単位分数分解(証明編)

数学雑学式と計算数学雑学

すべての分数は、単位分数(分子が\(~1~\)の分数)の和に分解でき、その方法は無限通りです。この記事では、それらについての証明を行います。

Ⅰ 単位分数分解とは?

 前記事である「単位分数分解(方法編)」で述べた定義や例、注意点についておさらいしておきます。

単位分数分解

 \(~1~\)より小さい分数を、異なる単位分数(分子が\(~1~\)の分数)の和で表すことを単位分数分解という。

 例を2つほど挙げると、
\begin{align}
\frac{5}{6}&=\frac{1}{2}+\frac{1}{3} ~~~~\cdots ① \\
\\
\frac{1}{2}&=\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{20} ~~~~\cdots ②
\end{align}
というような式変形となります。
 
 ここで、注意点を2つ述べておきます。それは

  • 単位分数分解は1通りではない。
  • 同じ単位分数は使えない。

です。
 
 1つ目の注意点については、先ほどの\(②\)の式を\(①\)に代入することで、
\begin{equation}
\frac{5}{6}=\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{20}+\frac{1}{3}
\end{equation}
と2通りで表せてしまうことに気付けるでしょう。
 実を言うと、単位分数分解の方法は無限通りあります。(→「単位分数分解(証明編)」)
 
 2つめの注意点については、例えば\(~\displaystyle \frac{11}{12}~\)を単位分数分解するときに、
\begin{equation}
\frac{11}{12}=\frac{1}{3}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}
\end{equation}
としても、結局は
\begin{equation}
\frac{11}{12}=\frac{2}{3}+\frac{1}{4}
\end{equation}
と即時にまとめられてしまうため、単位分数とは言い難いです。※

※もちろん、本記事における「単位分数分解」の定義に従ったことなので、\(~\displaystyle \frac{2}{n}=\frac{1}{n}+\frac{1}{n}~\)も単位分数分解の1種として定義する場合もあります。


Ⅱ 命題と証明

 前記事で証明していないことは以下の2つの命題です。

単位分数分解に関する命題

(1) すべての分数は単位分数分解できる。

(2) 単位分数分解の方法は無限通りある。

 この2つの命題を、同時に証明していきます。

証明

 \(~m~,~n~\)を自然数として、任意の分数を\(~\displaystyle \frac{n}{m}~\)とおく。
 
 分母\(~m~\)を固定し、\(~\displaystyle \frac{n}{m}~\)が異なる単位分数の和として表されることを数学的帰納法で示す。
 
 \(~n=1~\)のときを考える。
 \(~\displaystyle \frac{1}{m}~\)を式変形すると、
\begin{align}
\frac{1}{m}&=\frac{m+1}{m(m+1)} \\
\\
&=\frac{m}{m(m+1)}+\frac{1}{m(m+1)} \\
\\
&=\frac{1}{m+1}+\frac{1}{m(m+1)}~~~~\cdots ①
\end{align}
となり、\(~m > 1~\)で\(~m+1 < m(m+1)~\)となるため、異なる単位分数の和として表される。

 \(~m=1~\)のときについては、\(①\)より
\begin{equation}
\frac{1}{1}=\frac{1}{2}+\frac{1}{2}~~~~\cdots ②
\end{equation}
となってしまうが、\(①\)に\(~m=2~\)を代入すると、
\begin{equation}
\frac{1}{2}=\frac{1}{3}+\frac{1}{6}~~~~\cdots ③
\end{equation}
であり、\(③\)を\(②\)の2つめの\(~\displaystyle \frac{1}{2}~\)に代入することで、
\begin{equation}
\frac{1}{1}=\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{6}
\end{equation}
となり、異なる単位分数の和として表される。

 
 以上より、\(~n=1~\)のとき、すなわち、すべての\(~m~\)について\(~\displaystyle \frac{1}{m}~\)が異なる単位分数の和として表されることが言えた。
 
\(~n=k~\)のとき、すなわち、\(~\displaystyle \frac{k}{m}~\)が異なる単位分数の和として表されることを仮定する。ここで、\(~n=k+1~\)のときを考える。
\begin{equation}
\frac{k+1}{m}=\frac{1}{m}+\frac{k}{m}
\end{equation}
より、\(①\)を代入することで、
\begin{equation}
\frac{k+1}{m}=\frac{1}{m+1}+\frac{1}{m(m+1)}+\frac{k}{m}~~~~\cdots④
\end{equation}
となる。
 
