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三平方の定理の証明④⑤~方べきの定理を利用した2種類の証明をわかりやすく解説!~

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三平方の定理の証明④⑤ アイキャッチ

 三平方の定理の証明は、紀元前からあらゆる人があらゆる方法で考え出してきました。

 この記事では、その中でも数学Aで登場する方べきの定理を利用する証明方法について、現役数学教員がわかりやすく解説します。

 方べきの定理は3種類ありますが、そのうちの2種類を三平方の定理の証明に利用することができます。
 特定の図で、方べきの定理を適用するだけの方法なので、図の作り方をこの記事で覚えましょう。

この記事を読んでわかること
  • 方べきの定理の概要とその歴史
  • 方べきの定理を利用した三平方の定理の証明方法2種

 三平方の定理の内容や、三平方の定理の別証についてはこちらから↓↓

この記事を読んでわかること

方べきの定理とその歴史

方べきの定理3パターン

 方べきの定理は、円と2本の直線に関する定理で、3パターン存在します。
 まずは、その3パターンの内容について、復習しておきましょう。

方べきの定理1

 円の内部の点$~P~$を通る2本の弦$~AB~$と弦$~CD~$に関して、次の等式が成り立つ。

PA \cdot PB= PC \cdot PD
<図1> 方べきの定理1
<図1> 方べきの定理1

 1パターン目は、2直線が円の内部で交わるタイプ。
 証明は、円周角の定理から導かれる$~\triangle PAC$∽$\triangle PDB~$を使います。

方べきの定理2

 円の内部の点$~P~$を通る2本の弦$~AB~$と弦$~CD~$に関して、次の等式が成り立つ。

PA \cdot PB= PC \cdot PD
<図2> 方べきの定理2
<図2> 方べきの定理2

 2パターン目は、2直線が円の外部で交わるタイプ。
 証明は、内接四角形の性質から導かれる$~\triangle PAC$∽$\triangle PDB~$を使います。

方べきの定理3

 円の外部の点$~P~$から円に引いた接線の交点を$~T~$とする。
 $~P~$を通り、この円と2点$~A~,~B~$で交わる直線を引くと、次の等式が成り立つ。

PT^2= PA \cdot PB
<図3> 方べきの定理3
<図3> 方べきの定理3

 3パターン目は、2直線が円の外部で交わり、そのうちの1直線が接線のタイプ。
 証明は、接弦定理から導かれる$~\triangle PAT$∽$\triangle PTB~$を使います。 

 以上の3パターンのうち、三平方の定理の証明に使えるのは方べきの定理1方べきの定理3の2パターン。
 証明に入る前に、方べきの定理がいつから存在していたのかを見てみましょう。

方べきの定理の歴史

 方べきの定理は紀元前から存在していました
 その理由は、ユークリッドの『原論』の第3巻の命題35、36に方べきの定理の主張があるからです。

『原論』第3巻命題35

 円の内部の点$~P~$を通る弦がその円と交わる点を$~A~$と$~B~$とするとき、積$~PA\times PB~$は一定である——$~P~$を通るあらゆる弦に対して同じ値をとる。

『原論』第3巻命題36

 円の外部の点$~P~$を通る弦がその円と交わる点を$~A~$と$~B~$とするとき、積$~PA\times PB~$は$~PT^2~$に等しい。ここで$~PT~$は$~P~$から円への接線の長さである。

 多少表現は違いますが、命題35方べきの定理1命題36方べきの定理2の内容となっています。

 『原論』は、 当時の初等数学全体を体系的に網羅していて、その後の時代にも大きな影響を与えた名著です。
 ユークリッドEuclid , B.C.330頃-B.C.275頃) が紀元前300年頃に書いたものになります。

<図4> ユークリッド
<図4> ユークリッド
(出典:Photograph taken by Mark A. Wilson (Wilson44691, Department of Geology, The College of Wooster).[1], Public domain, via Wikimedia Commons)

 これから解説する三平方の定理の証明方法は、誰がいつ発見したかは定かではありません
 しかし、特定の図を作って方べきの定理を適用してあげるだけなので、早ければ『原論』が出版された紀元前300年頃から存在していたものかもしれません。

方べきの定理を利用した証明1

 では、本題である三平方の定理の証明に入りましょう。

三平方の定理の証明④

 半径$~c~$の円$~O~$で、直径を$~AB~$とする。
 $~AB~$上で中心から$~a~$離れている点を$~P~$とし、$~P~$を通り$~AB~$と垂直な弦$~CD~$を作り、$~CP~$の長さを$~c~$とする。

<図5>  円と内部の2直線 1
<図5>  円と内部の2直線 1

 $~PC=PD~$より、$~PD=b~$。
 $~OB~$は半径なので、$~PB=c-a~$とわかる。

<図6> 円と内部の2直線2
<図6> 円と内部の2直線2

 ここで、「方べきの定理1」を使うと、

\begin{align*}
PA \cdot PB&= PC \cdot PD \\
(c+a)\cdot (c-a)&=b \cdot b \\
c^2-a^2&=b^2 \\
c^2&=a^2+b^2 ~~~~\cdots ①
\end{align*}

が求まる。

 $~c~$は半径だったので、$~OC=c~$。

<図7>  円と内部の2直線3
<図7>  円と内部の2直線3

 直角三角形$~OPC~$に注目すれば、$①$より三平方の定理が証明されたことが言える。■

 円の中の等しい辺の長さをうまく利用しながら、方べきの定理1を用いた証明でした。
 図5を覚えておくことで、自力でもこの証明方法を再現できるでしょう。

方べきの定理を利用した証明2

 今度は接線型の方べきの定理3を利用した証明方法です。

三平方の定理の証明⑤

 半径$~a~$の円$~O~$で、円周上の点$~T~$における長さ$~b~$の接線$~AT~$を引く。
 直線$~PO~$と円$~O~$の2つの交点をそれぞれ$~A~$と$~B~$とする。

<図8> 円と接線1
<図8> 円と接線1

 $~PO=c~$とすると、各辺の長さは図3のようになる。

<図9> 円と接線2
<図9> 円と接線2

 ここで、「方べきの定理3」を使うと、

\begin{align*}
PA^2 &= PB \cdot PC \\
b^2&=(c-a) \cdot (c+a) \\
b^2&=c^2-a^2 \\
a^2+b^2&=c^2  ~~~~\cdots ②
\end{align*}

が求まる。

 したがって、直角三角形$~PTO~$に注目すれば、$②$より三平方の定理が証明されたことが言える。■

 こちらも図9を覚えておくことで、この証明を再現できます。
 方べきの定理自体の証明方法の理解も忘れずに


もしかしたらユークリッドが思いついた証明方法だったかもしれないね。

 確かに。
 ユークリッドは「花嫁の椅子」を使って、三平方の定理を証明しているから、思いついていたとしてもわざわざ載せたりしなさそう・・・。

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