.000727

であるため、$①$に代入することで、

 AB\fallingdotseq0.000727 \cdot \ell (m)

が成り立つ。

 以上より、視力$~1.0~$を検査するランドルト環の全体の大きさは、

\begin{align*}
 2AB&\fallingdotseq0.001454 \cdot \ell~ (m)  \\
&=1.45\ell~ (mm) 
\end{align*}

と求まった。

  視力$~1.0~$を検査するランドルト環の穴の大きさを求める。

 視角$~1~$分の半分で先ほどと同様の計算をすればよいので、

 \begin{align*}
\tan{\left(\frac{1^{\circ}}{60}\cdot \frac{1}{2}\right)} &=\tan{\frac{1}{21600}\pi}  \\
\\
&\fallingdotseq 0.000145
\end{align*}

から、求めたい穴の大きさは、

0.000290 \cdot l~(m)=0.29 \ell~(mm)

が成り立つ。■

Ⅱ-③ 距離 3m 、視力 1.0 のランドルト環

 家庭用の簡易視力検査表は$~3~$m 離れて検査するものが多いです。
 先ほどの公式を、$~\ell=3~$で確かめてみましょう。

距離 3m 、視力 1.0 のランドルト環の大きさ

  $~3~$ (m)離れた場所から視力検査を行う場合、視力$~1.0~$を検査するランドルト環について、

  • 環全体の大きさは$~1.45\cdot 3=4.35~$(mm)
  • 穴の大きさは$~0.29 \cdot 3=0.873~$(mm)

という関係がある。(小数第2位までで表している。)

 そして、実際の視力検査表がこちら。

3mの視力検査表(視力1.0)
<図6> 3mの視力検査表(視力1.0)

 $~1~$mm単位でしかわかりませんが、大体合っていることがわかります。

Ⅲ 視力の計算式

Ⅲー① 視力の計算式

 これまでは、視力$~1.0~$を検査するランドルト環について考えてきました。
 しかし、視力検査表には視力$~0.1~$を測る大きなランドルト環から、視力$~2.0~$を測る極小のものまであります。

 まずは、視力を求めるための計算式を知っておきましょう。

視力の定義

 視力は以下の式で求めることができる。

視力=\displaystyle \frac{1}{識別したい視標の視角(分)}

 視角の単位は「分」であり、 先ほどと同様$~1^{\prime}=\displaystyle \frac{ 1^{\circ} }{60}~$ となります。

 この定義をランドルト環に置き換えてあげると、

ランドルト環における視力の定義

 ランドルト環において、視力は以下の式で求めることができる。

視力=\displaystyle \frac{1}{穴の大きさの視角(分)}

 また、ランドルト環全体の大きさの視角は、穴の大きさの視角の$~5~$倍である。

 視力と視角は反比例の関係にあり、視角とランドルト環の大きさは比例関係であったため、結果的に

視力とランドルト環の大きさは反比例

と言えます。

Ⅲー② ランドルト環の大きさの一般式

 これまでのことをまとめると、ランドルト環の大きさは以下のようにわかります。

ランドルト環の大きさの一般式

 距離$~\ell~$mの位置から、視力$~p~$を測るためのランドルト環において、

  • 環全体の大きさは$~\displaystyle 2\ell \cdot \tan{\left(\frac{1}{4320p}\pi\right)} ~$(mm)
  • 穴の大きさは$~\displaystyle 2\ell \cdot \tan{\left(\frac{1}{21600p}\pi\right)} ~$(mm)

となる。

 証明はこれまでのと同様の流れでできます。

Ⅲー③ ランドルト環の例(視力0.5)

 ランドルト環をいくつか計算で求めてみましょう。

距離 3m 、視力 0.5 のランドルト環の大きさ

 距離$~3~$mの位置から、視力$~0.5~$を測るためのランドルト環を考える。

 環全体の大きさは、

\begin{align*}
&~~~~~ 2\cdot 3 \cdot \tan{\left(\frac{1}{21600\cdot 0.5}\pi\right)}  \\
\\
&=6 \cdot \tan{\left(\frac{1}{10800}\pi\right)}  \\
\\
&\fallingdotseq8.73 ~~~\text{(mm)}
\end{align*}

である。

 また、穴の大きさは、

\begin{align*}
&~~~~~ 2\cdot 3 \cdot \tan{\left(\frac{1}{4320\cdot 0.5}\pi\right)}  \\
\\
&=6 \cdot \tan{\left(\frac{1}{2160}\pi\right)}  \\
\\
&\fallingdotseq1.75 ~~~\text{(mm)}
\end{align*}

となる。

 こちらも、実際の視力検査表で確認してみると……。

3mの視力検査表(視力0.5)
<図7> 3mの視力検査表(視力0.5)

 確かに計算通りの数値となっています。

Ⅲー④ ランドルト環の例(視力5.0)

 人間の目ではありえませんが、視力$~5.0~$だとどのような世界が見えるのでしょうか?

距離 100m 、視力 5.0 のランドルト環の大きさ

 距離$~100~$mの位置から、視力$~5.0~$を測るためのランドルト環を考える。

 環全体の大きさは、

\begin{align*}
&~~~~~ 2\cdot 100 \cdot \tan{\left(\frac{1}{21600\cdot 5}\pi\right)}  \\
\\
&=6 \cdot \tan{\left(\frac{1}{108000}\pi\right)}  \\
\\
&\fallingdotseq29.09 ~~~\text{(mm)}
\end{align*}

である。

 また、穴の大きさは、

\begin{align*}
&~~~~~ 2\cdot 100 \cdot \tan{\left(\frac{1}{4320\cdot 5}\pi\right)}  \\
\\
&=200 \cdot \tan{\left(\frac{1}{21600}\pi\right)}  \\
\\
&\fallingdotseq5.82 ~~~\text{(mm)}
\end{align*}

となる。

 つまり、視力$~5.0~$を持つ生物は、$~100~$m先にある$~3cm~$のランドルト環の$~6~$mm の穴の向きを見分けることができます。

 是非公式を使って、いろいろと計算してみてください!!


鷹は人間の8倍以上の視力があるらしいよ。

そりゃ数百m先の小さな獲物も見えるよね。

コメント

コメント一覧 (2件)

  • ランドルト環の大きさを導きたく、ご参考にさせていただきました。ありがとうございます。

    1点、確認させていただきたいのですが、ランドルト環を導く公式
    環全体の大きさ : 2×L×tan(π/21600×p)
    穴の大きさ : 2×L×tan(π/4320×p)

    について、公式が逆ではないでしょうか?以下かと思います。
    環全体の大きさ : 2×L×tan(π/4320×p)
    穴の大きさ : 2×L×tan(π/21600×p)

    恐れ入りますがご確認のほどよろしくお願いいたします。

    • ryoさん

       コメントありがとうございます。
       ご指摘いただいた通り、大事な公式の部分が逆になっておりました。

       教えていただき、大変助かります。
       また何かありましたら、いつでもコメントいただけると嬉しいです。

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