三平方の定理の証明②(ユークリッドの証明)

 三平方の定理の証明ブームを引き起こした張本人ユークリッド。
 彼自身が考えた三平方の定理の証明について解説します。

この記事を読んでわかること
  • なぜ三平方の定理の証明がたくさん生まれるようになったのか
  • ユークリッドが考えた、三平方の定理の証明方法
目次

Ⅰ 歴史

 今から3000年以上前からバビロニアで知られていた三平方の定理。

 証明自体は ピタゴラスPythagoras , B.C.569頃-B.C.500頃) が最初でした。

 2番目に古い証明は、ユークリッドEuclid , B.C.330頃-B.C.275頃)まで時代が進みます。

ユークリッド
<図1> ユークリッド

 彼が紀元前300年頃に書いた『原論』は、当時の初等数学全体を体系的に網羅していて、その後の時代にも大きな影響を与えた名著です。

 ユークリッドはこの本の中で、ピタゴラスの証明方法とは異なる、オリジナルの証明方法を載せています。

 『原論』が生み出されて以来、多くの人が三平方の定理について知るようになり、ピタゴラスやユークリッドとは異なる証明方法が次々に誕生しました。

 ユークリッドはそういった意味で、三平方の定理の証明ブームの火付け役とも言えるでしょう。

Ⅱ ユークリッドの証明

 では、ユークリッドが考えた方法で証明していきます。

証明

 $~\angle A=90^\circ~$である直角三角形$~ABC~$で、$~AB=a~,~AC=b~,~BC=c~$とする。
 $~AB,AC,BC~$それぞれを1辺とした正方形$~ADEB~,~AFGC~,~BHIC~$を直角三角形$~ABC~$の外側に作る。

<図2> 直角三角形$~ABC~$と3つの正方形

 まず、$~\triangle DEB~$について考える。

<図3>  $~\triangle DEB~$

 $~BE//CD~$から等積変形を考えると、図4のように$~\triangle DEB~$と$~\triangle CEB~$の面積が等しいことがわかる。

\triangle DEB=\triangle CEB~~~~\cdots①
<図4>  $~\triangle CEB~$

 次に、$~\triangle CEB~$と$~\triangle HAB~$について考える。

<図5>  $~\triangle HAB~$


 仮定より、四角形$~ADEB~,~BHIC~$は正方形なので、

\begin{align*}
EB&=AB~~~\cdots② \\
CB&=HB~~~\cdots③ \\
\end{align*}

であり、さらに

\begin{align*}
\angle EBC&=\angle EBA+\angle ABC  \\
&=90^{\circ}+\angle ABC \\
&=\angle HBC+\angle ABC  \\
&=\angle ABH~~~\cdots④
\end{align*}

となるので、$③$~$⑤$より、

\triangle CEB \equiv \triangle HAB

であるため、

\triangle CEB=\triangle HAB~~~~\cdots⑤

が言える。

 次に、$~BH~$と平行な線分$~AK~$を引き、$~BC~$との交点を$~J~$とする。
 $~BH//AK~$から等積変形を行うと、図6のように、

\triangle HAB=\triangle HJB~~~\cdots⑥

がわかる。

<図6> $~\triangle HJB~$

 $①~,~⑤~,~⑥~$より、

\triangle DEB=\triangle CEB=\triangle HAB=\triangle HJB  ~~~\cdots ⑦

となる。

 $~\triangle FGC~$についても同様に考えることで、

\frac{a^2}{2}=\triangle FGC=\triangle BGC=\triangle IAC=\triangle IJC~~~\cdots⑧

である。

<図7> 証明完成

$⑦~,~⑧~$より、

\begin{align*}
\triangle DEB+\triangle FGC&=\triangle HJB+\triangle IJC  \\
\\
\frac{a^2}{2}+\frac{b^2}{2}&=\frac{1}{2}\times(正方形BHIC)  \\
\\
\frac{a^2}{2}+\frac{b^2}{2}&=\frac{1}{2}c^2  \\
\\
a^2+b^2&=c^2
\end{align*}

が示された。■

 等積変形→合同→等積変形という幾何的な要素のみを使い、複雑な式変形が出てこないのが特徴の証明方法でした。

 ちなみにですが、この証明の出発地点である図2は「「花嫁の椅子」、「風車」、「孔雀のしっぽ」などと呼ばれています。


ユークリッドが『原論』の中に三平方の証明を載せなかったら、三平方の定理はここまで有名にならなかったのかもしれないね。

 『原論』では、この証明の後に三平方の定理の逆にまで触れているんだ。
 まさに体系的。

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コメント

コメント一覧 (8件)

  • 先日は対応していただきありがとうございました。
    今回は作成していただいた平成27年度私学適性の解答について質問がありましたので、連絡いたしました。
    大問1の(14)、和から一般項を求める問題です。答えは
    ・n=1のとき
    ・n≧2のとき
    で一般項が分かれると思ったのですがいかがでしょうか。
    適性検査の模範解答を作っている方が少ないのでいつも参考にしています。このユークリッドの記事にこのようなコメントをして申し訳ないです。今後ともよろしくお願いいたします。

