算額タイムトンネル
向井湘吾さんの『算額タイムトンネル』1巻の読了記録です。
話の中に出てきた数学的話題についても順次紹介していきます。
Ⅰ 本のデータ
Ⅱ あらすじ
Ⅲ 感想
Ⅳ 登場する数学的な話題
Ⅰ 本のデータ
タイトル | 算額タイムトンネル |
著者 | 向井 湘吾 |
出版社 | 講談社タイガ |
発売日 | 2017年12月20日 |
価格(税抜) | 750円 |
ISBNコード | 9784062941006 |
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Ⅱ あらすじ
女子高生の真鍋波瑠は、友達の橋戸千明が巫女バイトをしている神社の宝物殿で、算額を見つける。その算額には江戸時代の文字で、 \(~n=5~\) の場合のフェルマーの最終定理について書かれていた。しかしその1ヶ月後、鍵のかかった宝物殿の中にあるはずの算額に、別の数式が書かれていた。
江戸時代の和算家である橘実信は、とある神社の算額に数式の落書きをした。しかし、その後落書きが消され、その数式の間違いを指摘する見たこともない洋学の数式に変わっていた。
平成の天才数学少女と江戸時代屈指の和算家。算額を通した数学の問題のやり取りをしていくうちに、お互いは算額が両者の時代を繋ぐタイムトンネルだと気づき始め・・・。
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Ⅲ 感想
渚ちゃんは中学生でしたが、真鍋波瑠さんは高校生。しかも、数学オリンピックに出場するほどの才女です。こういう生徒に数学の授業をするとしたら、自分の数学への自信を失うんだろうなぁ。・・・そんなことはさておき。
まず、話の設定が奇抜ですよね。江戸時代の和算家たちが神社に奉納した算額を通して、現代と江戸時代を繋ぐという、この物語の基盤。
ページをめくるたびに登場する、親しみやすい現代の数式と、漢字とカタカナで書かれた江戸時代の数式。
同じ意味を表す数式でさえ、全く異なった形で表されています。
波瑠は数学オリンピック出場を何よりも優先して生活している女子高生。算額を通して得られる難問に喜びを覚え、必死に解法を探す姿がとても魅力的です。
例えば、計算量が非常に多くなるような問題に対しても電卓7つを駆使して、恐るべきスピードで叩いて解を捻り出しています。1つの問題を諦めずに挑んでいく姿勢を、すぐにExcelやネットを使ってしまう福助は見習わなければいけませんね(汗)
橘実信は幕末の優れた和算家。新政府軍が江戸に詰め寄る中、武士ではなく和算家としての生きようと世間からの声に抗っています。
鎖国された時代のため、初めて見る欧米仕様の数式に戸惑いつつも、算額を通してそれを学ぼうとする意欲に満ち溢れています。と同時に、友達想いの面も強く、自分の生き方と葛藤する場面も見られます。
他の学問とのつながりをもたず、生活に直結しない算法に対して、実信は次の一言を述べています。
「役に立たないものにこそ、本当の価値がある」
「数学をなぜ学ぶ必要があるのか?」というよくある疑問に対して、これも1つの解であると福助は共感しました。
時代こそ隔ててはいるものの似たような部分が多い数学者2人。この2人が数学を通して繋がっていく展開に、ハラハラドキドキする作品です!!
Ⅳ 登場する数学的な話題
この本の中で登場する数学的な話題を紹介しておきます。福助が興味を持った話題については、順次別ページで書き加えていきます。
また、本によってはネタバレにつながる話題もありますので、注意してクリックしてください。
7月に2巻が出たので、読み直して感想を書きました。2回目ですが、最後の場面はハラハラドキドキ。次は2巻を読みたいと思います。
◇参考文献等
・向井湘吾(2017)『算額タイムトンネル』,講談社タイガ.
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