浜村渚の計算ノート3-2(アイシテルの正弦)

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青柳碧人さんの『浜村渚の計算ノート』3巻第2話の読了記録です。
あらすじや感想だけでなく、話の中に出てきた数学的話題についても順次紹介していきます。
Ⅰ 本のデータ
Ⅱ あらすじ
Ⅲ 感想
Ⅳ 登場する数学的な話題


目次
  • 1. Ⅰ 本のデータ
  • 2. Ⅱ あらすじ
  • 3. Ⅲ 感想
  • 4. Ⅳ 登場する数学的な話題

Ⅰ 本のデータ

タイトル 浜村渚の計算ノート 3さつめ
水色コンパスと恋する幾何学
小タイトル \(~\log{100}\). アイシテルの正弦
著者 青柳 碧人
出版社 講談社
発売日 2012年6月15日
価格(税抜) 610円
ISBNコード 9784062772518


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Ⅱ あらすじ

 黒い三角定規の恐ろしさの根源でもある、催眠プログラムを作り上げた男を特定した武藤たち警察。
 その男の名は馬辺寺卓。彼の捜索をしようとした矢先に、彼が自殺したという情報が黒い三角定規対策本部に入った。
 
 馬辺寺の自殺についての捜査で忙しい中、千葉のベンチャー企業の社長が失踪したという事件も舞い込んでくる。現場に黒い三角定規のカードがあったため、千葉県警が対策本部に連絡を入れてきたという話であった。
 
 現場が千葉、千葉といえば浜村渚、ということで彼女と仲が良い武藤が担当することとなり、幕張ベイタウンにある女性5人だけで構成されるベンチャー企業、LAV-RACEまで武藤はやってきた。
 
 「No love , No life.」をスローガンに掲げるこの会社は、女性5人それぞれがそれぞれの恋の悩みを抱えていた。
 社員の一人である亀倉香奈も、徹夜で大学生グループと遊んだ後出社したところ、社長の栄田の机の上に黒い三角定規のカードがあるのを発見した。
 
 社員の亀倉、青木、菊名、菱本の4人と、栄田の婚約者でありシステムエンジニアの近藤のもとには、事件発覚前夜に次のようなメールが届いていた。

亀倉宛て「Rは1でL。みんなの鋭い頭で考えて。0.1908」
青木宛て「Rは1でL。0.0698」
菊名宛て「Rは1でL。0.5000」
菱本宛て「Rは1でL。0.3907 \(~~\) 0.5736」
近藤宛て「Rは1でL。0.1564」

 この謎を解くために、浜村渚と合流した武藤。
 渚の力で暗号は解けていき、栄田の狂言失踪ということで一応の結論がついたが、自殺した馬辺寺と失踪した栄田の関係がわかり、事件は続いていく・・・。


Ⅲ 感想

 今回のタイトルは「アイシテルの正弦」。高校生以上なら、「正弦」という言葉に聞き覚えがあるかと思います。
 
 そう。正弦と言えば高校数学の難所とも言える三角関数(数Ⅰだと三角比)の \(~\sin~\) のことです。
 
 そして、そこに4ケタの小数とくれば、多くの人は予想がつくはずです。
 

三角比の表を使うんじゃね?

と。(この予想が立つのは自分が数学を教えているから?)
 
 ってことで、三角比の表を用意しました。

 しかし、疑問が。タイトルに「正弦」とあるから \(~\sin~\) を使うことが予想つくものの、普通は(登場人物たちは) \(~\sin~\) か \(~\cos~\) か \(~\tan~\) で迷うよなぁ。
 
 ここで、5人に送られてきたメールに戻ると、「Rは1でL。」という文言が出てきます。
 
 武藤なりにRは半径(Radius)かと推測し、それがヒントになって渚ちゃんはRは直角(Right angle)のことだと進言します。(さすが、コンビ!)
 
 これにより、「Rは1」が「直角は1」、すなわち「\(\sin{90°}=1\)」から、三角関数の中でも \(~\sin~\) と判別できるのです。
 
 次になぜ「Rは1でL。」なのかを武藤は質問します。
 
 渚はアルファベットがA~Zまでの26文字であることを確かめ、Lはその12文字目と数えあげます。
 
 そして、「\(\sin{90°}=1~\) でL。」が示す意味は「90は、A~Zを3周(78文字)したのち、4周目の12文字目に該当します」ということだと渚は読み解くのです。(推理力も抜群!)
 
 となってくると、

亀倉宛て「Rは1でL。みんなの鋭い頭で考えて。0.1908」
青木宛て「Rは1でL。0.0698」
菊名宛て「Rは1でL。0.5000」
菱本宛て「Rは1でL。0.3907 0.5736」
近藤宛て「Rは1でL。0.1564」

についても、三角比の表を使えば、何のアルファベットかがわかるということです。
 
 
 さらに、話が進んでいくと栄田から近藤に「鈍い男」というメールを送っています。
 「みんなの鋭い頭で考えて」と合わせると、三角関数で「鈍い」と「鋭い」・・・

鋭角と鈍角か!!

 と気づくわけです。
 
  \(~\sin{\theta}~\) の値が同じでも、 \(~\theta~\) が鋭角か鈍角かで \(~\theta~\) の値が変わってくるので、暗号も変わってくるという面白さが押し出されています。
 
 
 そして、暗号を解いた武藤と渚と近藤が栄田に会いに行くというラストシーン。
 
 近藤から雪子(栄田)へのプロポーズ

\(~\sin{(9°+360° \times n)}=\sin{9°} ~\)
「ただし \(~n~\) は、これから俺と雪子が過ごす年月を表す、整数とする」

 今回の数学の主題に沿っていて、360°以上の角にも言及している、締めとして相応しいものでした。
 
 
 今回の話は一貫して \(~\sin~\) の話で、高校時代に苦手意識を持った人でもわかりやすく理解できるよう工夫が施されていました。
 
 渚の友達のセチの、二人の男の子への揺れ動く乙女心を、 \(~\sin{\theta}~\) で説明する例は、三角関数が苦手であった人ほど読んでほしいです。(ちなみに、二人の男の子の名前はサイトウ君とコスダ君w)
 
 では、また!!


Ⅳ 登場する数学的な話題

 この本の中で登場する数学的な話題を紹介しておきます。Fukusukeが興味を持った話題については、順次別ページで書き加えていきます。
また、本によってはネタバレにつながる話題もありますので、注意してクリックしてください。
数学的話題


 終始、三角関数が鍵となる物語でした。セチの乙女心を使っての説明は、非常に頭に残ります!!

   
 
 


◇参考文献等
・青柳碧人(2015)『浜村渚の計算ノート 3さつめ』,講談社.

浜村渚の計算ノート(3さつめ) 水色コンパスと恋する幾何学 (講談社文庫) [ 青柳碧人 ]

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Posted by Fuku