地球にロープをまきつける
数学雑学空間図形数学雑学
直感と計算結果が噛み合わないお話。実際に地球にロープを巻き付けることはできませんが、起こり得る驚くべき結果を数式から導いてみましょう。
Ⅰ 問題
まずは直感で答えてみてください。
問題
地球上に北極と南極を通るよう、ロープをピンと張った状態を考える。そのロープを \(~1m~\) だけ伸ばして、地面との距離が等しくなるようピンと張りなおした時、地面とロープの間の距離はどのくらいになるだろうか? ただし、地球は完全な球形であるとし、地面の凹凸は考えないものとする。
ア: \(~0.0015m(1.5mm)~\)
イ: \(~0.015m(15mm)~\)
ウ: \(~0.15m(15cm)~\)
エ: \(~1.5m~\)

さて、ア~エの中から答えは選べましたか? ってか、アよりも小さそうですよね・・・。
実際に地球にロープを巻き付けることはできないので、数式で答え合わせをしてみましょう。
解答はこちら
驚きですよね・・・。地球1周約 \(~40000km~\) もあるのに、ロープを \(~40000km+1m~\) しただけで隙間が \(~15cm~\) も生まれるなんて・・・。
数式で確かめてみましょう。
解説
地球の半径を \(~r(m)~\) とする。

このとき、青いロープの長さは半径 \(~r~\) の円の周なので、
\begin{equation}
2\pi r
\end{equation}
と表せる。
次に、 \(~1m~\) 伸ばした赤いロープの長さは
\begin{equation}
2\pi r+1
\end{equation}
となる。

赤いロープの円の半径 \(~R~\) を求めると、
\begin{align}
2\pi R&=2\pi r+1 \\
\\
&=\displaystyle \frac{2\pi r+1}{2\pi} \\
\\
&=r+\frac{1}{2\pi}
\end{align}
となる。
よって、赤いロープの半径と青いロープの半径の差は、
\begin{align}
R-r&=\displaystyle \left( r+\frac{1}{2\pi} \right) -r \\
\\
&=\frac{1}{2\pi}(m)
\end{align}
と求まる。
よって、地面とロープの幅は
\begin{equation}
\displaystyle \frac{100}{2\pi}(cm)\fallingdotseq 15.9(cm)
\end{equation}と求まった。
この式からわかることは、
巻き付ける物体の半径は関係ない!!
ということです。
計算結果に \(~r~\) を含んでいないことから、巻き付ける物体の半径 \(~r~\) に関係なく、ロープを \(~1m~\) 伸ばした時の幅は \(~\displaystyle \frac{1}{2\pi}~\) になります。

◇参考文献等
・アルフレッド・S・ポザマンティエ/イングマール・レーマン(2015)『数学まちがい大全集』,pp.213-216,堀江太郎訳,化学同人.
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