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1/81 や 1/9801 の謎~ 8 や 98 が出てこない理由を解説!

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81分の1のアイキャッチ

 小数にすると、以下のように、興味深い数列が並ぶ $~\displaystyle \frac{1}{81}~$ や $~\displaystyle \frac{1}{9801}~$

\frac{1}{81}=0.\dot{0}1234567\dot{9}
\frac{1}{9801}=0.\underbrace{\dot{0}0}\underbrace{01}\underbrace{02}\cdots \underbrace{96}\underbrace{97}\underbrace{9\dot{9}}

 登場する数字を見てみると、自然数の列が$~0~$や$~00~$から並び、$~8~$や$~98~$を除いて数が循環していることがわかります。

  • なぜ自然数がきれいに並ぶのか?
  • なぜきれいな並びの中で除外される数が出てくるのか?

 以上の2点の疑問を現役の数学教員が解説します。

 すべての鍵を握るのは、分母である$~81~$や$~9801~$に共通する数の性質でした。

この記事を読んでわかること

1/81 や 1/9801 に隠れた謎

1/81 や 1/9801 の小数の値

 まずは、実際に計算してみましょう。

 この記事の冒頭にもある通り、2つの分数は以下のように小数に直せます。

1/81 や 1/9801 の小数
\frac{1}{81}=0.012345679~~012345679~~01 \cdots

 $~\displaystyle \frac{1}{81}~$を小数にすると、$~0~$ から $~9~$ までの整数が順番に並ぶ。($~8~$を除く)

\frac{1}{9801}=0.000102 \cdots 969799~~000102\cdots969799~~0001 \cdots

 $~\displaystyle \frac{1}{9801}~$を小数にすると、$~00~$ から $~99~$ までの整数(2ケタ表示)が順番に並ぶ。($~98~$を除く)

 ここで、以下の2点が疑問として出てきます。

  • なぜ整数が順番に並んでいくのか?
  • なぜ8や98だけが除外されてしまうのか?

 この2つの疑問点を解決する鍵は$~81~$と$~9801~$の共通点にありました。

81 と 9801 の共通点

 $~81~$と$~9801~$といった2つの数はどこから出てきているのでしょうか?
 それぞれの整数を素因数分解してみましょう。

\begin{align*}
 81&=3^4 \\
 9801&=3^4 \cdot 11^2
 \end{align*}

 このように、どちらも$~3^4~$を含んでいるのがわかります。
 また、どちらも平方数であることに着目すると、

 \begin{align*}
 81&=(3^2)^2=9^2 \\
 9801&=(3^2 \cdot 11)^2=99^2
 \end{align*}

の形にでき、平方数の中でも

各ケタがすべて 9 で表される数の2乗

ということがわかります。

  この共通点をヒントに、$~\displaystyle \frac{1}{81}~$ や $~\displaystyle \frac{1}{9801}~$の謎を解明していきましょう。

1/81 や 1/9801 の謎の解明

1/81 の謎の解明

 まずは $~\displaystyle \frac{1}{81}~$ に焦点を当てて証明していきます。

1/81 が 0123‥‥ と並ぶことの証明

 $~\displaystyle \frac{1}{81}~$ を式変形していく。

\begin{align*}
&~~~~~\displaystyle \frac{1}{81}  \\
\\
&=\frac{1}{9^2}  \\
\\
&=\left( \frac{1}{9} \right)^2   \\ \\
&=(0.111 \cdots)^2  \\ \\
&=\left( \frac{1}{10}+\frac{1}{100}+\frac{1}{1000}+\cdots \right)^2   \\ \\
&=\left\{ \left(\frac{1}{10}\right) +\left(\frac{1}{10}\right)^2+\left(\frac{1}{10}\right)^3+\cdots \right\}^2
\end{align*}

 ここで$~x=\displaystyle \frac{1}{10}~$とおき、2乗の展開公式を使うと、

\begin{align*}
&~~~(x+x^2+x^3+\cdots)^2 \\
&=x^2+x^4+x^6+\cdots+2x^3+2x^4+2x^5+\cdots+2x^5+2x^6+2x^7+\cdots
\\
&=x^2+2x^3+3x^4+4x^5+5x^6+\cdots  \\
\end{align*}

となるため、

\begin{align*}
&\displaystyle \frac{1}{81}  \\ \\
&=\left( \frac{1}{10} \right)^2+2\left( \frac{1}{10} \right)^3+3\left( \frac{1}{10} \right)^4+4\left( \frac{1}{10} \right)^5+\cdots  \\
\\
&=0.01+0.002+0.0003+0.00004+0.000005+\cdots \\ \\
&=0.01  \\
&+0.002 \\
&+0.0003  \\
&+0.00004  \\
&+0.000005  \\
&+0.0000006  \\
&+0.00000007 \\
&+0.000000008   \\
&+0.0000000009  \\
&+0.00000000010   \\
&+0.000000000011  +\cdots \\
\\
&=0.012345679012 \cdots  \\
\end{align*}

がわかり、$~0~$から順に数字が並びつつ、繰り上がりによって$~8~$が登場しないことが示された。

 以上のことからわかる通り、 $~\displaystyle \frac{1}{81}~$の謎は以下のように解明されました。

  • 整数が並ぶのは、 $~\displaystyle \left( \frac{1}{9} \right)^2=(0.11111 \cdots)^2~$ の影響
  • 8が省略されるのは、繰り上がりの影響

