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【数学史2-2】古代エジプトの数字は絵文字!読み方や由来、表記方法を解説!

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 象形文字を使っていたエジプト文明。

 数字についても例外ではなく、数に関連する物を基にした絵文字が使われていました。

 この記事では、全7種類の数字の読み方や由来、さらにはどのように数を表していたのかを解説しています。

この記事を読んでわかること
  • 10進法に基づいて、7種類のヒエログリフ(象形文字)が使われた。
  • 大きな数を表す場合は、数字をたくさん書く必要がある。
  • エジプト文明の役人は、ヒエログリフとヒエラティックを使い分けた。
この記事で主に扱っている時代と場所
時代B.C.4000年代後半~B.C.1650年頃
場所エジプト
この記事を読んでわかること

エジプト文明で使われた象形文字

 エジプトでは、紀元前4000年頃から象形文字が使われ始め、時代を経るにつれて次の3つに分かれました。

  • ヒエログリフ(神聖文字、聖刻文字) 紀元前4000年頃~紀元前600年頃
  • ヒエラティック(神官文字) 紀元前3000年頃~紀元前600年頃
  • デモティック(民衆文字) 紀元前660年頃~紀元後5世紀頃

ヒエログリフとヒエラティックは役人のための文字

 ヒエログリフは、絵のような文字で、神殿や石碑、墓などに刻まれました。

<図1> 刻まれたヒエログリフ
<図1> 刻まれたヒエログリフ
(出典:A☮ineko, CC BY-SA 1.0, via Wikimedia Commons)

 ヒエラティックは、ヒエログリフを簡略化した文字で、パピルスに書きやすい書体となっています。

<図2> パピルスに記されたヒエラティック
<図2> パピルスに記されたヒエラティック
(出典:One dead president, David Liam Moran, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 ヒエログリフやヒエラティックは、ほぼ同時代に並行して発展していったものの、当時の役人階級のみしか使えませんでした。

 神や死者に捧げるような神聖な文字がヒエログリフ、土地や物資の分配などの情報をまとめるために役人(神官や書記)が使った文字がヒエラティックです。

デモティックは民衆のための文字

 紀元前660年頃に使われ始めたデモティックは、ヒエラティックをさらに簡略化したような文字で、役人だけでなく民衆も使うようになりました。

<図3> ロゼッタ・ストーンに刻まれたデモティック
<図3> ロゼッタ・ストーンに刻まれたデモティック
(出典:the free media repository, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 墓石等に刻んだり、パピルスに書いたりするときにもデモティックは使われ始め、ヒエログリフとヒエラティックは徐々に衰退していきました。


  以上の3つの文字をまとめると、表4のようになります。

<表4> エジプト文明の3種類の象形文字
ヒエログリフヒエラティックデモティック
年代B.C.4000頃~B.C.600頃B.C.3000頃~B.C.600頃B.C.660年頃~A.D.5世紀頃
特徴絵文字のような字ヒエログリフを簡略化ヒエラティックを簡略化
使用者役人(神官や書記)役人(神官や書記)役人と民衆
使われ方神殿や石碑に刻むパピルスに書く石に刻まれたり、
パピルスに書かれたり

 ちなみに、B.C.1650年頃に書かれた『リンド・パピルス』もヒエラティックで書かれています。

ヒエログリフにおける数の表し方

 古代エジプトでは、10進法に基づいて、10のべき乗ごとの数字が用意されました。
 土地の面積や、神に捧げた動物の数を表すために数字が必要だったのです。

ヒエログリフの数字

 まずは最も絵に近いヒエログリフにおける数字の表記を見てみます。

<表5> ヒエログリフの数字(※由来は諸説あり)
$10$のべき乗数字読み方絵のモチーフ※モチーフとなった理由
$10^0~(=1)$数字1ウア縦棒1本縦の線1本
$10^1$数字10メジュカゴの取っ手カゴには卵が10個入るから。
$10^2$数字100シュト巻いたロープ100歩分の長さがあるから。
$10^3$数字1000カア蓮の花ナイル川の畔に、無数に咲いていたから。
$10^4$数字10000ジェパァナイル川の畔に無数に生え、あるときに一斉に芽を出すから。
$10^5$数字100000ヘフェヌオタマジャクシ常に大量にかたまって見られるから。
$10^6$数字1000000ヘフヘフ神時間という概念を司るエジプトの神で、無限を意味するから。


