ピタゴラス(Pythagoras)

数学者数学者

ピタゴラス(Pythagoras)
[古代ギリシャ]
・ピタゴラスの定理(三平方の定理)
・数の分類
B.C.572~497

目次

~生涯~

 B.C.
572
  サモス島(トルコの沖合の島)で生まれる。
 青年
時代
   タレスの指導の下、数学と天文学を学ぶ。
 20歳    エジプトとバビロニア(現イラク)を旅行し、そこで数学、天文学、哲学等を学ぶ。
 B.C.
529
  「ピタゴラス教団」という成人を対象とする学校を設立する。
→詳細(①ピタゴラス教団の制度
 教団での
研究
  「万物は数である」という信条の下、数の研究を行った。
→詳細(②数の異なる性質
→詳細(③数の分類
→詳細(④音階と分数
→詳細(⑤ピタゴラスの定理の証明
→詳細(⑥5つの正多面体
 B.C
500頃
 暴徒がピタゴラス教団の学校を焼き討ち。
ピタゴラスはその炎の中、亡くなったという説もある。
 B.C
497
 メタポントムという町で亡くなる。

~その他~

伝説   ・ピタゴラスは教えたがり!?
→詳細(⑦ピタゴラスの逆アルバイト

①ピタゴラス教団の制度

ピタゴラスは紀元前529年に、イタリア南部のクロトナという町で、「ピタゴラス教団」と呼ばれる成人向け学校を設立した。この学校では、2つの種類の学生がいる。

聴講生(アクースティキ)・・・授業に出席はできるが、質問することが許されていない学生。
テーマ学習者(マテマティキ)・・・自分の意見を述べることができる優秀な学生。

アクースティキは最低5年間勉強した後、優秀な者はマテマティキとなるという方式である。

また、この教団の学生は「ピタゴラス教徒」と呼ばれ、菜食主義、動物愛護、財産の共有、男女平等といった教祖であるピタゴラスの信念を反映する行動規則を守った。

ちなみに、教団のシンボルマークは黄金比が表れる、下図のような五芒星である。

教団には次のような怖い話もありました。

ピタゴラスの定理により、\( \sqrt{2}~\) という無理数が算出されたとき、万物が整数と分数で表させるというピタゴラスの信条に反していたため、教徒に決して口外しないよう誓いを立てさせた。
しかし、ヒッパソスという学生がその誓いを破って教団以外の人に無理数の存在を口にした後、ヒッパソスは謎の溺死を遂げた・・・。


②数の異なる性質

「万物は数である」をモットーにしていたピタゴラスは、全てのものは"数"が根本的にあると説き、数それぞれが持つ性質について述べた。
例を挙げる。

性質
1 あらゆる数の根幹。
2 ・女
・意見の相違
3 ・男
・合意による調和
4 平等、公平、正義
(4つの等しい辺、角である正方形に象徴される)
5 結婚
(5=2(男)+3(女))
7 魔法の数
(2から10の中で唯一、他の数の乗法・除法で登場しないから。
\( 2\times3=6,2\times4=8,3\times3=9~\)\(~,2 \times 5=10\))

この考え方が、ギリシャ文化のあたりまえの一部分を成すようになった。


③数の分類

ピタゴラスは、数の持つ数学的な性質についても研究を行った。数をいろいろな定義によって分類している。この考え方は、現在の数学の分野である「数論」の礎となっている。
★偶数と奇数

偶数 二等分できる数
2,6,10,14,28など
奇数 二等分できない数
3,7,11,19,25など

★偶数の分類

偶奇数 偶数のうち、奇数の2倍で表される偶数
18(\(=2\times 9~\)) ,34(\(=2\times 17~\))など
偶偶数 2だけを素因数にもつ偶数
4(\(=2^2\)),16(\(=2^4\)),128(\(=2^7\))など
奇偶数 上記にあてはまらない偶数
12 , 40 , 48など

