正五角形と黄金比

人々が美しいと感じる黄金比。
正五角形に関する黄金比の性質を紹介します。
目次

Ⅰ 黄金比とは?

まずは黄金比そのものについて確認しておきます。

黄金比 次の値で表される比を黄金比という。
\begin{equation}
1:\frac{1+\sqrt{5}}{2}
\end{equation}
また、$~\displaystyle \frac{1+\sqrt{5}}{2}~$のことを黄金数といい、ギリシャ文字$~\phi~$(ファイ)で表す。

$~\displaystyle \phi=\frac{1+\sqrt{5}}{2}~$は無理数であり、近似値は
\begin{equation}
\phi =1.618033988~\cdots
\end{equation}
となります。
黄金比という名称は、ドイツの数学者マルティン・オーム(Martin Ohm, 1792-1872)によって付けられました。

ただし、黄金比の長さ自体の発見は紀元前の数学者ピタゴラス(Pythagoras, B.C.569頃-B.C.500頃)まで遡ります。

Pythagoras
出典:The original uploader was Galilea at German Wikipedia., Public domain, via Wikimedia Commons

ピタゴラスは黄金比の作図方法まで発見し、それを利用して書いた正五角形を自身の宗教団体のマークにしました。
このように、黄金比と正五角形は紀元前から密接に関わっていたのです。

ピタゴラス教団マーク

Ⅱ 正五角形の辺と対角線

では、正五角形の中に隠された黄金比とはどのようなものでしょうか?
まず1つ目として、辺と対角線の比が挙げられます。

正五角形の辺と対角線

 正五角形の辺と対角線の比は、$~1~:~\phi~$となる。

正五角形の辺と対角線

正五角形と黄金比を結び付ける最も有名な性質です。
証明では、二等辺三角形と相似をうまく利用します。

証明

正五角形の辺と対角線の証明①
正五角形の辺と対角線の証明②

正五角形$~ABCDE~$で、対角線$~AC~,~AD~$を引き、$~\angle ACD~$の二等分線と$~AD~$の交点を$~F~$とすると、下図のように角度が求まる。

対角線$~AC=x~$とおくと、$~\triangle ACD~$と$~\triangle CDF~$が二等辺三角形であるため、下図のように辺の長さがおける。

ここで、二角相等より$~\triangle ACD~$∽$~\triangle CDF~$のため、
\begin{align}
x:1&=1:(x-1) \\
x(x-1)&=1 \\
x^2-x-1&=0 \\
x&=\frac{1\pm\sqrt{5}}{2}
\end{align}
が求まり、$~x > 1~$から、$~\displaystyle x=\frac{1+\sqrt{5}}{2}=\phi~$となる。$~~\blacksquare~$

補助線の難易度こそ高いものの、中3で習う相似と二次方程式を利用して求めることができました。


Ⅲ 正五角形の対角線の分割

続いては、対角線の交点が作る黄金比についてです。

対角線の分割
正五角形の対角線の分割 正五角形の対角線は、それと交わる2本の対角線によって、$~\phi~:~1~:~\phi~$に分割される。
対角線の分割 全対角線

