三平方の定理の証明⑤(方べきの定理の利用2)
三平方の定理には数百もの証明方法があります。接線型の方べきの定理を利用した証明を本記事では紹介します。
Ⅰ 三平方の定理とは
Ⅱ 方べきの定理2を利用した証明
Ⅲ その他の証明方法
Ⅰ 三平方の定理とは
三平方の定理とは、次のような定理です。
上のような直角三角形で、次の等式が成り立つ。
\begin{equation}
a^2+b^2=c^2
\end{equation}
直角三角形の2辺がわかれば、残りの1辺も求まるというもので、紀元前から測量等でも使われてきました。日本では中学3年生(義務教育!)で習います。長い歴史の中で、様々な人により、様々な証明が生み出されてきましたが、前記事同様、方べきの定理を利用した証明をしていきます。
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Ⅱ 方べきの定理2を利用した証明
「三平方の定理の証明④(方べきの定理の利用1)」は円の内部で交わるタイプの方べきの定理を使いました。今回は接線型の方べきの定理を使います。
上の図において、 \(~A~\) は接点である。このとき、次の等式が成り立つ。
\begin{equation}
PA^2 = PB \cdot PC
\end{equation}
方べきの定理は3種類あるのですが、今回の証明で使うのは上記の型です。
では、三平方の定理の証明に入りましょう。
半径 \(~a~\) の円 \(~O~\) で、円周上の点 \(~A~\) における長さ \(~b~\) の接線 \(~AP~\) を引く。直線 \(~PO~\) と円 \(~O~\) の2つの交点をそれぞれ \(~B~\) と \(~C~\) とする。このとき、次のような図になる。
また、 \(~PO=c~\) とすると、各辺の長さは次のようになる。
ここで、「方べきの定理2」を使うと、
\begin{align}
PA^2 &= PB \cdot PC \\
b^2&=(c-a) \cdot (c+a) \\
b^2&=c^2-a^2 \\
a^2+b^2&=c^2 \cdots (*)
\end{align}
が求まる。
したがって、直角三角形 \(~PAO~\) に注目すれば、 \(~(*)~\) より三平方の定理が証明されたことが言える。 \(~\blacksquare\)
接線と半径が直交する性質を使った証明でした。
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Ⅲ その他の証明方法
数百ある証明の中から有名な証明方法をいくつか紹介します。是非いろいろな証明を見て、お気に入りの証明方法を見つけてください。
~順次作成中~
①ピタゴラスの証明 | 正方形を4つの図形にうまく分割し、回転させることにより、その面積関係から三平方の定理を導いています。 |
②ユークリッドの証明 | 等積変形や合同を使って、複雑な計算をせずに証明をします。 |
③内接円を利用した証明 | 内接円を使って、面積を2通りの方法で表して証明をします。 |
④方べきの定理を利用した証明1 | 内部で交わるタイプの方べきの定理を使って証明します。 |
⑤方べきの定理を利用した証明2 | 接線タイプの方べきの定理を使って証明します。 |
⑥レオナルド・ダ・ヴィンチの証明 | 合同な図形をうまく使った証明方法です。 |
⑦トレミーの定理による証明 | 円に内接する長方形に、トレミーの定理を適用します。 |
⑧ジェームズ・A・ガーフィールドの証明 | アメリカの大統領が考えた、台形を使った証明方法です。 |
⑨アン・コンディットの証明 | 16歳の少女が考えた、補助線を多用する証明方法です。 |
⑩無限等比級数を利用した証明 | 垂線によって直角三角形を細かくしていき、最終的には無限等比級数を利用する証明方法です。 |
⑪相似を利用した証明1 | 相似を使った最もシンプルな証明方法です。 |
⑫相似を利用した証明2 | 合同な直角三角形を重ね、相似な三角形を利用しながら、ある三角形の面積を2通りの方法で表します。 |
⑬外接円と直角二等辺三角形を利用した証明 | 外接円に4つの直角二等辺三角形を混ぜた図形から、証明を行います。 |
⑭相似を利用した証明3 | 中学3年生レベルの円、相似の知識を使って三平方の定理を導いています。 |
⑮教科書の証明 | 中学3年生の教科書によく載っている2つの証明方法と、それらを合わせたバースカラ(インドの数学者)の証明を解説しました。 |
他にもいろいろあるので、調べてみてください。
もう1パターンの方べきの定理を使った証明もできるかなと思って、いろいろと考えてみたものの難しかったです(><)
◇参考文献等
・E・マオール(2008)『ピタゴラスの定理-4000年の歴史』,pp.152-153,伊理由美訳,岩波書店.
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