
黄金比が潜んでいる美しい正五角形。
学校では学ばないものの、実はコンパスと定規だけで作図する方法があるんです!
- 正五角形の作図方法
- 作図の本質
- 正五角形を紀元前から作図していた人物
Ⅰ 正五角形の作図方法
正五角形は、1つの内角が$~72^{\circ}~$という中途半端な角であり、一辺と対角線の長さの比が黄金比($~\displaystyle 1:\frac{1+\sqrt{5}}{2}~$)であることから、作図は難しそうに思えます。
しかし、この黄金比を巧みに作図することで、一辺の長さが与えられている正五角形は、次の方法で作図をすることができます。
与えられた線分$~AB~$の垂直二等分線$~\ell~$を書く。


$~AB~$と$~\ell~$の交点を$~L~$とする。
$~AB~$の長さをコンパスでとり、$~L~$からの距離が$~AB~$と同じになる点$~M~$を$~\ell~$上にとる。


$~M~$は$~AB~$の上側と下側のどちらでもよい。
$~B~$を中心とし、半径$~BM~$の円と半直線$~AB~$の交点$~N~$をとる。


$~LN~$の長さをコンパスでとり、 $~A~$を中心とした半径$~LN~$の円$~P~$と、$~B~$を中心とした半径$~LN~$の円$~Q~$を書く。


このとき、円$~P~$と円$~Q~$の交点が、正五角形$~ABCDE~$の頂点$~D~$となる。
$~AB~$の長さをコンパスでとり、 $~A~$を中心とした半径$~AB~$の円$~R~$と、$~B~$を中心とした半径$~AB~$の円$~s~$を書く。


このとき、円$~P~$と円$~R~$の交点が、正五角形$~ABCDE~$の頂点$~C~$となり、円$~Q~$と円$~S~$の交点が、正五角形$~ABCDE~$の頂点$~E~$となるため、$~ABCDE~$を結べば正五角形が出来上がる。
正三角形や正四角形、正六角形と比べて作図方法が複雑ですが、実際に書いてみると確かに正五角形っぽい図形が出来上がります。
Ⅱ 作図できる理由
理由を細かく解説する前に、正五角形の辺と対角線の関係について知っておく必要があります。
正五角形の辺と対角線の比は、$~1~:~\phi~$となる。
ただし、$~\phi=\displaystyle \frac{1+\sqrt{5}}{2}~$で、黄金数という。


証明については、正五角形と黄金比 で解説しています。
この図からもわかる通り、 $~\phi=\displaystyle \frac{1+\sqrt{5}}{2}~$の作図さえできれば、頂点$~C~,~D~,~E~$が以下の関係から求めることができます。


では、 $~\phi=\displaystyle \frac{\sqrt{5}+1}{2}~$ がどのように作図されるのかという点に着目しながら、先ほどの作図方法を分析してみましょう。
垂直二等分線により、$~L~$は$~AB~$の中点なので、$~AL=BL=\displaystyle \frac{1}{2}~$となる。


$~AB=1~$であるため、$~LM=1~$となる。


半径となる$~BM~$の長さは、三平方の定理より、
\begin{align*} BM&=\sqrt{\left(\frac{1}{2}\right)^2+1^2} \\ \\ &=\sqrt{\frac{5}{4}} \\ \\ &=\frac{\sqrt{5}}{2} \end{align*}
なので、$~BN=\displaystyle \frac{\sqrt{5}}{2}~$となる。


よって、
LN=\frac{1}{2}+\frac{\sqrt{5}}{2}=\frac{1+\sqrt{5}}{2}
で黄金数を長さに持つ線分$~LN~$が作られた。
$~A~,~B~$を中心として、半径の長さが$~LN= \displaystyle \frac{1+\sqrt{5}}{2}~$の円$~P~,~Q~$を書いているため、正五角形の対角線から、それらの交点は$~D~$となる。


$~A~,~B~$を中心として、半径の長さが$~AB=1~$の円$~R~,~S~$を書いているため、正五角形の対角線との交点が$~C~,~E~$となる。


$~\displaystyle \frac{1+\sqrt{5}}{2}~$の作図となると難しく感じますが、 $~\displaystyle \frac{\sqrt{1}}{2} +\frac{\sqrt{5}}{2}~$と捉えれば、中学校の知識だけで作図をすることができます。
Ⅲ ピタゴラスと正五角形の作図
ちなみに、紀元前の数学者ピタゴラス(Pythagoras , B.C.569頃-B.C.500頃)は、自分が作った宗教団体のシンボルマークに正五角形を採用し、その作図ができたことを誇示しています。




どのように作図をしたかまでは謎ですが、三平方の定理の証明をできた彼だからこそ、正五角形の作図もできたのでしょう。
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こういう複雑なことまで考えてあげれば、どんな正多角形も作図できそうな気がするにゃ。



いや、正七角形や正九角形は作図不可能であることが証明されているんだ。
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