数の鎖

中学校1年生で習う「一次方程式」の応用問題として、授業で使える教材です。パズル的な要素が強く、深く追究すると不定解や不能解の話まで登場するため、幅広い学力層で有効な数学的活動となっています。
①数の鎖とは?
②本題
③宿題
④数の鎖の公式


目次

①数の鎖とは?

まずは「数の鎖」とはどのようなものなのかを見てみましょう。

数の鎖の定義

数の鎖とは、
「四角の中に入る数字は、両隣の丸の中の数字の和が入る」
というルールで結ばれたものである。

ルールは単純ですね。応用例として、
「四角の中に入る数字は、左隣の丸の数字から右隣の数字を引いた数」
「四角の中に入る数字は、両隣の丸の中の数字の積」
などと発展させても面白いです。ただ、積の場合は2次方程式が必要となってくるため、中学校3年生以上となってしまいますが・・・・
 
とりあえず、このページにおける「数の鎖」は和でつながれたものと定義します。

では、このルールを定着させるために、例題を解いてみてください。

例題



ルールが飲み込めていれば、方程式を使うまでもなく、解けると思います。答え合わせしてみましょう↓
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解説



$ C+E=D~$ より、$ C=D-E=5-3=$$2$
これで、Cがわかったため、同様の方法で、
$ A=B-C=9-2=$$7$


①と同様の方法で、右から埋めていく。
$ E=F-G=8-6=$$2$
$ C=D-E=4-2=$$2$
$ A=B-C=7-2=$$5$

ルールは飲み込めたと思います。実際の授業では、生徒に自然数を適当に言ってもらい、その場で作問すると、生徒目線の題材として捉えられて授業がより円滑に進みます。
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②本題

例題は方程式を使わなくても引き算でできるため、生徒に方程式の良さを実感させることはできません。あくまでも、「数の鎖」のルールを定着させることが目的でした。ルールを定着させた後は次の問題を出題し、この教材の本題へと入ります。

本題

次の数の鎖の両端には同じ数が入る。($ A $と$ G~$ は同じ数)このとき、数の鎖を完成させなさい。

いかがでしょうか?
例題のように簡単には完成させられません。実際の授業では、個人で考える時間をとった後、班で問題の難しさや解法を共有するという活動を入れ、発表によりクラス全体で解法を共有しました。様々な解法が考えられますが、そのうち3つほど紹介します。↓↓
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解法1

$ A=1 $のとき、
$C=8-1=7 $
$E=7-7=0 $
$G=9-0=9 $
であり、 $~A \neq G $なので不適。同様に、
$ A=2 $のとき、
$C=8-2=6 $
$E=7-6=1 $
$G=9-1=8 $
であり、 $~A \neq G $なので不適。

・・・・

同様に、
$ A=5 $のとき、
$C=8-5=3 $
$E=7-3=4 $
$G=9-4=5 $
であり、 $~A = G $なので、これで完成。$~ \blacksquare $

一番わかりやすい解法です。多くの生徒がこの方法で解けていました。この方法により、 $~A~$ が $~1~$ 増えると、 $~G~$ が $~1~$ 減るということに気付いた生徒も多かったです。

解法2

$ A=x $とする。
すると、 $~C,E,G $は次のように表せる。
$ C=8-x $
$ E=7-C=7-(8-x)=x-1 $
$ G=9-E=9-(x-1)=10-x $
ここで、 $~A=G~$ なので、
\begin{align}
x&=10-x \\
2x&=10 \\
x&=5 \\
\end{align}
これにより $~A=5~$ と求めるので、あとは代入or引き算していけば鎖が完成する。$ \blacksquare $

方程式の考え方ですが、式どうしの引き算を何回も行うため、計算ミスが多くなってしまいます。

解法3

$ A=G=x $とする。
すると、 $~C,E~$ は次のように表せる。
$ C=B-A=8-x $
$ E=F-G=9-x $
ここで、 $~C+E=D~$ なので、
\begin{align}
(8-x)+(9-x)&=7 \\
17-2x&=7 \\
-2x&=-10 \\
x&=5 \\
\end{align}
これにより $~A=G=5~$ と求めるので、あとは代入or引き算していけば鎖が完成する。$ \blacksquare $

これがこの数学的活動の学ばせたい解法となります。
解法2に比べて、方程式立式までに計算ミスを減らせる良さにも気づかせたいですね。

解法4

$~A,B,C~$ の数の鎖から、
$ A+C=8・・・① $
$~C,D,E~$ の数の鎖から、
$ C+E=7・・・② $
$~E,F,G~$ の数の鎖から、
$ E+G=9・・・③ $
①、③の両辺を足すと、
$ A+C+E+G=17 $
ここに、②を代入すると、
\begin{align}
A+7+G&=17  \\
A+G&=10
\end{align}
ここで、 $~A~$ と $~G~$ は同じ数なので、 $~A=G=5~$
あとは代入と引き算により、鎖が完成する。$ \blacksquare $

