17世紀に活躍したドイツの数学者ゴットフリート・ライプニッツは、円周率を無限級数で表す有名な式を示しました。
その式を分母が奇数の分数を、符号を交互に変えながら足したり引いたりするだけで、$~\pi/4~$ に近づいていきます。
この記事では、ライプニッツ級数の定義と証明を確認したうえで、実際に円周率を近似してみます。
ライプニッツ級数とは?
ライプニッツ級数は、1674年にドイツのゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ(Gottfried Wilhelm Leibniz , 1646年〜1716年)によって示された級数です。

(出典:クリストフ・ベルンハルト・フランケ, Public domain, via Wikimedia Commons)
ライプニッツ級数の定義
ライプニッツ級数は、次のようなシンプルな分数の計算によって表されます。
次のような級数をライプニッツ級数という。
\begin{align*}
\frac{\pi}{4}&= \sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n}{2n+1} \\
\\
&=1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\cdots
\end{align*} 分子が$~1~$、分母が奇数の分数を交互に加減していくという意味です。
この操作を無限に行うと $~\displaystyle\frac{\pi}{4}~$ になるというのは不思議ですね。
グレゴリー級数との関係
ライプニッツ級数は、次のグレゴリー級数における$~x=1~$の形です。
次のような級数をグレゴリー級数という。
\begin{align*}
\tan^{-1}x&=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(-1)^n}{2n+1}x^{2n+1}\\
&=x-\frac{1}{3}x^3+\frac{1}{5}x^5-\frac{1}{7}x^7+\cdots
\end{align*}このサイトでは、ライプニッツ級数を一般化した級数をグレゴリー級数として扱っていますが、世間的には2つの級数をまとめて「グレゴリー・ライプニッツ級数」と呼ぶこともあります。
ちなみに歴史的には、グレゴリー級数の方がライプニッツ級数よりも3年早く発表されているものの、スコットランドとドイツということもあり、グレゴリーとライプニッツがそれぞれ独立に発見したものとして扱われています。
さらに言えば、インドの数学者マーダヴァが同様の式を200年以上前に見つけていました。

ライプニッツ級数の証明
では、証明に入ります。高校数学の知識だけでできます。一応。
初項 $~1~$、公比 $~-x^2(0 \le x <1)~$ の無限等比級数を考えると、|公比|$<1~$ より、次のような関係式が表せる。
\begin{equation*}
\displaystyle 1-x^2+x^4-x^6+\cdots=\frac{1}{1-(-x^2)}=\frac{1}{1+x^2}
\end{equation*}ここで、$~x:0 \to 1~$ について、両辺積分をとると、
\begin{equation*}
\displaystyle \int_{0}^{1}( 1-x^2+x^4-x^6+\cdots)dx=\int_{0}^{1}\frac{1}{1+x^2}dx\,・・(*)
\end{equation*}であり、左辺と右辺それぞれを計算する。
左辺について計算していくと、
\begin{align*}
\displaystyle (左辺)&=\int_{0}^{1}( 1-x^2+x^4-x^6+\cdots)dx \\
\\
&=\left[ x-\frac{1}{3}x^3+\frac{1}{5}x^5-\frac{1}{7}x^7+\cdots \right]_{0}^{1} \\
\\
&=1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\cdots
\end{align*}となる。
右辺に関しては、$~x=\tan{\theta}~$ と置換することで、
$~x:0 \to 1~$ が $~\theta:0 \to \displaystyle \frac{\pi}{4}~$ となり、$~\displaystyle dx=\frac{1}{\cos^{2} \theta}d \theta~$ となるため、
\begin{align*}
\displaystyle (右辺)&=\int_{0}^{1}\frac{1}{1+x^2}dx \\
\\
&=\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\frac{1}{1+\tan^{2}\theta}\cdot \frac{1}{\cos^{2} \theta}d \theta \\
\\
&=\int_{0}^{\frac{\pi}{4}} \cos^{2}\theta \cdot \frac{1}{\cos^{2} \theta}d \theta \\
\\
&=\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}d \theta \\
\\
&=[\theta]_{0}^{\frac{\pi}{4}} \\
\\
&=\frac{\pi}{4}
\end{align*}と右辺も求まった。
左辺と右辺の計算結果を元の等式$(*)$に代入することで、
\begin{equation*}
\displaystyle 1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\cdots = \frac{\pi}{4}
\end{equation*}となり、ライプニッツ級数の値が求まった。$~\blacksquare~$
左辺の積分は数学Ⅱでもできる単純な積分、右辺の積分は置換積分の代表的な形の1つです。
※ $~0 \le x <1~$ という定義域で無限等比級数の和を考えているため、正確には $~x:0 \to 1-\varepsilon~$ で積分を考え、$~\varepsilon \to 0+~$ という極限の操作をしてあげる必要があります。(広義積分)
円周率の近似計算
ライプニッツ級数を使えば、円周率$~\pi~$の $~\displaystyle \frac{1}{4}~$の値を、分母が奇数分数のたし算引き算によって求めることができます。
では、どれくらいの精度とスピードで円周率が出るのでしょうか?
円周率$\pi~$ は、ライプニッツ級数を利用して次のように表せる。
\begin{equation*}
\displaystyle \pi=4\left(1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\cdots \right)
\end{equation*}$~n~$ を1ずつ増やして、実際に$~\pi~$ の値を求めてみます。
\begin{align*}
\pi&=4 \cdot 1 \\
&=4
\end{align*}$~n=1~$ の誤差は0.85840734
3.14を超えたところからのスタートです。
\begin{align*}
\pi&=4\left( 1-\frac{1}{3} \right) \\
&=4\cdot \frac{2}{3} \\
&=2.666666666
\end{align*}$~n=2~$ の誤差は0.47492598
今度は3.14よりも小さくなってしまいました。でも一気に近づいた!
\begin{align*}
\pi&=4\left(1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}\right) \\
&=4\cdot \frac{13}{15} \\
&=3.4666666666
\end{align*}$~n=3~$ の誤差は0.32507401
また3.14を超えた!でも、この調子で誤差を小さくしてほしい!
\begin{align*}
\pi&=4\left(1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\frac{1}{9}\right) \\
&=4\cdot \frac{76}{105} \\
&=2.895238
\end{align*}$~n=4~$ の誤差は0.24635455
3.14の周りを近づきながら振動していますね。
少しとばします。
\begin{align*}
\pi&=4\left(1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\cdots-\frac{1}{19}\right) \\
&=3.04183961
\end{align*}$~n=10~$ の誤差は0.09975303
おー。
思い切って1000まで計算すると・・・
\begin{align*}
\pi&=4\left(1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\cdots-\frac{1}{1999}\right) \\
&=3.14059265
\end{align*}$~n=1000~$ の誤差は0.00100000
なんか、妙に一致しているが、小数第3位が違う・・。
最後の最後、10000!
\begin{align*}
\pi&=4\left(1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\cdots-\frac{1}{19999}\right) \\
&=3.14149265
\end{align*}$~n=10000~$ の誤差は0.00010000
これまた妙に一致しているが、小数第4位が違う・・。
分母が奇数なので手計算だと通分が大変です。
そして、収束速度もそんなに速くない・・。
一応、$~n=100~$ までの様子をグラフにしたものを載せておきます。