★図形的な数の分類

三角数 正三角形となるように、並べられる数

ちなみに\( \displaystyle \frac{1}{2}n^2+\frac{3}{2}n+1 (n \in \mathbb{N}) \)で表される数とも言える。
正方形数
(完全
平方数)
正方形となるように、並べられる数

ちなみに\( n^2(n \in \mathbb{N},2 \le n ) \)で表される数とも言える。
矩形数 1辺の個数が、もう1辺の個数よりも1つだけ大きくなる長方形で並べられる数

ちなみに\( n^2+n(n \in \mathbb{N},2\le n) \)で表される数とも言える。

★約数の和による数の分類

完全数

数 = その数以外の約数全ての和

となる非常に珍しい自然数。
6・・・6の約数は、1,2,3,6。6=1+2+3 なので、6は完全数。
28・・・28の約数は、1,2,4,7,14,28。28=1+2+4+7+14 なので、28は完全数。
他にも、496と8128はピタゴラスが見つけた。

過剰数

数 < その数以外の約数全ての和

となる自然数。
12・・・12の約数は、1,2,3,4,6,12。12<1+2+3+4+6 なので、12は過剰数。

不足数

数 > その数以外の約数全ての和

となる自然数
15・・・15約数は、1,3,5,15。15>1+3+5 なので、15は不足数。

★珍しい数の組み合わせ

友愛数 2つの自然数について、それぞれのその数以外の約数の和が、相手の数と等しくなる組み合わせ。
220と284は友愛数
220の約数は1,2,4,5,10,11,20,22,44,55,110,220。
284の約数は1,2,4,71,142,284。
220=1+2+4+71+142
284=1+2+4+5+10+11+20+22+44+55+110

④音階と分数

ピタゴラスは整数についてだけではなく、分数についても調べた。その分数が、音楽の和音についても基礎となっていることを発見し、「万物は数である」という考え方をより強固なものへとしていった。
ピタゴラスが音階について発見したことをまとめる。

協和音について

・弦の長さが \(~2:1~\) である2つの弦から音を発生させるとき、2つの音が最も美しい協和音になる。(「完全8度の協和音」という)
・弦の長さが \(~3:2~\) である2つの弦から音を発生させるとき、2つの音が美しい協和音になる。(「完全5度の協和音」という)
・弦の長さが \(~4:3~\) である2つの弦から音を発生させるとき、2つの音が美しい協和音になる。(「完全4度の協和音」という)

弦の長さの比が単純であれば、2つの音の組み合わせが、人間にとって聞きやすい協和音になるという法則である。
この法則によって、ピタゴラスが作った「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」の弦の長さの関係を「ピタゴラス音階」という。それは、次のような弦の長さの比である。

ピタゴラス音階

次のような弦の長さの比により決まる音階をピタゴラス音階という。
\begin{align}
&\displaystyle ド:レ:ミ:ファ:ソ:ラ:シ:ド*    \\
\\
&=12:\frac{32}{3}:\frac{256}{27}:9:8:\frac{64}{9}:\frac{512}{81}:6   \\
\\
&=972:864:768:729:648:576:512:486
\end{align}

先ほどの協和音の法則によれば、
「ド」と「ド*」は完全8度の協和音。
「ド」と「ソ」は完全5度の協和音。
「ド」と「ファ」は完全4度の協和音。
「レ」と「ラ」は完全5度の協和音。
「レ」と「ソ」は完全4度の協和音。
「ミ」と「シ」は完全5度の協和音。
「ミ」と「ラ」は完全4度の協和音。
「ファ」と「ド*」は完全5度の協和音
「ソ」と「ド*」は完全4度の協和音。
ということになり、協和音の組み合わせがいろいろ楽しめる音階となっている。

