メルカトル級数

 1668年、ニコラウス・メルカトルによって示された級数です。 $~\log{2}~$ の値が単純な分数の足し算・引き算によって表されます。今回もこの級数を使って、近似値計算をしてみました。
Ⅰ メルカトル級数
Ⅱ 証明
Ⅲ $~ \log{2}~$ の近似値計算


目次

Ⅰ メルカトル級数

 ニコラウス・メルカトル(1620~1687)が、1668年に著書『対数技法』の中で発表した対数のベキ級数展開です。

メルカトル級数

 次のような級数をメルカトル級数という。
\begin{equation}
\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n-1}}{n}=\log{2}
\end{equation}

  $~\sum~$ 表記だとわかりにくいので、左辺を書き換えると、
\begin{equation}
\displaystyle 1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+\cdots
\end{equation}
となります。以前のライプニッツ級数
\begin{equation}
\frac{\pi}{4}=\displaystyle 1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\cdots
\end{equation}
とよく似ていますね。式の形だけでなく、証明方法も瓜二つなので、次章で証明してみましょう。
 
※一応ですが、 $~\log{2}~$ は自然対数です。
※世界地図でよく使われるメルカトル図法のゲラルドゥス・メルカトルとは別人です。
※一般化した式
\begin{equation}
\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^n-1}{n}x^n=\log{(x+1)}
\end{equation}
のことをメルカトル級数ということもあります。(今回は $~x=1~$ の場合)


Ⅱ 証明

 ライプニッツ級数と同様の方法で証明できます。

証明

初項 $~1~$ 、公比 $~-x(0 \le x <1)~$ の無限等比級数を考えると、|公比|$<1~$ より、次のような関係式が表せる。
\begin{equation}
\displaystyle 1-x+x^2-x^3+\cdots=\frac{1}{1-(-x)}=\frac{1}{1+x}
\end{equation}
ここで、 $~x:0 \to 1~$ について、両辺積分をとると、
\begin{equation}
\displaystyle \int_{0}^{1}( 1-x+x^2-x^3+\cdots)dx=\int_{0}^{1}\frac{1}{1+x}dx ・・(*)
\end{equation}


\begin{align}
\displaystyle 1-x+x^2-x^3+\cdots&=\frac{1}{1-(-x)} \\
\\
&=\frac{1}{1+x}
\end{align}
ここで、 $~x:0 \to 1~$ について、両辺積分をとると、
\begin{align}
&\displaystyle \int_{0}^{1}( 1-x+x^2-x^3+\cdots)dx \\
\\
&=\int_{0}^{1}\frac{1}{1+x}dx ・・(*)
\end{align}

であり、左辺と右辺それぞれを計算する。

左辺について計算していくと、
\begin{align}
\displaystyle (左辺)&=\int_{0}^{1}( 1-x+x^2-x^3+\cdots)dx \\
\\
&=\left[ x-\frac{1}{2}x^2+\frac{1}{3}x^3-\frac{1}{4}x^4+\cdots \right]_{0}^{1} \\
\\
&=1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+\cdots
\end{align}
となる。
 
右辺については、
\begin{align}
\displaystyle (右辺)&=\int_{0}^{1}\frac{1}{1+x}dx \\
\\
&=\left[ \log{(1+x)} \right]_{0}^{1} \\
\\
&=\log{2}-\log{1}
\\
&=\log{2}
\end{align}
と右辺も求まった。
 
左辺と右辺の計算結果を元の等式$(*)$に代入することで、
\begin{equation}
\displaystyle 1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+\cdots = \log{2}
\end{equation}
となり、メルカトル級数は示された。 $~\blacksquare$

※ $~0 \le x <1~$ という定義域で無限等比級数の和を考えているため、正確には $~x:0 \to 1-\epsilon~$ で積分を考え、 $~\epsilon \to 0+~$ という極限の操作をしてあげる必要があります。(広義積分)


Ⅲ $~ \log{2}~$ の近似値計算

メルカトル級数は、左辺が整数分数のたし算引き算(永遠に)であるため、左辺を無限に計算することで、 $~\log{2}~$ の値を求めることができます。ちなみに、 $~\log{2}~$ の正確な近似値は
\begin{equation}
\log{2}=0.69314 71805 \cdots
\end{equation}
です。
では、どれくらいの精度なのでしょうか? $~n~$ を少しずつ大きくして計算してみました。

$~n=1~$ のとき

\begin{align}
\log{2}& \fallingdotseq 1 \\
\end{align}
$~n=1~$ の誤差は0.30685282
無論 $~\log{2}=1~$ であったら、大問題です。

$~n=2~$ のとき

\begin{align}
\displaystyle \log{2}& \fallingdotseq 1-\frac{1}{2} \\
&=0.5
\end{align}
$~n=2~$ の誤差は0.19314718
ライプニッツ級数の時に比べて、いい感じ!
(ちなみにライプニッツ級数は2項目までの誤差は0.47492598)

