+や-の由来

文化史文化史

よく使う数学記号の1つである+や-の由来を調べてみました。
Ⅰ 12世紀の西欧にて
Ⅱ ヨハン・ウィッドマンと \(~+,-~\) の誕生


目次
  • 1. Ⅰ 12世紀の西欧にて
  • 2. Ⅱ ヨハン・ウィッドマンと \(~+,-~\) の誕生

Ⅰ 12世紀の西欧にて

 アル・フワーリーズミー(788850)の著書が12世紀に翻訳され、「代数」という学問が西欧に伝わったとき、西欧の数学者は"plus","minus"の頭文字である"p","m"を足し算・引き算の記号として使っていました。

12世紀西欧での表記法1(英語より)

\(~5\tilde{p}3~\) (現: \(~5+3~\) )
\(~5\tilde{m}3~\) (現: \(~5-3~\) )

“plus"は「より多い」、"minus"は「より少ない」という意味です。
 
また、ラテン語である"et"("and"と同義)や"demptus"(取り除く)の最初の2文字の"de"を使って、次のようにも表していました。

12世紀西欧での表記法2(ラテン語より)

\(~5et3~\) (現: \(~5+3~\) )
\(~5de3~\) (現: \(~5-3~\) )

ちなみに、ラテン語の"aequalis"(均等の)から"ae"や"aeq"が等号として使われていたようです。


Ⅱ ヨハン・ウィッドマンと \(~+,-~\) の誕生

 ドイツの数学者ヨハン・ヴィドマン(1460頃16世紀初め)は、商業算術に関する本の中で、利益と借金を表すために \(~+,-~\) の記号を導入しました。この本が記録に残っている中で初めて \(~+,-~\) が使われたものとされています。
 
では、ヴィドマンはなぜ \(~+,-~\) を利益と借金の記号としたのでしょうか。説がそれぞれ2つずつあるので、見ていきましょう。

+誕生の説1

\(~\tilde{p}~\) が変形した。

12世紀西欧での表記法1(英語より)であったように、12世紀から加法は \(~\tilde{p}~\) が使われていました。これを走り書きしているうちに、「\(+\)」のようになってきたという説です。

+誕生の説2

\(~et~\) が変形した。

こちらは、12世紀西欧での表記法2(ラテン語より)の表記方法に由来します。同様に走り書きしているうちに、「\(+\)」のようになってきたという説です。
 
次に \(~-~\) についてです。

ー誕生の説1

\(~\tilde{m}~\) の""が変形した。

これより昔の時代、インド人は数字の上に点をうつことで、それを負の数と認識していたそうです。そのため、 \(~m~\) を省略して\( \sim \)だけでマイナスを表そうとしているうちに、現在の形になっていたということになります。

ー誕生の説2

\(~\tilde{m}~\) の"m"が変形した。

こちらは12世紀西欧での表記法1(英語より)から忠実に書体が崩れていったという説です。
 
どちらの説も12世紀の表記法から崩れていって今の \(~+,-~\) になったことは共通しています。
 
ちなみに、ヴィドマンは利益と借金を表すための記号として、 \(~+,-~\) を使いましたが、これが算術記号(たす・ひく)として使われた
のはオランダのファンデル・ホェッケの算術の本(1514年)が最初と言われています。


割と気になる数学記号の由来。個人的には \(~m~\) が \(~-~\) になっていくという説が好きです。

   
 
 


◇参考文献等
・片野善一郎(2014)『数学用語と記号ものがたり』,pp.19-20,裳華房.
・Bertrand Hauchecorne,Daniel Suratteau(2015)『世界数学者事典』,pp.33-48,熊原啓作訳,日本評論社.

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Posted by Fuku