テイラーの定理(イメージ編)

 解析学で非常に重要なテイラー展開。その背後にあり、平均値の定理を一般化したのが「テイラーの定理」です。
 本記事では、この定理が何を意味しているのかを具体例から理解していきます。

目次

Ⅰ テイラーの定理とは?

 テイラー(Taylor)の定理(「テイラーの公式」と表されることも)とは、1715年にイギリスの数学者ブルック・テイラー(Brook Taylor)が著作『増分法』(Methodus Incrementorum)の中で、発表した公式です。*1

テイラーの定理

 ある区間において、$~f(x)~$は$~n~$階まで微分可能とする。
 その区間内の定点 $~a~$、任意の点$~x~$に対し、

\begin{align}
f(x)&=f(a)+(x-a)\frac{f'(a)}{1!}+(x-a)^2\frac{f^{\prime\prime}(a)}{2!}+\cdots \\
&~~~~~~~~~~~~~~~~~~~+(x-a)^{n-1}\frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}+(x-a)^n\frac{f^{(n)}(\xi)}{n!}
\end{align}


\begin{align}
f(x)&=f(a)+(x-a)\frac{f'(a)}{1!}+(x-a)^2\frac{f^{\prime\prime}(a)}{2!}\\
&~~~~~~~+\cdots+(x-a)^{n-1}\frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}\\
&~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~+(x-a)^n\frac{f^{(n)}(\xi)}{n!}
\end{align}

が成り立つ。ただし、$~\xi~$は$~a~$と$~x~$の間にある点である。

 $~\xi~$は「クシー」と読みます。(個人的には書くのが一番難しいギリシャ文字・・・)
 この$~\xi~$の条件に関しては、$~a \lessgtr \xi \lessgtr x~$や$~\xi=a+\theta(x-a)~~(0 < \theta < 1)~$と表されることもあります。
 
 また、右辺の最後の項だけ$~\xi~$を使っており、この最終項のことを
\begin{equation}
R_n=(x-a)^n \frac{f^{(n)}(\xi)}{n!}
\end{equation}
と表し、剰余項*2といいます。

*1 テイラーが発表したときには、剰余項については言及されていませんでした。
*2 18世紀後半、ジョゼフ・ルイ・ラグランジュがこの定理の剰余項について言及したため、$~R_n~$をラグランジュの剰余ともいいます。

 文字の多さ、式の長さにチンプンカンプン・・・。そこで、このテイラーの定理が表す意味を具体例から考えてみましょう。


Ⅱ テイラーの定理の意味

 結論から先に述べます。テイラーの定理が表しているのは、

どんな関数も、ある点の周りに限定すれば多項式で近似できる

ということです。
 
 例を挙げてみましょう。

Ⅱ-ⅰ 3次関数を1次関数で近似する

例1

$~f(x)=x^3-3x^2-6x+8~$の$~x=3~$における接線の式を求めなさい。

 「あれ? テイラー展開の話じゃなかったの??」と疑問に思われた方、騙されたと思って解いてみてください。
 

解法

 まずは微分をして、
\begin{equation}
f'(x)=3x^2-6x-6
\end{equation}
となり、$~x=3~$における$~f(x)~$の接線の傾きは
\begin{align}
f'(3)&=3\cdot 3^2-6\cdot 3-6 \\
&=27-18-6 \\
&=3
\end{align}
とわかる。
 
 また、
\begin{align}
f(3)&=3^3-3\cdot 3^2-6 \cdot 3+8 \\
&=27-27-18+8 \\
&=-10
\end{align}
より、接線の方程式は、
\begin{align}
y-f(3)&=f'(3)(x-3) \\
y&=f(3)+(x-3)f'(3) ~~~\cdots (*) \\
y&=-10+(x-3)\cdot 3 \\
y&=3x-19
\end{align}
と求まる。

ということで、グラフにするとこのような形ですね。
例のグラフ
 さて、このグラフの赤枠内を拡大してみましょう。
例のグラフ拡大版
 図からもわかる通り、接線のとらえ方を変えると、$~x=3~$付近なら、$~f(x)=x^3-3x^2-6x+8~$は$~f(x) = 3x-19~$に近似できるということです。
 
 さて、解法中の$(*)$でわざとらしく変形しましたが、この接線の方程式は、
\begin{equation}
f(x)=f(3)+(x-3)f'(3)
\end{equation}
と表せます。
 
 このことを一般化して書くと、$~x=a~$の付近なら、
\begin{equation}
f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)
\end{equation}
と近似できるということです。
 この式は、テイラー展開の2項目までを表しています。
 
 ただ、当然ながら3次関数を1次関数で近似しているので精度は悪いです。

Ⅱ-ⅱ 3次関数を2次関数で近似する

 精度を上げるために、今度は2次関数を使って近似してみましょう。
 
 1次関数では$~(x-a)~$が出てきたので、2次関数では$~(x-a)^2~$を使って考えます。
 この$~(x-a)^2~$の係数を$~k~$として式を作ると、
\begin{equation}
f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+k(x-a)^2
\end{equation}
となり、その$~k~$を求めるため、両辺を微分していくと、
\begin{align}
f'(x)&=f'(a)+2k(x-a) \\
\\
f^{\prime \prime}(x)&=2k
\end{align}
になります。
 ここに、$~x=a~$を代入し、$~k~$について解くと、
\begin{equation}
k=\frac{f^{\prime \prime}(a)}{2}
\end{equation}
になるので、
\begin{equation}
f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f^{\prime \prime}(a)}{2}(x-a)^2
\end{equation}
と2次関数での近似式が導出できました。(テイラーの定理の3項目まで)
 