方程式の解法を教えるうえで必要な「等式の性質」を使った解法です。
別解として紹介すると良いでしょう。
クラスで何人かの生徒はこの考え方を使っていました。
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自分の授業では、この本題で授業時間が終了してしまいました・・・(^^;)
時間が余るようであれば、同じような問題で方程式の解法を定着させたほうが良いです。
 
実は簡単に鎖の両端が求まる公式もあります!→④数の鎖の公式


③長さが9の数の鎖

本題によって、数の鎖の様々な解法が学べたため、あとはそれを生かして宿題に取り組みます。
自分の授業の中では、宿題は2問課しました。
1問目は本題と同じような長さ7の数の鎖、2問目は長さ9の数の鎖です。
 
では、実際に長さ9の鎖について解いてみましょう。

長さが9の数の鎖

次の数の鎖の両端には同じ数が入る。($ A $と$ I~$ は同じ数)このとき、数の鎖を完成させなさい。



さあ、解いてみてください。先ほどとは一味違います。

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実は・・・こんな法則があります。

長さが9の数の鎖の秘密


上図のような長さが9の数の鎖では、
$ B+F=D+H $のとき、 $~A~$ はどんな数でもあてはまる。
$ B+F\neq D+H $のとき、 $~A~$ にあてはまる数は存在しない。

なんと、答えが一意に出ることがないのです!!

解答・解説


$ B+F=3+8=11 $
$ D+H=6+5=11 $
より、 $~A~$ はどんな数でもあてはまる(不定解)
 

$ B+F=3+8=7 $
$ D+H=6+5=9 $
より、 $~A~$ にあてはまる数は存在しない(不能解)

実際・・・・
$~A=1~$ からあてはめ式で、①の問題だと、
確かにどんな数でも成り立ちそうですね(^^)
 
また、②の問題だと、  確かに $~A~$ が1増えたら $~I~$ も1増えてしまうため、同じ数になることは無さそうですね・・・。
 
では、なぜこのような法則が成り立つのかを文字式から証明してみましょう。先ほどの本題の解法に使った方程式の考え方を使います。

証明

本題の解法3と同様に、両端の数を $~x~$ とする。( $~A=I=x~$ )

すると、
$C=B-A=b-x$
$G=H-I=h-x$
となる。

さらに、
$ E=D-C=d-(b-x) $

ここで、$ E+G=F $という関係から、次のような等式が成り立ちます。
\begin{equation}
d-(b-x)+(h-x)=f
\end{equation}
これを式変形していくと、
\begin{align}
d-b+x+h-x&=f \\
b+f&=d+h
\end{align}
$ x~$ が消えてしまい、残った等式は$ b+f=d+h~$ であるため、
$ b+f=d+h~$ のときは、$ A~$ がどんな数でも数の鎖が成り立ち、
$ b+f\neq d+h~$ のときは、$ A~$ がどんな数でも数の鎖は成り立たない。$ \blacksquare $

ということで、長さが9の数の鎖を宿題に出すことで、生徒の思考力を育てることができます。
自分で問題を作って、解いてくるという宿題のため、基本的には①不定解のパターンに持っていく生徒が多かったです。
できる生徒はここで示した証明を使って、①不定解と②不能解の違いを説明する生徒もいました。
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④数の鎖の公式

長さが7の数の鎖については、方程式を使わなくても簡単に解ける公式があるんです。
 
それがこちらの公式↓↓

数の鎖の公式


上図のような長さが7の数の鎖において、次のような式が成り立つ。
\begin{equation}
\displaystyle A=G=\frac{B+F-D}{2}
\end{equation}

数の鎖の問題を並べていくと、この公式に気付く生徒も出てきました。
証明も中学1年生で十分できるレベルです。


先ほどの本題の場合、
\begin{equation}
\displaystyle A=G=\frac{8+9-7}{2}=5
\end{equation}
となり、先ほどと同様の答えが得られる。

証明は、これまでに使った方程式の考え方を適用するだけです。

証明

$~A=G=x~$ とおく。すると、
$C=B-A=b-x $
$E=F-G=f-x $
となる。
ここで、 $~C+E=D~$ より、方程式を作って解くと
\begin{align}
(b-x)+(f-x)&=d     \\
-2x&=-b-f+d     \\
\displaystyle x&=\frac{b+f-d}{2}   \\
\end{align}
よって、示された。$ \blacksquare $

自分の授業では、この公式を見つけた生徒が3人ほど、その中で証明までしてきたのは1人いました。


ということで、今回は「数の鎖」という教材を、実際の授業の流れと生徒の状況を併せて紹介しました。方程式の良さ、文字を使うことの良さを実感させられる題材だと思います。「こんなに数学をおもしろいと思ったの初めて~」というつぶやきを生徒から得ることもできました!ぜひ使ってみてください。

   
 
 


☆参考文献等
・熊本大学教育学部附属中学校数学科(2011)『思考力・表現力がぐんぐん伸びる!数学レポート実践集』
・文部科学省(2008)『中学校学習指導要領解説 数学編』


☆オマケ
授業で使った際の、配付プリントです。↓↓
数の鎖 授業プリント

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