1/9801 の謎の解明

  $~\displaystyle \frac{1}{81}~$と同様の手法になりますが、 $~\displaystyle \frac{1}{9801}~$についても見てみましょう。

1/9801 が 00 01 02 03‥‥ と並ぶことの証明

 $~\displaystyle \frac{1}{9801}~$ を式変形していく。

\begin{align*}
&~~~~~\displaystyle \frac{1}{9801}  \\
\\
&=\frac{1}{99^2}  \\
\\
&=\left( \frac{1}{99} \right)^2   \\ \\
&=(0.010101 \cdots)^2  \\ \\
&=\left( \frac{1}{100}+\frac{1}{10000}+\frac{1}{1000000}+\cdots \right)^2   \\ \\
&=\left\{ \left(\frac{1}{100}\right) +\left(\frac{1}{100}\right)^2+\left(\frac{1}{100}\right)^3+\cdots \right\}^2
\end{align*}

 ここで$~x=\displaystyle \frac{1}{100}~$とおき、2乗の展開公式を使うと、

\begin{align*}
&~~~(x+x^2+x^3+\cdots)^2 \\
&=x^2+x^4+x^6+\cdots+2x^3+2x^4+2x^5+\cdots+2x^5+2x^6+2x^7+\cdots
\\
&=x^2+2x^3+3x^4+4x^5+5x^6+\cdots  \\
\end{align*}

となるため、

\begin{align*}
&\displaystyle \frac{1}{9801}  \\ \\
&=\left( \frac{1}{100} \right)^2+2\left( \frac{1}{100} \right)^3+3\left( \frac{1}{100} \right)^4+4\left( \frac{1}{10} \right)^5+\cdots  \\
\\
&=0.0001+0.000002+0.00000003+0.0000000004+\cdots  \\
\\
&=0.0001 \\
&\cdots   \\
&+0.0000 \cdots 96 \\
&+0.0000 \cdots 0097 \\
&+0.0000 \cdots 000098  \\
&+0.0000 \cdots 00000099   \\
&+0.0000 \cdots 0000000100   \\
&+0.0000 \cdots 000000000101 +\cdots  \\
\\ \\
&=0.0001 \cdots 969799000102\cdots
\end{align*}

がわかり、$~00~$から順に数字が並びつつ、繰り上がりによって$~98~$が登場しないことが示された。

 少し複雑にはなりましたが、 $~\displaystyle \frac{1}{9801}~$の謎は以下のように解明されました。

  • 整数が並ぶのは、 $~\displaystyle \left( \frac{1}{99} \right)^2=(0.010101 \cdots)^2~$ の影響
  • 98が省略されるのは、繰り上がりの影響

1/81 や 1/9801 と同様の分数

1/81 と同じ性質を持つ分数

 各桁の数がすべて $~9~$ で表される数の2乗を分母に持つ単位分数であれば、同じ性質を持つ分数は無限に作れます。

1/81 と同じ性質を持つ分数
\frac{1}{81}=\frac{1}{9^2}=0.\dot{0}1234567\dot{9}
\frac{1}{9801}=\frac{1}{99^2}=0.\dot{0}0~01~02 \cdots 96~97~9\dot{9}
\frac{1}{998001}=\frac{1}{999^2}=0.\dot{0}00~001~002 \cdots 996~997~99\dot{9}
\frac{1}{99980001}=\frac{1}{9999^2}=0.\dot{0}000~0001~0002 \cdots 9996~9997~999\dot{9}

 いずれも循環節の最後から2個目の数($~8~,~98~,~998~,~9998~$)は登場しないので注意しましょう。

1/81 と同じ性質を持つ分数の一般化

 最後に一般化しておきます。

1/81 と同じ性質を持つ分数の一般化

 $~\displaystyle \frac{1}{(10^n-1)^2}~$ すなわち、 $~\displaystyle \frac{1}{\underbrace{99\cdots 9}_{n個}}~$ を小数に直すと、

0.\underbrace{\dot{0}\cdots 00}_{nケタ}~\underbrace{0\cdots 01}_{nケタ} ~\cdots~ \underbrace{9\cdots 97}_{nケタ}~~\underbrace{9\cdots 9\dot{9}}_{nケタ}

となり、$~\displaystyle \underbrace{9\cdots 98}_{nケタ}~$は登場しない。

 一般化すると難しいので、これまでの具体例で納得してもらえればと思います。

まとめ

 $~\displaystyle \frac{1}{81}~$ や $~\displaystyle \frac{1}{9801}~$を小数にしたときの数の並びについて解説しました。

  • 小数に直すと、自然数の列が規則的に並んでいく。
  • $~\displaystyle \frac{1}{81}~$なら$~8~$が、 $~\displaystyle \frac{1}{9801}~$なら$~98~$が登場しない。
  • 以上2つは、分母が$~9^2~$や$~99^2~$であることが原因。

偶然かと思ったけど、しっかりとした根拠があったんだね。

$~8~$も含めて$~0.\dot{0}12345678\dot{9}~$としたければ分数を$~\displaystyle \frac{13717421}{1111111111}~$とする必要があるよ。
数字が汚い‥‥。


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