  $~1~$や$~10~$、$~100~$あたりまでは書きやすそうですが、$~1000~$を表す蓮の花や$~1000000~$を表す神様は書くのが大変そうですね。
 
 また、あくまで絵によって数字を表しているので、書く人によって違いも生まれてきます(図6)。

<図6> いろいろな形の1000
<図6> いろいろな形の1000

ヒエログリフによる数の表し方

 $~10~$のべき乗ごとに用意された7種類の数字を、必要な数だけ書くことで大きい数も表すことができました。

ヒエログリフによる 1~10

 まず、$~1~$~$~10~$については、図7の通りです。(カッコ内は読み方)

<図7> 1~10のヒエログリフ
<図7> 1~10のヒエログリフ

 注意点として、 $~1~$~$~4~$の数字は1段、 $~5~$~$~9~$ は2段で書かなければいけないというルールはなく、図8のように表すこともできます。

<図8> 4,7,9の別の表記
<図8> 4,7,9の別の表記

ヒエログリフによる 11~20

 $~11~$~$~20~$については、$~10~$と$~1~$を組み合わせることで表せます。

<図9> 11~20のヒエログリフ
<図9> 11~20のヒエログリフ

 図9では、左から十の位にしていますが、各位で使われる記号が違うため、図10のように一の位を左に書いても問題ありません。

<図10> 13 , 19 の別の表記
<図10> 13 , 19 の別の表記

ヒエログリフの数字の欠点

 以上のように、7種類の数字を必要な数だけ並べることでいろいろな数が表せるヒエログリフですが、以下のような欠点があります。

  • $~10000000~$以上の数が表せない。
  • 書くのが大変。

 数字は$~1000000~$までしか用意されていないため、表せる最大の数は$~9999999~$となります。

<図11> 9999999のヒエログリフ
<図11> 9999999のヒエログリフ

 そして、図11を見ればわかる通り、書くのが大変です。

 ちなみに、同時期のバビロニア(メソポタミア)では、どんなに大きな数でも表せる「位取り記数法」が出来上がっていました。

時代と共に数字も簡略化されていった

 ヒエログリフと並行してヒエラティックが発達し、紀元前660年頃にはデモティックが誕生しましたが、数字についても例外ではありませんでした。

ヒエラティックとヒエログリフの違い

 パピルスに書くために用いられたヒエラティックも、基本的には数字を必要な数だけ並べることで、さまざまな数を表すことができました。

 しかし、よく使う$~1~$~$~9~$に関しては、新たな数字として登場しています。

ヒエラティックの数字
<図12> ヒエラティックの数字


 文字が増えた分、覚える労力はかかるものの、ヒエログリフよりも圧倒的に素早く書くことが可能になりました。

リンド・パピルスやモスクワ・パピルスもヒエラティック

 
 リンド・パピルス(紀元前1650年頃)やモスクワ・パピルス(紀元前1890年頃)はヒエラティックを使って書かれました。

<図13> リンド・パピルス
<図13> リンド・パピルス
(出典:Paul James Cowie (Pjamescowie) / Public domain)
<図14> モスクワ・パピルス
<図14> モスクワ・パピルス
(出典:Русский: Иероглифическая транскрипция выполнена И.И. Перепелкиным.English: Hieroglyphic trascript is made by I. I. Perepelkin / Public domain)

 ヒエラティックは紀元前3000年頃~紀元前600年頃という長い期間使われていたため、時代を経るごとにより簡素な字体へと変化しています。

 そして、紀元前660年頃にデモティックという新たな文字体系が誕生。
 そのため、デモティックにおける数字の表し方についても同様と考えられます。

まとめ・参考文献

 古代エジプトで使われていた数字について解説してきました。

  • ヒエログリフの数字は絵に由来し、その数字を並べて数を表す。
  • ヒエラティックの数字では、$2$~$9$を表すものまで登場した。
  • 古代エジプトでは10進法が使われていた。

 これらの数字により、古代エジプトでは代数や幾何など、様々な分野の数学が発展しました。

 次の記事では、古代エジプトにおける加減乗除の方法を見てみましょう。

ヒエラティックより、ヒエログリフのほうがわかりやすいなぁ。

でも、役人が書類を書くときの手間を考えると、ヒエラティックのほうが効率的だよね。

参考文献(本の紹介ページにリンクしています)


 
 


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