\(~x^n-1~\)の因数分解(考察編①)
\(~x^2-1~\)の因数分解は中学3年生で、\(~x^3-1~,~x^4-1~\)の因数分解は数学Ⅰで習いますが、\(~x^n-1~\)の形の式の因数分解には何か共通点や規則性はあるのでしょうか? 本記事では、因数分解結果と\(~n~\)の整数的性質を見比べます。
Ⅰ カッコの個数に注目
前記事の「\(~x^n-1~\)の因数分解(計算編)」で導いた因数分解の結果をまずは載せておきます。
\begin{align}
x^1-1&=(x-1) \\
\\
x^2-1&=(x-1)(x+1) \\
\\
x^3-1&=(x-1)(x^2+x+1) \\
\\
x^4-1&=(x-1)(x+1)(x^2+1) \\
\\
x^5-1&=(x-1)(x^4+x^3+x^2+x+1) \\
\\
x^6-1&=(x-1)(x+1)(x^2+x+1)(x^2-x+1) \\
\\
x^7-1&=(x-1)(x^6+x^5+x^4+x^3+x^2+x+1) \\
\\
x^8-1&=(x-1)(x+1)(x^2+1)(x^4+1) \\
\\
x^9-1&=(x-1)(x^2+x+1)(x^6+x^3+1) \\
\\
x^{10}-1&=(x-1)(x+1)(x^4+x^3+x^2+x+1)(x^4-x^3+x^2-x+1) \\
\end{align}
\begin{align}
x^1-1&=(x-1) \\
\\
x^2-1&=(x-1)(x+1) \\
\\
x^3-1&=(x-1)(x^2+x+1) \\
\\
x^4-1&=(x-1)(x+1)(x^2+1) \\
\\
x^5-1&=(x-1)(x^4+x^3+x^2+x+1) \\
\\
x^6-1&=(x-1)(x+1)(x^2+x+1)(x^2-x+1) \\
\\
x^7-1&=(x-1)(x^6+x^5+x^4+x^3+x^2+x+1) \\
\\
x^8-1&=(x-1)(x+1)(x^2+1)(x^4+1) \\
\\
x^9-1&=(x-1)(x^2+x+1)(x^6+x^3+1) \\
\\
x^{10}-1&=(x-1)(x+1)(x^4+x^3+x^2+x+1) \\
&~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(x^4-x^3+x^2-x+1) \\
\end{align}
今回は、これらの式の規則性を考察していこうと思うのですが、注目したいのはカッコの個数です。
\(~n~\)に対応するカッコの個数をまとめると、以下のようになっています。
\(n\) | \(1\) | \(2\) | \(3\) | \(4\) | \(5\) | \(6\) | \(7\) | \(8\) | \(9\) | \(10\) |
カッコの個数 | \(1\) | \(2\) | \(2\) | \(3\) | \(2\) | \(4\) | \(2\) | \(4\) | \(3\) | \(4\) |
さて、ここで何かに気付けるでしょうか?
単純な数列ではないですが、素数である\(~n=2~,~3~,~5~,~7~\)のとき、カッコの個数が\(~2~\)個であることがヒントです。
答えは・・・
\(~x^n-1~\)の因数分解後カッコの個数は、\(~n~\)の約数の個数と同じになります。
確認をしてみましょう。
\(n\) | 因数分解 | 約数 |
---|---|---|
\(1\) | \((x-1)\) カッコは1個 |
\(~1~\) 約数は1個 |
\(2\) | \((x-1)(x+1)\) カッコは2個 |
\(~1~,~2~\) 約数は2個 |
\(3\) | \((x-1)(x^2+x+1)\) カッコは2個 |
\(~1~,~3~\) 約数は2個 |
\(4\) | \((x-1)(x+1)(x^2+1)\) カッコは3個 |
\(~1~,~2~,~4~\) 約数は3個 |
\(5\) | \((x-1)(x^4+x^3+x^2+x+1)\) カッコは2個 \((x-1)\) \((x^4+x^3+x^2+x+1)\) カッコは2個 |
\(~1~,~5~\) 約数は2個 |
\(6\) | \((x-1)(x+1)(x^2+x+1)(x^2-x+1)\) カッコは4個
|
\(~1~,~2~,~3~,~6~\) 約数は4個 \(1,2,3,6\) 約数は4個 |
確かに\(~n=6~\)まで合致していますね。
\(~n=7~\)から\(~n=10~\)についても確かめられます。
ちなみに、\(~n=11~\)以降も少し覗いてみると・・・
\(n\) | 因数分解 | 約数 |
---|---|---|
\(11\) | \begin{align} &(x-1) \left(x^{10}+x^9+x^8+x^7+x^6+x^5 \right. \\ &~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ \left. +x^4+x^3+x^2+x+1 \right) \end{align} カッコは2個 \begin{align} &(x-1) \left(x^{10}+x^9+x^8 \right. \\ &~~\left. +x^7+x^6+x^5+x^4 \right. \\ &~~~~~~ \left. +x^3+x^2+x+1 \right) \end{align} カッコは2個 |
\(~1~,~11~\) 約数は2個
|
\(12\) |
\begin{align} &(x-1)(x+1)(x^2+x+1)(x^2+1) \\ &~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(x^2-x+1)(x^4-x^2+1) \end{align} カッコは6個 \begin{align} &(x-1)(x+1) \\ &~~(x^2+x+1)(x^2+1) \\ &~~~~~(x^2-x+1)(x^4-x^2+1) \end{align} カッコは6個 |
\(~1~,~2~,~3~,~4~\) \(~~~~~~~~~~~~~6~,~12~\) 約数は6個 \(1,2,\) \(~3,4,\) \(~~6,12\) 約数は6個 |
約数の数が多い\(~n=12~\)も確かめられました。しかしながら、
実は、カッコの個数と約数の個数が一致しているだけではないんです。
次章で説明します。
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Ⅱ 約数と対応する式
因数分解後のカッコと約数の間には、さらに興味深い規則が隠れています。
先ほどの表を参考にすると、因数分解後のカッコの式には、すべての\(~x^n-1~\)に共通して登場する式があるのに気づけましたか?