メルカトル級数でも見たような振動具合です。
まとめ
- ライプニッツ級数は、奇数を分母とする交代和で $~\pi/4~$ を表す式である。
- 無限等比級数を積分すると、ライプニッツ級数を証明できる。
- 部分和は $~\pi~$ の前後を振動しながら近づくが、収束速度は遅い。

分数の計算で円周率が求められるなんて驚き!



ちなみに$~3.14~$が初めて登場するのは119項目。
分数でいうと、$~\dfrac{1}{237}~$まで計算することで、$~\pi~$が$~3.14999586659347~$と近似されるよ。




コメント
コメント一覧 (6件)
質問です
証明のところで、xの定義域を[0,1)にされていましたが、なぜそう仮定するのでしょうか(自分は高校3年なのですが、もし高3でも理解できそうなのであれば教えていただきたいです。)
あとその定義域で考えるのに積分区間を0→1にしても問題ないんですか??
よろしくお願いします。
ご質問ありがとうございます。
無限等比級数を収束させるために、公比の絶対値が 1 より小さくないといけないので、 \( x\) の定義域を 1 より小さくしています。
収束する上では \(x=0\) でも問題ないので、 \( [0,1)\) としています。
積分区間に関しては、証明後の※にも書いたのですが、本来は \(\displaystyle \lim_{\epsilon \to 0+} \int_{0}^{1-\epsilon}\) で計算してあげないといけないのですが、高校数学の知識だけということで、そこの厳密性を無視しています。
先生、早速のご返信ありがとうございます!
先生の記事は高校生にもわかりやすくて、とても勉強になっています。:
これからも、:よろしくお願いいたします!!
嬉しいコメントありがとうございます。
今日は記事の更新日でしたので、早速メルカトル級数について書いてみました。
ライプニッツ級数のときと同様のレイアウトですが・・・
どうぞご覧ください。
メルカトル級数
先生、こんにちは!
ライプニッツ級数の記事、とてもおもしろかったです!
メルカトル級数や調和級数のお話もつくっていただけるとうれしいです!
よろしくお願いいたします!!
ライプニッツ級数の記事、読んでいただきありがとうございます。
メルカトル級数で\(~\log{2}~\)の近似値をひたすら求めてみるのも面白そうですね!!
今週の木曜日の更新日のネタにさせていただきます。
調和級数に関してもひたすら計算して、発散がいかに遅いのかを調べてみます(笑)
今後ともどうぞよろしくお願いします。