対角線をすべて引き、長さで色分けするときれいな模様になります。

内部にできる五角形の1辺の長さを$~1~$とすると、$~\phi~$の長さを持つ線分で星形ができているのが、美しいですね。

黄金比になることの証明は、Ⅱ章の計算結果を利用することで簡単にできます。

証明

対角線の分割 証明①
対角線の分割 証明②

正五角形$~ABCDE~$の対角線$~AD~$と、$~BE~,~CE~$の交点をそれぞれ$~F~,~G~$とする。

$~AC~$を引くと、Ⅱ章の証明より、次のように辺の長さがわかる。

したがって、
\begin{align}
DF&=AD-AF \\
\\
&=\frac{1+\sqrt{5}}{2}-1 \\
\\
&=\frac{-1+\sqrt{5}}{2}
\end{align}
であり、対称性から、
\begin{equation}
AG=DF=\frac{-1+\sqrt{5}}{2}
\end{equation}
となる。さらに、
\begin{align}
GF&=AF-AG \\
\\
&=1-\frac{-1+\sqrt{5}}{2} \\
\\
&=\frac{3-\sqrt{5}}{2}
\end{align}
である。以上より、
\begin{align}
&~~~AG:GF \\
\\
&=\frac{-1+\sqrt{5}}{2} : \frac{3-\sqrt{5}}{2} \\
\\
&=-1+\sqrt{5} : 3-\sqrt{5} \\
\\
&=\frac{-1+\sqrt{5}}{3-\sqrt{5}}:1 \\
\\
&=\frac{(-1+\sqrt{5})(3+\sqrt{5})}{(3-\sqrt{5})(3+\sqrt{5})}:1 \\
\\
&=\frac{2+2\sqrt{5}}{4}:1 \\
\\
&=\frac{1+\sqrt{5}}{2}:1 \\
\\
&=\phi : 1
\end{align}
となり、$~AG=FD~$より、
\begin{equation}
AG:GF:FD=\phi:1:\phi
\end{equation}
が求まった。$~~\blacksquare~$

以上のように、直接長さを求めると計算が大変なので、$~\phi~$を求めるための二次方程式である、$~x^2-x-1=0~$を作るという証明方法もあります。

別証

対角線の分割 別証

下の図のように、$~x~$をおく。

このとき、$~\triangle ACD~$∽$~\triangle CDF~$より、
\begin{align}
AD:CF&=CD:DF \\
(2x+1):(x+1)&=x:1 \\
(x+1)x&=2x+1 \\
x^2+x&=2x+1 \\
x^2-x-1&=0
\end{align}
であるため、$~x=\phi~$が求まる。$~~\blacksquare~$

こちらのほうが証明としてはエレガントです。


Ⅳ 正五角形に潜む黄金三角形

この記事内で何度も目にしている黄金三角形をまずは定義します。

黄金三角形 3つの内角が$~36^{\circ}~,~72^{\circ}~,~72^{\circ}~$である二等辺三角形を黄金三角形という。

これまで登場した正五角形の中に、何度も出てきました。
では、正五角形の中に一体いくつの黄金三角形が存在するのかを数えてみましょう。

大きな黄金三角形
中くらいの黄金三角形
小さな黄金三角形

大きな黄金三角形が5個

中くらいの黄金三角形が10個

小さな黄金三角形が5個

これほどまで多くの相似図形を含んでいるところにも黄金比の美しさを感じますね。


 値としては、$~\displaystyle \frac{1+\sqrt{5}}{2}~$という複雑な数だけど、正五角形の中で考えると美しいね。
ふくすけ汗
ピタゴラスが使いたがるのもわかるよね。
ただ、ピタゴラスは有理数でない$~\displaystyle \frac{1+\sqrt{5}}{2}~$の扱いに困っていたという一面もあるよ。

◇参考文献等
・三浦伸夫・三宅克哉監訳,久村典子訳(2018)『メルツバッハ&ボイヤー 数学の歴史Ⅰー数学の萌芽から17世紀前期までー』,pp.47-49,朝倉書店.
・ジョニー・ボール著,水谷淳訳(2018)『数学の歴史物語』,pp.34-38,SB Creative.
・Bertrand Hauchecorne,Daniel Suratteau(2015)『世界数学者事典』,pp.91-92,熊原啓作訳,日本評論社.
・ポール・パーソンズ、ゲイル・ディクソン(2021)『図解教養事典 数学』,p.93 , NEWTON PRESS
・マイケル・J・ブラッドリー(2009)『数学を切りひらいた人びと1-数学を生んだ父母たち』,p.43,松浦俊輔訳,青土社.
・ピエルジョルジョ・オーディフレッディ著,河合成雄訳(2021)『幾何学の偉大なものがたり』,pp.78-85,創元社.

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