漸化式を解く際に有効な手段として、特性方程式の解を使って式変形をする方法があります。
なぜ特性方程式の解が式変形の上で有効なのかを解説します。
- 二項間漸化式の解き方
- 二項間漸化式が特性方程式でうまく解ける理由
- 三項間漸化式の解き方
- 三項間漸化式特性方程式でうまく解ける理由
Ⅰ 二項間漸化式と特性方程式
まずは二項間漸化式でよくある問題を見てみましょう
二項間漸化式 $~a_{n+1}=3a_{n}+8~,~a_{1}=2~$ の一般項を求めなさい。
数学Bの教科書で、数列の基本例題の最後あたりに出てくる漸化式です。
解き方を知らないと、なかなかの難問。
これを解くためには、以下のように特性方程式という秘密道具を使います。
特性方程式 $~x=3x+8~$ を考える。この特性方程式を解くと、
\begin{align*} -2x&=8 \\ x&=-4 \end{align*}
となるため、漸化式は次のように変形できる。
\begin{equation*} a_{n+1}+4=3(a_{n}+4)~~\cdots① \end{equation*}
ここで、数列 $~\{ a_{n}+4 \}~$ は初項 $~a_{1}+4=2+4=6~$ 、公比 $~3~$ の等比数列なので、
\begin{align*} a_{n}+4&=3^{n-1}\cdot 6 \\ a_{n}+4&=3^n \cdot 2 \\ a_{n}&=3^n \cdot 2 -4 \end{align*}
と求まった。
特性方程式の解を求めることで、なぜ $~①~$ のように式変形ができるのでしょうか。
それを証明してみました。
二項間漸化式
\begin{equation*} a_{n+1}=pa_{n}+q~~~~(p \neq 1)~~\cdots② \end{equation*}
の特性方程式が$~x=px+q~$であることを示す。
この漸化式を解くためには、与式を
\begin{equation*} a_{n+1}-\alpha=p(a_{n}-\alpha) \end{equation*}
と変形できればよい。
$~②~$を式変形すると、
\begin{equation*} a_{n+1}=pa_{n}-p\alpha+\alpha~~\cdots③ \end{equation*}
となるため、$~②-③~$より、
\begin{align*} 0&=q+p\alpha-\alpha \\ \alpha&=p\alpha+q \end{align*}
である。これは求めたい特性方程式で、$~x=\alpha~$となる。■
帰納的ではありますが、簡単な式計算で特性方程式が出来上がりました。
Ⅱ 三項間漸化式と特性方程式
同じように三項間漸化式についても考えてみましょう。
三項間漸化式 $~a_{n+2}=4a_{n+1}+5a_{n}~,~a_{1}=1~,~a_{2}=2~$ の一般項 $~{a_{n} }~$ を求めなさい。
こちらは数学Bの教科書で、応用問題として扱われていることが多いです。
ですが、理系たるもの解けるようにしておかないと、大学入試で困ってしまいます。
特性方程式 $~x^2=4x+5~$ を考える。この特性方程式を解くと、
\begin{align*} x^2-4x-5&=0 \\ (x-5)(x+1)&=0 \\ x&= 5 , -1 \end{align*}
となるため、漸化式は次のような2本の式に変形できる。
\begin{cases} & a_{n+2}-5a_{n+1}=-(a_{n+1}-5a_{n}) \\ & a_{n+2}+a_{n+1}=5(a_{n+1}+a_{n}) \\ \end{cases}
ここで、数列 $~{ a_{n+2}-5a_{n+1} }~$ は初項 $~a_{2}-5a_{1}=2-5=-3~$ 、公比 $~-1~$ の等比数列なので、
\begin{equation*} a_{n+1}-5a_{n}=(-1)^{n-1}\cdot (-3) ~~\cdots④ \end{equation*}
が成り立ち、また数列 $~{ a_{n+2}+a_{n+1} }~$ は初項 $~a_{2}+a_{1}=2+1=3~$ 、公比 $~5~$ の等比数列なので、
\begin{equation*} a_{n+1}+a_{n}=5^{n-1}\cdot 3 ~~\cdots⑤ \end{equation*}
も成り立つ。
よって、$~④-⑤~$から、
\begin{align*} -6a_{n}&=(-1)^{n-1}\cdot (-3)-5^{n-1}\cdot 3 \\ \\ a_{n}&=\displaystyle \frac{1}{2}(-1)^{n-1}+\frac{1}{2}\cdot 5^{n-1} \end{align*}
と求まった。
さすが応用問題レベルというほど複雑な計算です。
特性方程式として二次方程式を使うため、2つの解を利用することになります。
では、二項間のときと同様に帰納的に証明してみます。
三項間漸化式
\begin{equation*} a_{n+2}=pa_{n+1}+qa_{n}~~~(p\neq 0~,~q\neq 0)~~\cdots⑥ \end{equation*}
の特性方程式が$~x^2=px+q~$であることを示す。
この漸化式を解くためには、与式を
\begin{equation*} a_{n+2}-\alpha a_{n+1}=\beta(a_{n+1}-\alpha a_{n})~~\cdots⑦ \end{equation*}
と変形できればよい。
$~⑦~$を式変形すると、
\begin{align*} a_{n+2}-\alpha a_{n+1}&=\beta a_{n+1}-\alpha \beta a_{n} \\ a_{n+2}&=(\alpha +\beta )a_{n+1}-\alpha \beta a_{n} ~~\cdots⑧ \end{align*}
となるため、$⑥$と$⑧$の係数を比較することで、
\begin{cases} &p=\alpha+\beta \\ &q=-\alpha\beta \end{cases}
がわかり、解と係数の関係から、$~\alpha~,~\beta~$を求める方程式は
\begin{align*} x^2-px-q&=0 \\ x^2&=px+q \end{align*}
となり、これは求めたい特性方程式である。■
こちらも無事証明できました。
二項間漸化式が一次方程式、三項間漸化式が二次方程式。
ということは、四項間漸化式は・・・?
うん。三次方程式になるよ。
時間ができたら、そちらも証明してみるね。
コメント
コメント一覧 (4件)
どの特性方程式はn-1次なのですか?続き見たいです
今回、2項間漸化式なら特性方程式は1次方程式になり、3項間漸化式なら2次方程式となりました。
そのため、\(~n~\)項間漸化式の特性方程式は、\(~(n-1)~\)次方程式となるだろうなぁという予想です。
需要があるようなので、4項間漸化式についてはそのうち書いてみようかと思いますが、一般化するのは難しそうです・・・。
わかりやすかったです ありがとうございました
コメントありがとうございます。
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