円周率 まとめ

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円周率$ \pi $は、一番身近な無理数であり、人を惹きつける定数である。古代バビロニアより研究が行われている円周率について、歴史や有名な実験についてまとめておきます。
①円周率の定義
②円周率の歴史
③円周率の実験
④円周率の日



①円周率の定義

まずは、円周率の定義について、抑えておきます。

円周率の定義

円周の直径に対する割合を円周率という。

この定義は中学校1年生の教科書『未来へひろがる数学1』(啓林館)から抜粋したものであり、円周率はギリシャ文字の $~\pi~$ で表されます。 $~\pi~$ の値は
\begin{equation}
\pi=3.141592653589793238462643383279 \cdots
\end{equation}
であり、小数点以下が永遠に続く無理数です。そのため、古代バビロニアより円周率の正確な値を求めようと人々が努力してきました。
 
(円周率30ケタの語呂についてはコチラ→有名な無理数の近似値とその語呂合わせ


②円周率の歴史

出来事 ケタ
B.C.
2000年頃
古代バビロニアで、
\begin{equation}
\pi=\displaystyle 3\frac{1}{8}=3.125
\end{equation}
として計算していた。
1ケタ
B.C.
1650頃
古代エジプトで、正八角形と円を重ねることにより、
\begin{equation}
\pi=\displaystyle \frac{256}{81}\fallingdotseq 3.16
\end{equation}
を得た。
1ケタ
B.C.
3世紀頃
アルキメデスは正96角形を使って、
\begin{equation}
\displaystyle 3+\frac{10}{71}<\pi<3+\frac{10}{70}
\end{equation}
を得た。
(近似値で、 $~3.1408< \pi <3.1428~$ となり、初めて $~3.14~$ まで求まった。)
2ケタ
450頃 中国の祖冲之(そちゅうし)が連分数を使って、
\begin{equation}
\pi=\displaystyle \frac{355}{133}\fallingdotseq 3.14159292
\end{equation}
で近似した。
6ケタ
1596 オランダのルドルフ・ファン・コーレンが正 $~2^{62}~$ 角形を使って、
円周率を小数点以下35ケタまで求めた。
(このことからオランダでは円周率を「ルドルフ数」と呼んでいる。)
35ケタ
1656 ウォリスによって、ウォリスの公式
\begin{equation}
\displaystyle \frac{\pi}{2}=\frac{2\cdot 2}{1\cdot 3}\cdot \frac{4\cdot 4}{3\cdot 5}\cdot \frac{6\cdot 6}{5\cdot 7}\cdots
\end{equation}
が生まれた。17世紀に入って、微積分学の研究が進んだことが背景となっている。
1671 ジェームス・グレゴリーによって、グレゴリー級数

\begin{equation}
\displaystyle \tan^{-1}x=x-\frac{1}{3}x^3+\frac{1}{5}x^5-\frac{1}{7}x^7+\cdots
\end{equation}


\begin{multline}
\displaystyle \tan^{-1}x=x-\frac{1}{3}x^3 \\
+\frac{1}{5}x^5-\frac{1}{7}x^7+\cdots
\end{multline}

が示された。

1674 ゴットフリート・ライプニッツによって、ライプニッツ級数
\begin{equation}
\displaystyle \frac{\pi}{4}=1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\cdots
\end{equation}
が示された。(グレゴリーもほぼ同時期に発見していたため、「グレゴリー・ライプニッツ級数」ともいう。)
1699
エイブラハム・シャープがグレゴリー級数( $~x=\frac{1}{\sqrt{3}}~$ )を使って、円周率を72ケタまで計算した。


