数学史3-1 ~バビロニアの数学(歴史)~

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 四大文明の1つであり、数学史上では「バビロニア」と言い慣わされているメソポタミア文明。この文明の歴史の概要、そしてなぜ当時の数学が現代にまで伝わっているのかを解説します。

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Ⅰ バビロニア=メソポタミア?

 四大文明の1つであるメソポタミア文明は、チグリス川とユーフラテス川の河谷地域で発展しました。

四大文明(メソポタミア)
出典:白地図専門店より改変 / CC-BY-4.0

 紀元前4000年頃からシュメール人が住み始め、「楔形文字」という独自の文字を発明しています。
 
 チグリス川、ユーフラテス川の氾濫による肥沃な土壌を巡り、外敵の侵入が絶えなかったため、紀元前3000年頃になるとシュメール人がいくつかの都市国家を形成します。
 (エジプト文明と比較すると、エジプト文明は北に地中海、東・西・南は砂漠で、外敵に攻められにくいという点で大きな違いがある。)
 
 国家では、為政者が軍備や土地に関する情報を書記たちに計算させました。
 その中で研究好きな書記たちが、日常的に使用する四則計算以外にも数の研究を行い、数学として発展していきます。
 
 紀元前2000年頃、バビロニア人がこの地意識に侵入し、征服した都市の1つがバビロンでした。
 その後、バビロンを中心としたこの地域を「バビロニア」とも呼ぶようになったのです。

バビロニアの位置
出典:MarioM, Public domain, via Wikimedia Commons より改変

 特に、紀元前1750年頃のハンムラビ王朝では数体系が確立していたことから、
\begin{equation}
メソポタミアの数学 \fallingdotseq バビロニアの数学
\end{equation}
と数学史上では言い表しています。
 
 その後もこの肥沃な土地を巡って戦争が起き続け、紀元前539年にペルシャ人によってこの地域は占領されます。
 紀元前500年頃にはペルシャの完全な支配に入ったため、この頃までをバビロニアの歴史と定義することが多いです。

~メソポタミア文明 略年表~

B.C.4000頃 シュメール人が住み始め、「楔形文字」が発明される。
B.C.3500頃 シュメール人が家や寺院を建てて文明を形成。
B.C.3000頃 シュメール人が都市国家を形成。書記に数学的な役割が与えられる。
B.C.2000頃 バビロニア人が侵入し、バビロンを拠点とする。
B.C.1700頃 支配者ハンムラビがこの地域全体を征服。数学にも力を入れ、数体系を確立させた。
B.C.1600頃 ヒッタイト人、カッシュ人がバビロニアに侵入し、支配を行う。
B.C.1170頃 イラクのエラム人がバビロニアに侵入。
B.C.9世紀頃 北方のアッシリアが、バビロニアを含めた大国家を形成。
B.C.7世紀頃 カルディア人の血をひく王朝が、メソポタミア全土を支配し、バビロンを再興する。バベルの塔が建設される。
B.C.539 ペルシャ人による占領が始まる。
B.C.500頃 メソポタミア地域は、ペルシャ人の完全な支配下となる。

 
 2本の河川に挟まれたこの地域を巡り、争いが常に起こっていたことがわかります。


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Ⅱ バビロニアの記録方法は?

 エジプトでは「パピルス」という植物由来の紙のような物に、象形文字(ヒエログリフ)が記録され、当時の数学が現代にまで伝わっていました。
 
 バビロニアではパピルスの代わりに、川の泥を練って固めた粘土板に、スタイラス(葦の茎を切って作った筆記具)を押し付けることで、楔形の跡をつけました。
 これが「楔形文字」(下図)と呼ばれる所以です。
 

楔形文字
出典:See page for author, Public domain, via Wikimedia Commons

 楔形文字を粘土板に彫った後、粘土板を乾燥させ、天日干しで硬くすることで文字の跡を永久に保存しました。
 
 そのため。古都ニップルの一地区からだけでも、50000枚の書版が出土される等、エジプトよりも物的証拠の数に優れています。


  エジプトとは違う発展の仕方をしたんだね。
ふくすけ笑顔
うん。大量の書板から明らかになった当時の数学を、次回以降の記事で学ぼう。
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◇参考文献等
・上野健爾・三浦信夫監訳,中根美知代・高橋秀裕・林知宏・大谷卓史・佐藤賢一・東慎一郎・中澤聡訳(2009)『カッツ 数学の歴史』,pp.4-5,共立出版.
・中村滋・室井和男(2015)『数学史ーー数学5000年の歩み』,pp.40-42,共立出版.
・志賀浩二(2014)『数学の流れ30講(上)ー16世紀までー』,pp.7-13,朝倉書店.
・三浦伸夫・三宅克哉監訳,久村典子訳(2018)『メルツバッハ&ボイヤー 数学の歴史Ⅰー数学の萌芽から17世紀前期までー』,pp.21-23,朝倉書店.
・中村滋(2019)『ずかん 数字』,pp.52-57,技術評論社.
・アダム・ハート=デイヴィス(2020)『フィボナッチの兎 偉大な発見でたどる数学の歴史』,pp.18-20,創元社.

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Posted by Fuku