三平方の定理の証明④(方べきの定理の利用1)
三平方の定理には数百もの証明方法があります。方べきの定理を利用した証明を紹介します。
Ⅰ 三平方の定理とは
Ⅱ 方べきの定理を利用した証明
Ⅲ その他の証明方法
Ⅰ 三平方の定理とは
三平方の定理とは、次のような定理です。
上のような直角三角形で、次の等式が成り立つ。
\begin{equation}
a^2+b^2=c^2
\end{equation}
直角三角形の2辺がわかれば、残りの1辺も求まるというもので、紀元前から測量等でも使われてきました。日本では中学3年生(義務教育!)で習います。長い歴史の中で、様々な人により、様々な証明が生み出されてきましたが、今回と次回は方べきの定理を利用した証明で示します。
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Ⅱ 方べきの定理を利用した証明
まずは方べきの定理を確認しておきます。
円の内部の点 \(~P~\) を通る2本の弦 \(~AB~\) と弦 \(~CD~\) に関して、次の等式が成り立つ。
\begin{equation}
PA \cdot PB= PC \cdot PD
\end{equation}
方べきの定理は3種類あるのですが、今回の証明で使うのは上記の型です。円の内部であれば、どこで交差していても良いため、使う場面が多い定理となっています。
では、三平方の定理の証明に入りましょう。
半径 \(~c~\) の円 \(~O~\) で、直径を \(~AB~\) とする。 \(~AB~\) 上で中心から \(~a~\) 離れている点を \(~P~\) とし、 \(~P~\) を通り \(~AB~\) と垂直な弦 \(~CD~\) を作る。 \(~PC~\) の長さを \(~b~\) とする。
\(~PC=PD~\) より、 \(~PD=b~\) 。 \(~OB~\) は半径なので、 \(~PB=c-a~\) とわかる。
ここで、「方べきの定理1」を使うと、
\begin{align}
PA \cdot PB&= PC \cdot PD \\
(c+a)\cdot (c-a)&=b \cdot b \\
c^2-a^2&=b^2 \\
c^2&=a^2+b^2 \cdots (*)
\end{align}
が求まる。 \(~c~\) は半径だったので、 \(~OC=c~\) 。
直角三角形 \(~OPC~\) に注目すれば、 \(~(*)~\) より三平方の定理が証明されたことが言える。 \(~\blacksquare\)
円の中の等しい辺の長さをうまく利用しながら、方べきの定理を用いた証明でした。
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Ⅲ その他の証明方法
数百ある証明の中から有名な証明方法をいくつか紹介します。是非いろいろな証明を見て、お気に入りの証明方法を見つけてください。
~順次作成中~
①ピタゴラスの証明 | 正方形を4つの図形にうまく分割し、回転させることにより、その面積関係から三平方の定理を導いています。 |
②ユークリッドの証明 | 等積変形や合同を使って、複雑な計算をせずに証明をします。 |
③内接円を利用した証明 | 内接円を使って、面積を2通りの方法で表して証明をします。 |
④方べきの定理を利用した証明1 | 内部で交わるタイプの方べきの定理を使って証明します。 |
⑤方べきの定理を利用した証明2 | 接線タイプの方べきの定理を使って証明します。 |
⑥レオナルド・ダ・ヴィンチの証明 | 合同な図形をうまく使った証明方法です。 |
⑦トレミーの定理による証明 | 円に内接する長方形に、トレミーの定理を適用します。 |
⑧ジェームズ・A・ガーフィールドの証明 | アメリカの大統領が考えた、台形を使った証明方法です。 |
⑨アン・コンディットの証明 | 16歳の少女が考えた、補助線を多用する証明方法です。 |
⑩無限等比級数を利用した証明 | 垂線によって直角三角形を細かくしていき、最終的には無限等比級数を利用する証明方法です。 |
⑪相似を利用した証明1 | 相似を使った最もシンプルな証明方法です。 |
⑫相似を利用した証明2 | 合同な直角三角形を重ね、相似な三角形を利用しながら、ある三角形の面積を2通りの方法で表します。 |
⑬外接円と直角二等辺三角形を利用した証明 | 外接円に4つの直角二等辺三角形を混ぜた図形から、証明を行います。 |
⑭相似を利用した証明3 | 中学3年生レベルの円、相似の知識を使って三平方の定理を導いています。 |
⑮教科書の証明 | 中学3年生の教科書によく載っている2つの証明方法と、それらを合わせたバースカラ(インドの数学者)の証明を解説しました。 |
他にもいろいろあるので、調べてみてください。
半径をうまく利用した証明でしたね。次回も方べきの定理を利用します。
◇参考文献等
・E・マオール(2008)『ピタゴラスの定理-4000年の歴史』,pp.151-153,伊理由美訳,岩波書店.
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