 仮定より、\(~\displaystyle \frac{k}{m}~\)は異なる単位分数の和として表されるが、その中に\(~\displaystyle \frac{1}{m+1}~\)や\(~\displaystyle \frac{1}{m(m+1)}~\)が含まれていなければ、\(④\)により\(~n=k+1~\)のときも異なる単位分数の和として表されることが言える。
 
 しかし、\(~\displaystyle \frac{k}{m}~\)に例えば\(~\displaystyle \frac{1}{m+1}~\)が含まれている場合、すなわち

\begin{equation}
\frac{k}{m}=\frac{1}{m+1}+\frac{1}{a_1}+\cdots+\frac{1}{a_\ell} \\
(~a_1~,\cdots,a_\ell~は~m+1~以外のそれぞれ異なる自然数)
\end{equation}

\begin{align}
\frac{k}{m}&=\frac{1}{m+1}+\frac{1}{a_1}+\cdots+\frac{1}{a_\ell} \\
&(~a_1~,\cdots,a_\ell~は~m+1~以外の\\
&~~~~~~~~~~~~それぞれ異なる自然数)
\end{align}

と表され、この式を\(④\)に代入して、

\begin{equation}
\frac{k+1}{m}=\frac{1}{m+1}+\frac{1}{m(m+1)}+\frac{1}{m+1}+\frac{1}{a_1}+\cdots+\frac{1}{a_\ell}~~~~\cdots⑤
\end{equation}

\begin{align}
\frac{k+1}{m}&=\frac{1}{m+1}+\frac{1}{m(m+1)} \\
&~~~~~+\frac{1}{m+1}+\frac{1}{a_1}+\cdots+\frac{1}{a_\ell}~~\cdots⑤
\end{align}

となる。
 ここで、\(~\displaystyle \frac{1}{m+1}~\)の重複を避けるべく、\(①\)の\(~m~\)に\(~m+1~\)を適用すると、

\begin{align}
\frac{1}{m+1}&=\frac{1}{(m+1)+1}+\frac{1}{(m+1)(m+1+1)} \\
\\
&=\frac{1}{m+2}+\frac{1}{(m+1)(m+2)}~~~~\cdots ⑥
\end{align}

\begin{align}
&~~~\frac{1}{m+1} \\
\\
&=\frac{1}{(m+1)+1}+\frac{1}{(m+1)(m+1+1)} \\
\\
&=\frac{1}{m+2}+\frac{1}{(m+1)(m+2)}~~~~\cdots ⑥
\end{align}

なので、\(⑥\)を\(⑤\)に代入して、

\begin{equation}
\frac{k+1}{m}=\frac{1}{m+1}+\frac{1}{m(m+1)}+\frac{1}{m+2}+\frac{1}{(m+1)(m+2)}+\frac{1}{a_1}+\cdots+\frac{1}{a_\ell}~~~~\cdots⑦
\end{equation}

\begin{align}
\frac{k+1}{m}&=\frac{1}{m+1}+\frac{1}{m(m+1)}+\frac{1}{m+2} \\
&~~~~~+\frac{1}{(m+1)(m+2)} \\
&~~~~~~~~~~+\frac{1}{a_1}+\cdots+\frac{1}{a_\ell}~~\cdots⑦
\end{align}

と表せる。
 
 \(⑦\)の右辺に再度重複する単位分数があれば、\(⑥\)のような式をまた作って代入していくことで、いずれは異なる単位分数の和で右辺を表すことができる。
 
 以上より、\(~n=k+1~\)のとき、すなわち、\(~\displaystyle \frac{k+1}{m}~\)が異なる単位分数の和として表されることが言えた。
 
 したがって数学的帰納法より、命題(1)は示された。\(~~~\blacksquare~\)


 また、異なる単位分数の和で表された後も、\(⑥\)のような式を作って、\(⑦\)のような式に代入していけば、単位分数をより細かくした式が無限に生成されるため、命題(2)も示されたことになる。\(~~~\blacksquare~\)


