名言「学問に王道なし」で知られるギリシャの数学者ユークリッド(エウクレイデス)。
彼の著作『原論』は、数学の基礎を築いた重要な書物として知られており、今の数学へとつながっています。
この記事では、ユークリッドの生涯と功績、そして「学問に王道なし」という言葉に込められた彼の学問への姿勢について詳しく解説!
ユークリッドは学生だろうと王だろうと容赦しませんでした。
時代 | 紀元前330年頃〜紀元前275年頃 |
場所 | ギリシャ、アレクサンドリア |
ユークリッドの生涯
ユークリッド(Euclid , 紀元前330年頃〜紀元前275年頃)は、ギリシャ時代からヘレニズム時代の過渡期を生きた数学者です。
ラテン語読みから、エウクレイデス(Eucleides)とも呼ばれています。

(出典:See page for author, Public domain, via Wikimedia Commons)
ユークリッドの年譜
ティルスで生まれたとされる
現レバノンのスールで誕生したと、後のアラビア人が述べている。
ダマスカスに住む
こちらもアラビア人による伝承で、ダマスカスに住んでいたとされる。
アテネで教育を受ける
アカデメイアで学んだかは不明だが、プラトンの弟子たちと学んだと考えられている。
アレクサンドリアへ引っ越す
プトレマイオス1世の招聘に応じ、ムセイオンで研究や教育に携わる。
多くの数学書を書く。
『原論』以外に現存するのが4冊、失われてしまったものが3冊ある。
アレクサンドリアで死亡。
ユークリッドの活動場所
ユークリッドはマケドニアによる支配下のティルスで生まれ、近くのダマスカスでしばらくの間過ごしたと伝わっています。
その後、プラトンの弟子たちと共にアテネで学んだと考えられており、そこで一定の名声を得ました。
彼の有能さを耳にしたエジプトのプトレマイオス1世が、周辺地域の有名な科学者をアレクサンドリアに集めるときにユークリッドも招きました。
ユークリッドはアレクサンドリアにあるムセイオンで研究活動や教育活動をしながら、この地で最期まで過ごしたとされています。
功績: 『原論』を執筆した
ユークリッドの最大の功績は、数学書『原論』の執筆です。
ユークリッドの『原論』は、当時までに知られていたギリシャ由来の数学的知識を体系的にまとめたもので、特に幾何学の分野で重要な役割を果たしました。

その後の数学の土台となった
『原論』は公理や公準、定義に始まり、命題とそれに対する証明がセットになって並んでいるだけの数学書です。
しかし、与えられた命題に対して、既知の知識を使って証明していくという『原論』の流れにより、数学の体系的な性質が確立したのでした。

『原論』は聖書の次に版を重ねている書物と言われるほど世界に流通し、現在の数学書や教科書にもその形式が引き継がれています。
ユークリッドが数学という学問の姿を作ったと言えるでしょう。
他の数学書をはるかに上回るクオリティ
ユークリッドの『原論』は、それまでの数学が全てまとめられているだけでなく、その隙のない論理性により一躍有名になりました。
そのため、ユークリッド以前に書かれた数学書は、その内容が『原論』に網羅されているという理由で写本の作成がされず、現在にまで残っていません。
それほどまでに『原論』が優れた数学書であり、他の数学書を歴史から消してしまうことになったのです。

エピソード:学問に王道なし
ギリシャ数学を理解し、それらを体系的にまとめるほどユークリッドは数学に時間をかけました。
そんな彼だからこそ言えるセリフが「学問に王道なし」です。
プトレマイオス王の家庭教師
プトレマイオス王はユークリッドを家庭教師としても招き、その中で次のようなやり取りがあったとされています。

君が書いた『原論』よりも短くて簡単に幾何学を学ぶ道はないの?
(出典:Louvre Museum, Public domain, via Wikimedia Commons)



幾何学に王道なし!
アレクサンドリアを治める王に対して、ユークリッドは学問に近道がなく、地道な努力が必要であることを諫言したのでした。
この言葉が転じて「学問に王道なし」となり、ユークリッドの名言として知られています。
約50年ほど前にも、これと同様のエピソードが、アレクサンドロス大王とメナイクモスの間にもあり、数奇な関係となっています。




学問への真摯な姿勢
「学問に王道なし」からもわかるユークリッドの学問への姿勢は、アレクサンドリアの学校におけるエピソードにも表れています。



ユークリッド先生、幾何学なんて勉強してどんな利益があるんでしょうか?



奴隷君、あの男に3オボロス(今の日本円で300円くらい)をあげてやってくれ。彼は勉強したからにはお金が欲しいようだから。
このように学生を皮肉交じりに咎め、教室から追い出したとも言われています。
数学を学ぶことで人は考えることに熟達し、この世の真理すらも求められるようになるということに、ユークリッドは数学を学ぶ価値を見出していました。
まとめ
数学の在り方を築いた、ヘレニズム時代初期の数学者ユークリッドについて解説しました。
- 著作『原論』を通じて、現在にもつながる数学の基礎を築き上げた。
- 名言「学問に王道なし」にユークリッドの学問への姿勢が表れている。



『原論』の影響力すごいね~。



『原論』が有名すぎて、ユークリッドは名前で呼ばれず、「原論の著者」と呼ばれていたようだよ。
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