非可算無限集合

無限集合は、数えられる集合か数えられない集合に分類できます。
 この記事では、数えられない無限である非可算無限集合について解説します。

目次

Ⅰ 非可算無限集合とは?

 無限集合は、ドイツの数学者ゲオルク・カントール(Georg Cantor, 1845-1918)によって研究され、「濃度」という考え方で、無限集合は分類されました。

ゲオルク・カントール
ゲオルクカントール
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無限集合の濃度

 2つの集合\(~A~,~B~\)の間に全単射(一対一対応)が存在するとき、「\(~A~\)と\(~B~\)は対等である」または「\(~A~\)と\(~B~\)の濃度は等しい」と言い、\(~|A|=|B|~\)で表す。

 この考え方により、それぞれ無限の要素を持つ自然数、整数、有理数の集合が同じ濃度であることが言えました。
 自然数全体の集合\(~\mathbb{N}~\)と同じ濃度を意味する記号\(~\aleph_0~\)(アレフ・ゼロ)を使うと、次のように表せます。
\begin{equation}
|\mathbb{N}|=|\mathbb{Z}|=|\mathbb{Q}|=\aleph_0
\end{equation}
 このように、濃度が\(~\aleph_0~\)である集合を可算無限集合と言いましたが、濃度がそれよりも大きい集合を非可算無限集合と言います。

非加算無限集合

 無限集合\(~A~\)の濃度が、自然数全体の集合\(~\mathbb{N}~\)の濃度よりも大きいとき、\(~A~\)を非可算無限集合と言い、その濃度を
\begin{equation}
|A|=\aleph~~~~~(アレフ)
\end{equation}
と表す。

 \(~\mathbb{N}~\)よりも濃度が大きいということは、\(~1~\)番目、\(~2~\)番目、\(~3~\)番目、\(~\cdots~\)と番号すら振れないほど大きい無限であることを意味します。


Ⅱ 実数の集合の濃度

 有理数全体の集合\(~\mathbb{Q}~\)までは可算無限集合でしたが、実数全体の集合\(~\mathbb{R}~\)は次のようになります。

実数全体の集合の濃度

 実数全体の集合\(~\mathbb{R}~\)の濃度は\(~\aleph~\)である。

 \(~\mathbb{Q}~\)までと違って、非可算無限集合となります。
 \(~\mathbb{R}~\)が\(~\mathbb{N}~\)と一対一対応させられない理由を証明してみましょう。

証明

 \(~[~0~,~1~]\subset \mathbb{R}~\)より、\(~0~\)と\(~1~\)の間の実数の集合が非可算であることを示せば十分である。
 
 \(~[~0~,~1~]~\)が可算無限集合であると仮定する。
 このとき、\(~[~0~,~1~]~\)のすべての元は、自然数\(~1~,~2~,~3~,~\cdots~\)と一対一対応をするため、その対応表を以下のように作れる。

\(\mathbb{N}\) \(~[~0~,~1~]~\)
\(1\) \(~0.a_{11} a_{12} a_{13} a_{14}~\cdots~\)
\(2\) \(~0.a_{21} a_{22} a_{23} a_{24}~\cdots~\)
\(3\) \(~0.a_{31} a_{32} a_{33} a_{34}~\cdots~\)
\(4\) \(~0.a_{41} a_{42} a_{43} a_{44}~\cdots~\)
\begin{equation}
\vdots
\end{equation}
\begin{equation}
\vdots
\end{equation}

 この表の\(~a_{mn}~\)は、\(~m~\)番目の小数の、小数第\(~n~\)位での数字で、\(~0~\)から\(~9~\)の整数が入る。
 
 また表中では、\(~0=0.0000\cdots~,~1=0.9999\cdots~,\)\(~0.5=0.4999\cdots~\)のように、有限小数も無限小数の表記としている。
 
 ここで、\(~[~0~,~1~]~\)のある元\(~b=0.b_1 b_2 b_3 b_4 \cdots~\)の小数点以下を
\begin{equation}
b_n=
\begin{cases}
&1~~~~(a_{nn} \neq 1~のとき) \\
&2~~~~(a_{nn} = 1~のとき) \\
\end{cases}
\end{equation}
とする。
 この\(~b~\)は、対応表のどの元とも小数第\(~n~\)位が必ず違っているため、表にはない小数となる。
 
 したがって、\(~[~0~,~1~]~\)のすべての元が\(~\mathbb{N}~\)との一対一対応表で表されることに矛盾。
 すなわち\(~[~0~,~1~]~\)は非可算無限集合であり、それよりも大きい集合である\(~\mathbb{R}~\)も非可算無限集合となる。\(~~~\blacksquare~\)

 この証明方法のことを、カントールの対角線論法と言います。(解説はⅢ章にて)
 1873年の12月、カントールがリヒャルト・デデキント(Richard Dedekind, 1831-1916)との手紙のやりとりの中で証明を行いました。

リヒャルト・デデキント
リヒャルトデデキント
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 また、その後カントールは連続体仮説という問題を提起しました。

