三平方の定理の証明は、紀元前からあらゆる人があらゆる方法で考え出してきました。
この記事では、外接円と直角二等辺三角形を利用した証明方法を、現役数学教員がわかりやすく解説します。
今回の証明は、20世紀後半~21世紀にベトナム人の Bui Quang Tuan によって考案されたもので、その人物についても簡単に触れていきます。
最近の証明方法ということもあり、複雑で普通は気づけないような方法。
この記事を読んで、その難しさを味わってみましょう。
- Bui Quang Tuan について
- 外接円と直角二等辺三角形を利用した証明方法について
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Bui Quang Tuan について
今回の証明方法は、ベトナム人の Bui Quang Tuan(1962~)によって考案されたもので、彼は自身のサイトやFacebook、Twitterで数学の面白さを発信しています。
彼のサイトのプロフィールには、次のようなキャッチフレーズが書かれています。
To discover new interesting: first observe all strange, abnormal but then make them familiar, normal
MTG (My Triangle Geometry)~About より引用
Bui Quang Tuan は、今回紹介する方法以外にも、三平方の定理の証明をいくつか考案していて、三平方の定理の証明を100種類以上まとめている英字サイトに採用されています。
その中でも、彼のFacebookのアイコンにもなっている、三平方の定理の証明方法を1つ解説していきます。
外接円と直角二等辺三角形を利用した証明
直角三角形の外部に図をどんどん書き足していく方法です。
図1のように、$~a < b~$である直角三角形$~ABC~$の外接円 $~O~$を描く。
次に、直線$~AC~$上に、$~CD=a~$となるような$~D~$を図2のようにとる。
このとき、$~\triangle BCD~$は直角二等辺三角形となる。
さらに、図3のように、直線$~DB~$と円$~O~$の$~B~$ではない交点を$~E~$とし、さらに直線$~AE~$と直線$~BC~$の交点を$~F~$とする。
このとき、$~\angle BEF=90^{\circ}~$であり、対頂角から$~\angle BEF=45^{\circ}~$なので、$~\triangle BEF~$も直角二等辺三角形となる。
また、$~\angle BCA=90^{\circ}~$であることから、$~\triangle ACF~$も直角二等辺三角形である。
四角形$~AFBD~$の面積$~S~$は、図4から
\begin{align*} S&=\triangle BCD+\triangle ACF \\ &=\frac{a^2}{2}+\frac{b^2}{2}~~~~\cdots ① \end{align*}
と表せる。
ところで、$~\triangle EFD~$と$~\triangle EBA~$において、
\begin{align*} EF&=EB ~~~~\cdots ②\\ \angle FED&=\angle BEA=90^{\circ} ~~~~\cdots ③\\ \end{align*}
であり、$~\triangle AED~$も直角二等辺三角形であることから、
ED=EA~~~~\cdots ④
となるため、$②$~$④$より二辺夾角相等で$~\triangle EFD \equiv \triangle EBA~$とわかる。
よって、
FD=BA=c
が求まる。
さらに、$~DE \perp AF~,~FC \perp AD~$であることから、$~DE~$と$~FC~$の交点$~B~$は、$~\triangle ADF~$の垂心である。
したがって、直線$~AB~$と$~FD~$の交点を $~G~$とすると、$~AG \perp FD~$である。
以上より、四角形$~AFBD~$の面積$~S~$は、
\begin{align*} S&=\triangle FBA+\triangle DBA \\ \\ &=c \cdot FG \cdot \frac{1}{2}+c \cdot DG \cdot \frac{1}{2} \\ \\ &=\frac{c}{2}(FG+DG) \\ \\ &=\frac{c}{2}\cdot c \\ \\ &=\frac{c^2}{2} ~~~\cdots ⑤ \end{align*}
と表せる。
$①~,~⑤~$より、
\begin{align*} \frac{a^2}{2}+\frac{b^2}{2}&=\frac{c^2}{2} \\ \\ a^2+b^2&=c^2 \end{align*}
が示された。■
外接円と2つの直角二等辺三角形を追加することで、いろいろな図形の性質が噛み合い、三平方の定理を証明することができました。
直角二等辺三角形を2つ追加したつもりが、実は4つもあり、合同な図形に垂心‥‥。化学反応し過ぎ!
Bui Quang Tuanという人物は、他にもトリッキーな証明方法や数に関する面白い性質をたくさん発信しているよ。
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