そうです。\(~(x-1)~\)は毎回登場していますね。
次に、すべての\(~n~\)で共通する約数はいくつでしょうか?
これは当然\(~1~\)になりますね。
次に、因数分解後のカッコの式で、\(~n~\)が偶数のときにのみ、\(~x^n-1~\)に共通して登場する式は何でしょうか?
\begin{align}
x^2-1&=(x-1)(x+1) \\
x^4-1&=(x-1)(x+1)(x^2+1) \\
x^6-1&=(x-1)(x+1)(x^2+x+1)(x^2-x+1)
\end{align}
\(~(x-1)~\)以外で共通しているのは\(~(x+1)~\)ですね。
次に、偶数に共通する約数はいくつでしょうか?
当然、偶数は2の倍数なので、\(~2~\)となります。
このように考えていくと、各カッコの中の式が、特定の約数と1対1対応していることが見えてきます。
そこで、約数\(~m~\)に対応するカッコの中の多項式を\(~F_m(x)~\)と表現し、表にまとめてみましょう。
\(m\) | \(F_m(x)\) |
---|---|
\(1\) | \(x-1\) |
\(2\) | \(x+1\) |
\(3\) | \(x^2+x+1\) |
\(4\) | \(x^2+1\) |
\(5\) | \(x^4+x^3+x^2+x+1\) |
\(6\) | \(x^2-x+1\) |
\(7\) | \(x^6+x^5+x^4+x^3+x^2+x+1\) |
\(8\) | \(x^4+1\) |
\(9\) | \(x^6+x^3+1\) |
\(10\) | \(x^4-x^3+x^2-x+1\) |
\(11\) | \(x^{10}+x^9+x^8+x^7+x^6+x^5+x^4+x^3+x^2+x+1\) \(x^{10}+x^9+x^8+x^7+x^6\) \(~~~~~~~~~~~~+x^5+x^4+x^3+x^2+x+1\) |
\(12\) | \(x^4-x^2+1\) |
これにより、因数分解の結果は、
\begin{align}
x^1-1&=F_1(x) \\
x^2-1&=F_1(x)F_2(x) \\
x^3-1&=F_1(x)F_3(x) \\
x^4-1&=F_1(x)F_2(x)F_4(x) \\
x^5-1&=F_1(x)F_5(x) \\
x^6-1&=F_1(x)F_2(x)F_3(x)F_6(x) \\
\end{align}
というように、表すことができます。
カッコ内の式と約数が、このような美しい対応を見せてくれる理由については、「\(~x^n-1~\)の因数分解(考察編②)」をご覧ください。
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Ⅲ 応用例
カッコ内の式と約数の対応がわかれば、\(~n~\)が大きくなったときの\(~x^n-1~\)の因数分解に利用することができます。
例として、この記事でまだ登場していない\(~x^{18}-1~\)の因数分解について考えてみましょう。
約数\(~m~\)に対応するカッコの中の多項式\(~F_m(x)~\)を考えると、
\begin{equation}
x^{18}-1=F_1(x)F_2(x)F_3(x)F_6(x)F_9(x)F_{18}(x)~~\cdots ①
\end{equation}
と表せる。
また、因数分解公式から、
\begin{align}
x^{18}-1&=(x^9)^2-1 \\
&=(x^9+1)(x^9-1) \\
&=(x^9+1)F_1(x)F_3(x)F_9(x)~~~\cdots ②
\end{align}
と求まる。
\(~①~\)と\(~②~\)を比較することで、
\begin{equation}
x^9+1=F_2(x)F_6(x)F_{18}(x)~~~\cdots ③
\end{equation}
とわかり、さらに左辺に因数分解公式を適用すると、
\begin{align}
x^{9}+1&=(x^3)^3+1 \\
&=(x^3+1)(x^6-x^3+1) \\
&=(x+1)(x^2-x+1)(x^6-x^3+1) \\
&=F_2(x)F_6(x)(x^6-x^3+1)~~~\cdots ④
\end{align}
と求まる。
\(~③~\)と\(~④~\)を比較することで、
\begin{equation}
F_{18}(x)=(x^6-x^3+1)
\end{equation}
とわかるため、
\begin{align}
x^{18}-1&=(x-1)(x+1)(x^2+x+1)(x^2-x+1)(x^6+x^3+1)(x^6-x^3+1)
\end{align}
\begin{align}
x^{18}-1&=(x-1)(x+1)(x^2+x+1)(x^2-x+1) \\
&~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(x^6+x^3+1)(x^6-x^3+1)
\end{align}
と求まった。
この作業により、次数を下げて因数分解を考えることができますね。
1記事目の「\(~x^n-1~\)の因数分解(計算編)」の結果から、面白い規則性に気付けた2記事目でした。次の3記事目「\(~x^n-1~\)の因数分解(考察編②)」では、今回の面白い規則性の理由について解き明かします!!
数と式が融合しました。数学はつながっています。
◇参考文献等
・「\(x^n-1\)の因数分解に見られる数と式の不思議な関係」,<https://www.math.kyushu-u.ac.jp/pages/pdf/laboratory_koike.pdf > 2020年5月4日アクセス
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