Ⅲ 証明の内容を具体例であてはめると

 証明が文字だらけでわかりにくかったので、分母が\(~3~~(m=3)~\)のときの単位分数分解を、この証明の流れを使って考えてみましょう。

 \(~m=3~\)と固定する。すなわち、\(~\displaystyle \frac{n}{3}~\)の単位分数分解を考える。
 
 \(~n=1~\)のときを考える。
 \(①\)より、
\begin{align}
\frac{1}{3}&=\frac{1}{3+1}+\frac{1}{3 \cdot (3+1)} \\
\\
&=\frac{1}{4}+\frac{1}{12}~~~\cdots ⑧
\end{align}
となるため、異なる単位分数の和として表された。
 
\(~\displaystyle \frac{1}{m}~\)が異なる単位分数の和として表されたので、\(~n=2~\)のときを考える。
\begin{equation}
\frac{2}{3}=\frac{1}{3}+\frac{1}{3}
\end{equation}
より、\(⑧\)を右の\(~\displaystyle \frac{1}{3}~\)に代入して、
\begin{equation}
\frac{2}{3}=\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{12}~~~~\cdots ⑨
\end{equation}
となるため、異なる単位分数の和として表された。
 
\(~\displaystyle \frac{2}{m}~\)が異なる単位分数の和として表されたので、\(~n=3~\)のときを考える。
\begin{equation}
\frac{3}{3}=\frac{1}{3}+\frac{2}{3}
\end{equation}
より、\(⑨\)を代入すると、
\begin{equation}
\frac{3}{3}=\frac{1}{3}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{12}
\end{equation}
となり、\(~\displaystyle \frac{1}{3}~\)が重複している。
 そこで、2つめの\(~\displaystyle \frac{1}{3}~\)に\(⑧\)を代入すると、
\begin{equation}
\frac{3}{3}=\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{12}+\frac{1}{4}+\frac{1}{12}~~~\cdots ⑩
\end{equation}
であり、今度は\(~\displaystyle \frac{1}{3}~\)が重複している。
 \(①\)の\(~m~\)に\(~4~,~12~\)をそれぞれ適用すると、
\begin{align}
\frac{1}{4}&=\frac{1}{5}+\frac{1}{20} \\
\\
\frac{1}{12}&=\frac{1}{13}+\frac{1}{156}
\end{align}
なので、これらを\(⑩\)に代入すると、
\begin{equation}
\frac{3}{3}=\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{12}+\frac{1}{5}+\frac{1}{20}+\frac{1}{13}+\frac{1}{156}~~~\cdots ⑪
\end{equation}
となるため、異なる単位分数の和として表された。
 
 これを\(~n=4~,~n=5~,\cdots~\)と繰り返していくのが、命題(1)の数学的帰納法による証明の内容である。


 \(①\)の\(~m~\)に\(~5~\)を適用すると、
\begin{equation}
\frac{1}{5}=\frac{1}{6}+\frac{1}{30}
\end{equation}
なので、これを\(⑪\)に代入すると、

\begin{equation}
\frac{3}{3}=\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{12}+\frac{1}{6}+\frac{1}{30}+\frac{1}{20}+\frac{1}{13}+\frac{1}{156}
\end{equation}

\begin{align}
\frac{3}{3}&=\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{12}+\frac{1}{6}+\frac{1}{30} \\
&~~~~~~~~~~~~~~~~~~+\frac{1}{20}+\frac{1}{13}+\frac{1}{156}
\end{align}

となり、単位分数をより細かくした式が生成された。
 
 これを無限に行えば、無限通りの分解できるというのが、命題(2)の証明の内容である。

 具体的な数で考えると、証明の中身がわかりやすかったですね。
 
 ただ、同時にこの方法で単位分数分解するのは大変であることもわかりました。
 実際、前回の「単位分数分解(方法編)」を使えば、
\begin{equation}
\frac{3}{3}=\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{6}
\end{equation}
と3つの項だけで表せます。


 とにかく証明は大変ということがわかったよ!
ふくすけ笑顔
こういうときにも数学的帰納法が有用であることがわかったね!

◇参考文献等
・志賀浩二(2014)『数学の流れ30講(上)ー16世紀までー』,pp.20-24,朝倉書店.

数学雑学式と計算数学雑学

Posted by Fuku