 実際、先ほどの3次関数を近似してみましょう。

例2

$~f(x)=x^3-3x^2-6x+8=0~$の$~x=3~$における、2次の近似式を求めなさい。

解法

\begin{equation}
f'(x)=3x^2-6x-6
\end{equation}
より、
\begin{equation}
f^{\prime\prime}(x)=6x-6
\end{equation}
となるため、
\begin{align}
f^{\prime\prime}(3)&=6\cdot 3-6 \\
&=12 \\
\end{align}
とわかる。
 
 よって、2次の近似式は
\begin{align}
f(x)&=f(3)+f'(3)(x-3)+\frac{f^{\prime \prime}(3)}{2}(x-3)^2 \\
\\
&=-10+3(x-3)+\frac{12}{2}(x-3)^2 \\
\\
&=-10+3x-9+6(x^2-6x+9) \\
&=-10+3x-9+6x^2-36x+54 \\
&=6x^2-33x+35
\end{align}
と求まった。

例のグラフ2
例のグラフ2拡大版
 グラフからもわかるように、近似の精度が上がっています。

Ⅱ-ⅲ $~n-1~$次関数まで繰り返すと・・・

 $~f(x)~$の1次の近似式が
\begin{equation}
f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)
\end{equation}
であり、2次の近似式が
\begin{equation}
f(x)=f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f^{\prime \prime}(a)}{2}(x-a)^2
\end{equation}
となりました。
 
 この作業を繰り返していくことで、$~f(x)~$の$~x=a~$付近における$~(n-1)~$次の近似式が、

\begin{align}
f(x)&=f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f^{\prime \prime}(a)}{2}(x-a)^2+\frac{f^{\prime \prime \prime}(a)}{3!}(x-a)^3 \\
&~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~+\cdots+\frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}(x-a)^{n-1}
\end{align}


\begin{align}
f(x)&=f(a)+f'(a)(x-a)+\frac{f^{\prime \prime}(a)}{2}(x-a)^2 \\
&~~~~~~~~~~~~~~~+\frac{f^{\prime \prime \prime}(a)}{3!}(x-a)^3+\cdots \\
&~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~+\frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}(x-a)^{n-1}
\end{align}

と求まります。だいぶテイラーの定理に近づいてきました。
 
 ただ、当然ですが$~x=a~$そのものなら近似式と元の式の値が一致するものの、$~a~$付近なので多少の誤差が出ます。

 その誤差こそが、剰余項$~\displaystyle R_n=\frac{f^{(n)}(\xi)}{n!}(x-a)^n~$なのです!

Ⅱ-ⅳ 剰余項を求めてみる

 先ほどの3次関数についての誤差を調べてみましょう。

例3

$~f(x)=x^3-3x^2-6x+8~$とその1次近似式$~y=3x-19~$の、$~x=4~$における誤差を求めなさい。

 $~x=3~$における近似式なので、$~x=3~$付近の数である$~x=4~$を具体例に考えます。

計算

元の式は、
\begin{align}
f(4)&=4^3-3\cdot 4^2-6\cdot 4+8 \\
&=64-48-24+8 \\
&=0
\end{align}
であり、1次の近似式は、
\begin{align}
y&=3\cdot 4-19 \\
&=-7
\end{align}
であるため、誤差は$~7~$である。

1次近似式の誤差
 ここから、1次の近似式の剰余項の$~\xi~$の値を求めてみると、
\begin{align}
\frac{f^{\prime\prime}(\xi)}{2!}(4-3)^2&=7 \\
f^{\prime\prime}(\xi)&=14 \\
6\xi-6&=14 \\
6\xi&=20 \\
\xi&=\frac{10}{3}
\end{align}
とわかり、確かに$~a=3 < \xi < 4=x~$となっていますね。
 
 以上で、テイラーの定理の式の意味がわかりました。
 
 ただ、$~(n-1)~$次関数で近似したときの誤差がなぜ$~\displaystyle R_n=\frac{f^{(n)}(\xi)}{n!}(x-a)^n~$で表されるのかは解決していません。
 
 次の記事「テイラーの定理(証明編)」では、その問題について解決します。


 $~\xi~$は文字入力では「\xi」と打ちます。手書きのほうが大変です・・・。


 
 


◇参考文献等
・高木貞治(2010)『定本 解析概論』,pp.66-67,岩波書店.
・入江昭仁・垣田高夫・杉山昌平・宮寺功(2006)『応用解析の基礎1 微分積分(上)』,pp.75-77,内田老鶴圃.
・Bertrand Hauchecorne , Daniel Suratteau(2015)『世界数学者事典』,pp298-299,熊原啓作訳,日本評論社.

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コメント

コメント一覧 (3件)

  • ご返信ありがとうございます。

    訂正ありがとうございま。

    これからも執筆活動を頑張ってください!

  • このページのおかげでテイラーの定理についてより理解が深まりました。ありがとうございます!
    そして、僭越ながら、説明に誤りがあったのでコメントさせていただきます。私の勘違いであれば申し訳ございません。

    Section Ⅱ-ⅳ(剰余項を求める)において、「2次の近似式についても同様に、誤差から剰余項のξの値を求めることができます。」と説明されているのですが、実際には f”'(ξ) = 6 となりξの値は具体的に求まりません。つまり、この2次近似式において、誤差はxと a の値によってのみ決定されることがわかると思います。

    改めて、私の勘違いであれば申し訳ございません。

    •  数学太郎さん、嬉しいコメントありがとうございます。

       ご指摘通り、説明に誤りがありました。申し訳ございません。
       確かに\(~f”'(\xi)=~6~\)(定数)になるため、\(~\xi~\)の値は求まりませんね。
       訂正させていただきました。

       コメントいただき、助かりました。
       今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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