    •  ご指摘ありがとうございます。
      ご指摘通り、数列における大事な確認を忘れていました。

      正しくは、
      \( ~a_{1}=0~\)
      \(~a_{n}=3n^2-3n+1~~~(nは2以上の整数)\)
      となります。

      現在、サイトのデザインを一新しようとしていて、その中で
      私学適性の解答を載せているページにもコメント欄を作りましたので、
      今後はそちらもご活用ください。

      今後ともよろしくお願いします。
      また、私学適性の勉強も頑張ってください!(^^)

  • 重ね重ねの質問申し訳ありません。
    同じく私学適性平成28年度の解答について、空間ベクトルである大問5の(4)の単位ベクトルの問題ですが、解答の成分の分母は根号がつくのではないでしょうか。
    確認お願い致します。

    • コメントありがとうございます。

      解答を打ち込むときに、根号を忘れてしまいました。
      先ほどのと合わせて訂正いたします。

      問題によっては、1人で解答を作っているので、他にも訂正箇所があると思います。
      また何かありましたらご連絡いただけると嬉しいです。

      しなさん、ありがとうございました。

  •  面白い数学の数々の記事、また私学適性検査の解答も作成されており、参考にさせていただいています。その私学適性検査の解答について質問がありましたので、コメントをさせていただきました。ここにコメントを残して申し訳ありません。
     私学適性平成28年度解答の、確率である大問3の(3)の答えが違うように思いました。自分の間違いの可能性もありますが、確認していただければと思います。よろしくお願い致します。


    •  ご質問ありがとうございます。閲覧してくださっている方がいて、本当にうれしいです。
      さて、質問の内容ですが自分(達)は以下のように考えました。

      問題 サイコロ1回投げて1が出たらS、2か3が出たらM、4~6が出たらLという試行を10回繰り返したとき、8回以上連続してLのカードが得られる確率を求めよ。

      (1)10回連続してLが出る確率
      \(~\displaystyle \left( \frac{1}{2} \right)^{10}~\)
      (2)9回連続してLが出る確率
       ・最初にSかM、2回目~10回目がL
      \(~\displaystyle \frac{1}{2} \times \left( \frac{1}{2} \right)^9=\left( \frac{1}{2} \right)^{10}~\)

       ・1回目~9回目がLで、10回目がSかM
      \(~\displaystyle \left( \frac{1}{2} \right)^9 \times \frac{1}{2}=\left( \frac{1}{2} \right)^{10}~\)

      (3)8回連続してLが出る確率
       ・1、2回目がSかM、3~10回目がL
      \(~\displaystyle \frac{1}{2} \times \frac{1}{2} \times  \left( \frac{1}{2} \right)^8=\left( \frac{1}{2} \right)^{10}~\)

       ・1回目がSかM、2~9回目がL、10回目がSかM
      \(~\displaystyle \frac{1}{2} \times  \left( \frac{1}{2} \right)^8 \times \frac{1}{2} =\left( \frac{1}{2} \right)^{10}~\)

       ・1~8回目がL、9、10回目がSかM
      \(~\displaystyle  \left( \frac{1}{2} \right)^8 \times \frac{1}{2} \times \frac{1}{2} =\left( \frac{1}{2} \right)^{10}~\)

      以上より、\(~\displaystyle \left( \frac{1}{2} \right)^{10} \times 6 =\frac{3}{512}~\)と求めたのですが、いかがでしょうか。

      確率、あまり得意ではないため疑いの目で見ていただき、間違いがありましたら教えていただけると嬉しいです。
      また、急ぎでtexを打ったため、見づらい数式で申し訳ありません。

    • お返事ありがとうございます。
      私は、Fukuさん(と他の方々)の考え方の(3)、「8回連続してLが出る場合」において、
      ・1回目がL、2回目がSかM、3~10回目がL
      ・1~8回目がL、9回目がSかM、10回目がL
      の2通りも含まれるのではないかと考えました。
      (つまり、8回連続してLが出るが、Lは9回出る)
      よって、
       (1/2)^10 × 8 = 1/128
      と求めました。
      とても見づらく申し訳ありません。私の求め方について吟味していただければと思います。
      よろしくお願い致します。

    • http://cdn.mathjax.org/mathjax/latest/MathJax.js?config=TeX-AMS-MML_HTMLorMML

      ご指摘ありがとうございます。

      うっかりしていました。助かります。(3)を訂正させていただくと、
      (3)8回連続してLが出る確率
       ・1回目が何でもアリ、2回目がSかM、3~10回目がL
      \(~\displaystyle 1 \times \frac{1}{2} \times  \left( \frac{1}{2} \right)^8=2 \cdot \left( \frac{1}{2} \right)^{10}~\)

       ・1回目がSかM、2~9回目がL、10回目がSかM
      \(~\displaystyle \frac{1}{2} \times  \left( \frac{1}{2} \right)^8 \times \frac{1}{2} =\left( \frac{1}{2} \right)^{10}~\)

       ・1~8回目がL、9回目がSかM、10回目が何でもアリ
      \(~\displaystyle \left( \frac{1}{2} \right)^8  \times \frac{1}{2} \times 1  =2 \cdot \left( \frac{1}{2} \right)^{10}~\)

      以上より、(1)(2)と合わせて
      \(~\displaystyle \left( \frac{1}{2} \right)^{10} \times 8 =\frac{1}{128}~\)
      となりますね。

      しなさん、どうもありがとうございます。訂正します!

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