数学史1-1 ~数学のはじまり~

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Ⅰ 数学はいつ生まれた?
いつから数学という学問は存在するのか?
そんな疑問を抱いたことはあるでしょうか?
数学に限らず、どんな物事においても、「始まり」というものが必ずあり、その「始まり」から様々な過程を経て現在に至るわけです。
では、幼いころのことを思い出して、1番最初に学んだ数学的なことは何でしょうか?
小学校1年生で学ぶ\(~1+1=2~\)・・・ではなく、お風呂で\(~1~\)から\(~10~\)まで数えたり、動物園で象が大きいと感じたり、積み木の形の違いに気付いたりと、小学校以前、物によっては幼稚園以前から数学的概念を認知していたはずです。
昔の人も同様で、今から30万年前頃、火の使用と同程度に早い段階から、
- 1匹の狼と多数の狼の違い
- 小魚と鯨の大きさの違い
- 月と木の形の違い
に気付くところから始まっていたと考えられています。
多様なものが存在する世界から、抽象的に同じものや似たものの存在の気づき始めたのが、科学・数学の原点と言えるでしょう。
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Ⅱ 数字はないものの・・・
今では当たり前のように扱っている数字。当然、30万年前には「1」すらありませんでした。
そこで、狼が4匹いることを誰かに伝えたければ、
というように表していました。
もちろん、片手で5、両手で10、両足で20までしか表せないので、それを超えるような数の場合は、石を山積みにしたり、紐に結び目をつけたりして、大きな数を表していました。(下図はインカ文明で使っていた「キープ」と呼ばれる、結び目のあるひもの束)

ちなみに、両手で10という数を表すことが、現在使われている10進法表記に繋がっています。
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Ⅲ 数えた結果はどう記録する?
指や石で数えることは、その場では有効であるものの、その数の情報を保存できないことにあります。
そこで、棒や骨片に刻み目をつけて数を記録していました。
その中で、数学的に最も有名なのはアフリカのイシャンゴ遺跡で見つかったヒヒの腓骨です。(「イシャンゴの骨」)

3行に渡って線(数)が刻まれており、それぞれに数学的な意味があるのではないかと研究されています。
他にもチェコや中央ヨーロッパでも数を記録した跡が見つかっており、月の周期や天文観察、カレンダーとして使われていたのではないかと推測されています。
Ⅳ まとめ
数の概念が文明の生まれる前から考えられていたことがわかりました。
現在の\(~10~\)で1つ位が上がるというのも人間の手足の指の本数からくる必然であり、昔の人も指折り数えたうえで骨などの丈夫な物に記録していたようです。
次回からは、「数える」ということから発展していった各地の文明を覗いてみましょう。


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◇参考文献等
・上野健爾・三浦信夫監訳,中根美知代・高橋秀裕・林知宏・大谷卓史・佐藤賢一・東慎一郎・中澤聡訳(2009)『カッツ 数学の歴史』,pp.1-7,共立出版.
・中村滋・室井和男(2015)『数学史ーー数学5000年の歩み』,pp.9-13,共立出版.
・志賀浩二(2014)『数学の流れ30講(上)ー16世紀までー』,pp.1-3,朝倉書店.
・三浦伸夫・三宅克哉監訳,久村典子訳(2018)『メルツバッハ&ボイヤー 数学の歴史Ⅰー数学の萌芽から17世紀前期までー』,pp.1-3,朝倉書店.
・中村滋(2019)『ずかん 数字』,pp.20-27,技術評論社.
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