タレスの定理

古代ギリシャの数学者タレスの名を冠する定理は5つあります。
 タレスの功績にも触れながら、それぞれの定理について解説していきます。

目次

Ⅰ 最も有名なタレスの定理

 古代ギリシャの数学者タレスThales, B.C.625頃-B.C.547頃)は、ピラミッドの高さの測量や日食の予言でよく知られ、数学において初めて”証明”をした人物です。

タレス
Thales
出典:Unidentified engraver, Public domain, via Wikimedia Commons

 
 そんな彼の名がついた最も有名な定理は、中学3年生で習う円周角に関する性質となっています。

タレスの定理

 半円に内接する三角形は直角三角形である。
タレスの定理

 解釈の仕方によっては、

  • 半円に内接する角は直角である。
  • \(~\triangle ABC~\)の3つの頂点\(~A~,~B~,~C~\)が円周上の異なる点にあり、辺\(~AC~\)が直径となるとき、\(~\angle ABC=90^{\circ}~\)である。

などとも表現されます。
 
 この定理は、タレスがバビロニアに旅行した際に知り、自身の出身地であるミレトスに帰ってきた後に証明を行いました。
 
 どのような方法で証明したかはわかっていませんが、この発見は1頭の牡牛を神に捧げるほどタレスを狂喜させました。
 
 この定理の一般的な証明を下に示します。

証明

 タレスの定理証明1
 上の図において、円\(~O~\)の半径より、
\begin{equation}
OA=OB=OC
\end{equation}
なので、\(~\triangle OAB~,~\triangle OCB~\)は二等辺三角形となる。
 二等辺三角形の底角は等しいので、
\begin{align}
\angle OAB &=\angle OBA=x \\
\angle OCB &=\angle OBC=y \\
\end{align}
とおける。
タレスの定理証明2
 このとき、\(~\triangle ABC~\)の内角の和より、
\begin{align}
x+x+y+y&=180^{\circ} \\
2x+2y&=180^{\circ} \\
x+y&=90^{\circ}
\end{align}
 したがって、\(~\angle ABC=x+y=90^{\circ}~\)が示された。\(~~\blacksquare~\)

 証明の途中で、二等辺三角形の底角が等しいことや、三角形の内角の和が\(~180^{\circ}~\)であることを使っていますが、これら性質についてもタレスが証明したという言い伝えがあるため、上記の方法で示したのではないかと思います。
 
 また、この定理はユークリッド(Euclid, B.C.330頃-B.C.275頃)の主著『原論』にも採用されました。

ユークリッド
ユークリッド
出典:Photograph taken by Mark A. Wilson (Wilson44691, Department of Geology, The College of Wooster).[1], Public domain, via Wikimedia Commons

Ⅱ その他のタレスの定理

 「タレスの定理」と聞くと、多くはⅠ章の「半円に内接する三角形は直角三角形である」を指します。
 しかし、タレスが証明した定理は他にもあり、その中でも次の4つも含めて「タレスの定理」と呼ぶことがあります。

タレスの定理2

 円の直径は円を二等分する。
タレスの定理2

 ↑証明となると、難しそうです。

タレスの定理3

 二等辺三角形の底角は等しい。
タレスの定理3

 ↑タレスの定理1で使った定理です。証明は簡単。

タレスの定理4

 2本の直線が交われた、対頂角は等しい。
タレスの定理4

 ↑こちらも証明は簡単。

タレスの定理5

 2つの三角形の2つの角と1つの辺とがそれぞれ等しければ、それらの三角形は合同である。
タレスの定理5

 ↑合同条件「一辺とその両端の角がそれぞれ等しい」のこと。証明となると・・・。
 
 この4つの定理についてもタレス自身の証明は残っていません。
 
 しかし、円の二等分や合同条件等の当たり前のように思えることですらも、タレスは「なぜ?」という視点で捉え、数学の定理は証明をしたうえで使うという風潮の発起人となりました。


Ⅲ その他のタレスの発見

 タレスは5つの定理の他にも、以下のような三角形の性質を発見しています。

タレス発見の三角形の性質1

 三角形の一辺の平行線は、三角形を2つの相似な三角形に分ける。
平行線による相似三角形

↑平行線の同位角が等しいことを知っていたことが言えます。

タレス発見の三角形の性質2

 2つの三角形が相似であれば、3組の辺の比が等しい。
相似の性質

↑ピラミッドの高さの測量で利用した性質です。
 
 このように、幾何分野に関してタレスは様々な発見をし、後の数学に大きな影響を与えました。


バビロニアとかで当たり前のように知られていた定理について、なぜ成り立つかを証明してみようと考えるなんて、タレスは疑い深い人だったんだね。
ふくすけ汗
というよりは、当時のギリシャ人は法で統治されたポリスの中で、市民どうしの議論が活発だったから、相手に反論の隙を与えない説明が必要だったんだ。
 それゆえに、数学においても証明が必要とされだよ。

◇参考文献等
・三浦伸夫・三宅克哉監訳,久村典子訳(2018)『メルツバッハ&ボイヤー 数学の歴史Ⅰー数学の萌芽から17世紀前期までー』,pp.43-45,朝倉書店.
・ジョニー・ボール著,水谷淳訳(2018)『数学の歴史物語』,pp.20-24,SB Creative.
・Bertrand Hauchecorne,Daniel Suratteau(2015)『世界数学者事典』,pp.273-275,熊原啓作訳,日本評論社.
・ポール・パーソンズ、ゲイル・ディクソン(2021)『図解教養事典 数学』,p.17,NEWTON PRESS
・志賀浩二(2014)『数学の流れ30講(上)ー16世紀までー』,pp.27-28,朝倉書店.
・マイケル・J・ブラッドリー(2009)『数学を切りひらいた人びと1-数学を生んだ父母たち』,pp.16-20,松浦俊輔訳,青土社.
・ピエルジョルジョ・オーディフレッディ著,河合成雄訳(2021)『幾何学の偉大なものがたり』,pp55-68,創元社.

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この記事を書いた人

現役の中高一貫校教員で、授業中は数学史ネタをよく喋ります。
教職大学院時代に開設した「Fukusukeの数学めも」が、閲覧者の学習・興味の一助になれば幸いです。
ちなみにFukusukeは我が家のお気に入りのペンギンの人形(8歳)

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