連続体仮説

 実数の部分集合のうち、無限集合であるものの濃度はすべて\(~\aleph_0~\)か\(~\aleph~\)である。

 この仮説はヒルベルトの23の問題(ドイツの数学者ダフィット・ヒルベルト(David Hilbert, 1862-1943)がまとめた、当時の未解決だった23の問題)の1つであり、カントールはこの問題の解決に努めたものの、当時はカントールの研究を確かめられる人はいませんでした。

ダフィット・ヒルベルト
ヒルベルト
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 しかし、実際はいかなる公理で集合論を構成しても、連続体仮説は正しいことも正しくないことも証明不可能ということが、1963年にアメリカの数学者ポール・コーエン(Paul Cohen, 1934-2007)によって証明されました。


Ⅲ 対角線論法の解説

 カントールの対角線論法を具体例で解説を加えたいと思います。
 \(~\mathbb{N}~\)との対応表が次のように作れたとしましょう。

\(\mathbb{N}\) \(~[~0~,~1~]~\)
\(1\) \(~0.2576~\cdots~\)
\(2\) \(~0.6174~\cdots~\)
\(3\) \(~0.2999~\cdots~\)
\(4\) \(~0.1211~\cdots~\)
\begin{equation}
\vdots
\end{equation}
\begin{equation}
\vdots
\end{equation}

 無限に続く表ではありますが、\(~[~0~,~1~]~\)の中の数は、すべてこの表のどこかに載っていると仮定しました。
 
 しかし、\(~[~0~,~1~]~\)のある元\(~b=0.b_1 b_2 b_3 b_4 \cdots~\)の小数点以下を
\begin{equation}
b_n=
\begin{cases}
&1~~~~(a_{nn} \neq 1~のとき) \\
&2~~~~(a_{nn} = 1~のとき) \\
\end{cases}
\end{equation}
とした場合、今回の表から\(~b~\)を作ると、
\begin{align}
b_1&=1~~~(a_{11}=2~より) \\
b_2&=2~~~(a_{22}=1~より) \\
b_3&=1~~~(a_{33}=9~より) \\
b_4&=2~~~(a_{44}=1~より) \\
&~~~~\vdots
\end{align}
となるため、\(~b=0.1212\cdots~\)となります。
 
 この小数を\(~\mathbb{N}~\)との対応表と比べてみましょう。

\(\mathbb{N}\) \(~[~0~,~1~]~\) \(~b~\)
\(1\) \(~0.\)\(2\)\(576~\cdots~\) \(~0.\)\(1\)\(212~\cdots~\)
\(2\) \(~0.6\)\(1\)\(74~\cdots~\) \(~0.1\)\(2\)\(12~\cdots~\)
\(3\) \(~0.29\)\(9\)\(9~\cdots~\) \(~0.12\)\(1\)\(2~\cdots~\)
\(4\) \(~0.121\)\(1\)\(~\cdots~\) \(~0.121\)\(2\)\(~\cdots~\)
\begin{equation}
\vdots
\end{equation}
\begin{equation}
\vdots
\end{equation}
\begin{equation}
\vdots
\end{equation}

 \(~n~\)番目について、少なくとも小数第\(~n~\)位は、数字が違っていることがわかります。
 その数字を赤くしていくと、左上から斜めに並ぶので対角線論法と言われています。
 
 この証明方法の肝となる部分は、

 \(~n~\)番目の小数に対して、小数第\(~n~\)位が\(~1~\)なら、\(~b~\)の小数第\(~n~\)位は\(~2~\)にして、小数第\(~n~\)位が\(~1~\)以外なら、\(~b~\)の小数第\(~n~\)位は\(~1~\)にする

というあまのじゃくな作り方で\(~b~\)を作っているところにあります。
 
 いかに対応表が縦に無限に伸びていても、小数の細かさも横に無限に伸びるため、必ず表の中にはない小数\(~b~\)を作り出すことができるのです。


有理数たちは、実数の格の違いを見せつけられたね。
ふくすけ汗
有理数までとは違い、実数は\(~\sqrt{2}~\)や\(~\pi~\)といった不規則に無限に続く無理数まで含んでいる点が、無限の大きさの違いに繋がってくるね。

◇参考文献等
・上野健爾・三浦信夫監訳,中澤聡訳(2009)『カッツ 数学の歴史』,pp.828-831,共立出版.
・黒木哲徳(2021)『なっとくする数学記号』,pp.125-127,講談社
・ポール・パーソンズ、ゲイル・ディクソン(2021)『図解教養事典 数学』,pp.66,115,NEWTON PRESS
・Bertrand Hauchecorne,Daniel Suratteau(2015)『世界数学者事典』,pp.119-123,166-167,408-411,熊原啓作訳,日本評論社.
・三浦伸夫・三宅克哉監訳,久村典子訳(2018)『メルツバッハ&ボイヤー 数学の歴史Ⅱー17世紀後期から現代へー』,pp.610-616,朝倉書店.

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この記事を書いた人

現役の中高一貫校教員で、授業中は数学史ネタをよく喋ります。
教職大学院時代に開設した「Fukusukeの数学めも」が、閲覧者の学習・興味の一助になれば幸いです。
ちなみにFukusukeは我が家のお気に入りのペンギンの人形(8歳)

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