エイブラハム・シャープが
グレゴリー級数( $~x=\frac{1}{\sqrt{3}}~$ )を使って、円周率を72ケタまで計算した。

72ケタ
1706 ジョン・マチンがマチンの公式
\begin{equation}
\displaystyle \frac{\pi}{4}=4\tan ^{-1}\frac{1}{5}-\tan^{-1} \frac{1}{239}
\end{equation}
を示す。これにより100ケタまで計算できた。
100ケタ
1719 トマス・ファンデ・ド・ラグニーがライプニッツ級数( $~x=\frac{1}{\sqrt{3}}~$ )を使って、円周率を127ケタまで計算した。 127ケタ
1761 ヨハン・ハインリッヒ・ランベルトは、円周率 $~\pi~$ が無理数であることを証明した。
1844 L・K・シュルツ・フォン・ストラスニツキーとヨハン・ターゼが、円周率200ケタまで計算した。 200ケタ
1882 フェルディナント・フォン・リンデマンは、円周率 $~\pi~$ が超越数であることを証明した。
1949 ジョージ・リトワイズナーは、電子計算機ENIACにマチンの公式を計算させ、2037ケタまで円周率を計算した。 2037ケタ
20世紀後半から、計算機の開発が進むと共に、円周率を何万、何億、何兆ケタと計算ができるようになった。
2016.
11.15
ピーター・トリュープがチュドノフスキーの公式を使って、コンピュータで計算した。 22兆4591億5771万8361ケタ

年表を見ていくと、昔は円に内接・外接する正多角形から、円周率を幾何的に求めていたことがわかります。
しかし、17世紀に入り、ニュートンやオイラーなどが微分積分学を確立させると、円周率を $~\tan^{-1}~$ のマクローリン展開を利用した式から直接求める風潮へと変わっていきました。
さらに20世紀後半にコンピュータが登場すると、円周率を求める公式をコンピュータに指示し、計算させるという技術競争へと変わっていったことがわかります。


③円周率の実験

円周率の近似値を求める実験もあります。あくまで実験なので、正確さには欠けますが学校の教材などで使うと面白いかと思います。

モンテカルロ法 正方形とそれに内接する円の中に、ランダムに点をうち、
円の中の点の数:正方形の中の点の数
=円の面積:正方形の面積

により、円周率を近似する。
ビュッホンの針 平行線の中に針を落とし、針が平行線と交わる確率を求めることで、円周率を近似する。

④円周率の日

円周率に関係する日は、3つあります。ニュース等で報じられることはほとんどありませんが、密かにお祝いしましょう。

3月14日 明らかに円周率の日。日本数学検定協会でもこの日を「数学の日」と制定している。
7月22日 紀元前3世紀頃、アルキメデスが求めた $~\pi < \displaystyle \frac{22}{7} ~$ にちなむ。
12月21日 1月1日から数えて355日目にあたる日。450年頃、中国の祖冲之が連分数を使って、
\begin{equation}
\pi=\displaystyle \frac{355}{133}\fallingdotseq 3.14159292
\end{equation}
と近似したことに由来。

素数同様、数学好きを虜にする円周率。円周率の細かな値を追い求めることに、数学者は熱意を注いでいるのですね。昔の数学者の手計算すごい!!

   
 
 


☆参考文献等
・(2013)『Newton別冊 知れば知るほど興味深い 数学の世界』,pp.24-27,ニュートンプレス.
・「江戸の数学」,<http://www.ndl.go.jp/math/s1/c4.html>2017年3月14日アクセス
・「πの歴史」,<http://www004.upp.so-net.ne.jp/s_honma/paihistory.htm>2017年3月14日アクセス
・「πの級数公式」,<http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu/798_pi.htm>2017年3月14日アクセス
・「円周率.jp コンピュータ計算の記録」,<http://xn--w6q13e505b.jp/history/computer.html>2017年3月14日アクセス
・「Wikipedia 円周率の歴史」,<https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%86%E5%91%A8%E7%8E%87%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2>2017年3月14日アクセス
・「なぜ世界には円周率の日が3つあるのか?」,<http://okinote.com/2014/05/2307>2017年3月14日アクセス