$~n=3~$ のとき

\begin{align}
\displaystyle \log{2}& \fallingdotseq 1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3} \\
&=\frac{5}{6} \\
&=0.83333333
\end{align}
$~n=3~$ の誤差は0.14018615
順調に誤差は減っています。

$~n=4~$ のとき

\begin{align}
\displaystyle \log{2}& \fallingdotseq 1-\frac{1}{2} +\frac{1}{3}-\frac{1}{4}\\
&=\frac{7}{12} \\
&=0.58333333
\end{align}
$~n=4~$ の誤差は0.10981385
いいですね。振動しながら、近づいてます。

少しとばして・・・・

$~n=10~$ のとき

\begin{align}
\displaystyle \log{2}& \fallingdotseq 1-\frac{1}{2} +\frac{1}{3}-\cdots-\frac{1}{10}\\
&=0.64563492
\end{align}
$~n=10~$ の誤差は0.04751226
非常にいい感じ。このままだと、 $~n=100~$ あたりで相当近似できるはず!

ということで、100までとばします。

$~n=100~$ のとき

\begin{align}
\displaystyle \log{2}& \fallingdotseq 1-\frac{1}{2} +\frac{1}{3}-\cdots-\frac{1}{100}\\
&=0.68817218
\end{align}
$~n=100~$ の誤差は0.00497500
あれ?あまり変わらない??

じゃあ、1000だ!

$~n=1000~$ のとき

\begin{align}
\displaystyle \log{2}& \fallingdotseq 1-\frac{1}{2} +\frac{1}{3}-\cdots-\frac{1}{1000}\\
&=0.69264743
\end{align}
$~n=1000~$ の誤差は0.00049975
ここまでで小数第2位まで・・・

最後に10000。

$~n=10000~$ のとき

\begin{align}
\displaystyle \log{2}& \fallingdotseq 1-\frac{1}{2} +\frac{1}{3}-\cdots-\frac{1}{10000}\\
&=0.69309718
\end{align}
$~n=10000~$ の誤差は0.00005000
ここまでで小数第3位まで・・・

Excel様お疲れ様でした。
ちなみに $~n=10000~$ のときのライプニッツ級数の誤差は0.00010000。
 
最後に、 $~n=100~$ までの値の近づき方をグラフにしました。


ライプニッツ級数とメルカトル級数は大学入試でもよく出てくる話です。知識として知っておくと、多少有利かも!?

   
 
 


◇参考文献等
・Bertrand Hauchecorne , Daniel Suratteau(2015)『世界数学者事典』,pp565-567,熊原啓作訳,日本評論社.
・「受験の月 積分漸化式の応用②」,<http://examist.jp/mathematics/math-3/integration-expression/mercator-leibniz/> 2018年7月5日アクセス

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コメント

コメント一覧 (5件)

  • 先生、ご迷惑をおかけして、すみません><

    上記のメルカトルの件、解決しました! 区分求積法に持ち込むため、無理やり第2n項まで考えるんですね!

    また、よろしくお願いいたします! レイアウトがものすごく綺麗で本当に読みやすいです!!

    • 返信遅くなり、申し訳ありません。

      「高校数学の美しい物語」さんのサイト、拝見いたしました。
      交代級数の式変形、非常にエレガントですね。
      すずさんのおっしゃる通り、区分求積法に持ち込むための式変形のようです。

  • たびたび申し訳ございません(T_T)

    正射影ベクトルについても記事にしていただくことは可能でしょうか・・

    基礎は理解しているつもりだったのですが、以下のリンクを見てよくわからなくなってしまいました(T_T)

    SとS1はカヴァリエリの定理より面積は同じですよね…その後、体積を求めたのちcos45をかけています。

    ただ、どの面にどっちの影を落としているのか、その影がどういう形をしているかなどがどうしてもわかりませんでした><

    http://jitsuryoku.jp/news/news/3491

    正射影についてできればもっと深く知りたいです!こういう問題にも応用できるよ、といった周辺知識もお教えいただけるとうれしいです^_^

    • こちらも返信遅れて申し訳ありません。

       正射影ベクトルについては、自分もなんとな~くしか理解していないのが現状です。
      いずれはきちんと理解して、記事にしたいとは思っていますが・・・。
      あまり力になれず申し訳ないです。

       記事のレイアウト、褒めていただきありがとうございます。

  • 先生、こんばんは!

    早速にわかりやすい記事をアップしてくださり、ものすごく感激しております!!

    先生、1点うかがいたいことがございます!

    以下のリンクでは、シグマ表記ですと範囲が2nとなっている理由がわかりません・・

    https://mathtrain.jp/alternate

    そのあたりもお教えいただけると嬉しいです! ^_^

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