※現在のピアノ等に使われている主な音階は「平均律音階」といい、次のような振動数(Hz)の比で表される。
\begin{align}
&\displaystyle ド:レ:ミ:ファ:ソ:ラ:シ:ド*    \\
\\
&=1:\sqrt[12]{2^2} :\sqrt[12]{2^4}:\sqrt[12]{2^5}:\sqrt[12]{2^7}:\sqrt[12]{2^9}:\sqrt[12]{2^{11}}:2 \\
\end{align}
ちなみに、
\begin{align}
&\displaystyle ド:ド\sharp:ミ\flat:ファ\sharp:ソ\sharp:シ\flat:ド*    \\
\\
&=1:\sqrt[12]{2^1} :\sqrt[12]{2^3}:\sqrt[12]{2^6}:\sqrt[12]{2^8}:\sqrt[12]{2^{10}}:2 \\
\end{align}
となる。(#や♭の使い方が間違ってたらすみません・・・。)


⑤ピタゴラスの定理の証明

ピタゴラスは、エジプトやバビロニアを旅行しているときに、下のような定理を習いました。

三平方の定理(ピタゴラスの定理)

上のような直角三角形で、次の等式が成り立つ。
\begin{equation}
a^2+b^2=c^2
\end{equation}

 ピタゴラスはこの定理が成り立つことを、初めて証明しました。
1辺 \(~a+b~\) の正方形をうまく分割し、その分割した図形の一部を回転させるという考え方です。
詳しくは三平方の定理の証明①(ピタゴラスの証明)をご覧ください。
 
※ただ、ピタゴラスはユークリッド以前の人であるため、証明が厳密であったかどうかは定かではありません。


⑥5つの正多面体

ピタゴラスは正多面体についての研究も行いました。当時知られていた正多面体は、正四面体、正六面体、正十二面体の3つでしたが、ピタゴラスは正八面体、正二十面体の作り方を発見し、さらに次のような性質を証明しました。

正多面体の数

正多面体は、正四面体、正六面体、正八面体、正十二面体、正二十面体の5つのみである。

証明

正多面体を作るためには、正 \(~n~\) 角形の面が\( r~\) 枚、1つの頂点を共有していなければならない。
(ただし、最小の正多角形は正三角形なので、 \(~n \ge 3~\) 、正多面体は立体なので、 \(~r \ge 3~\) である。)
 
正多面体を展開図にしたとき、1つの頂点に集まる正多角形の角の和は360°未満でないといけないため、
・面が正三角形(\(n=3\)で1つの内角が60°)のとき、1つの頂点に集まれる面の数 \(~r~\) は、 \(~r=3,4,5~\) となる。

・面が正四角形(\(n=4\)で1つの内角が90°)のとき、1つの頂点に集まれる面の数 \(~r~\) は、 \(~r=3~\) となる。

・面が正五角形(\(n=5\)で1つの内角が108°)のとき、1つの頂点に集まれる面の数 \(~r~\) は、 \(~r=3~\) となる。
 
つまり、
・\(n=3,r=3\)のとき、1つの頂点に3つの正三角形が集まる立体ということで、正四面体。
・\(n=3,r=4\)のとき、1つの頂点に4つの正三角形が集まる立体ということで、正八面体。
・\(n=3,r=5\)のとき、1つの頂点に5つの正三角形が集まる立体ということで、正二十面体。
・\(n=4,r=3\)のとき、1つの頂点に3つの正四角形が集まる立体ということで、正六面体。
・\(n=5,r=3\)のとき、1つの頂点に3つの正五角形が集まる立体ということで、正十二面体。
の5つしか、正多面体は存在しない。 \(~\blacksquare \)

しかし今日、5つの正多面体をまとめて「プラトン立体」と呼ばれている。プラトンが作った学校「アカデメイア」で、正多面体について学んだ学生が多く、その影響力が強かったことが原因とされている。


⑦ピタゴラスの逆アルバイト

ピタゴラスには、次のような伝説もある。

エジプトとバビロニアを旅して学んだことを、出生地であるサモス島で教えようとしたが、学生が集まらなかった。
そこで、ある少年に代金を払って生徒になってもらった。毎日、少年に自分の授業を受けてもらい、受けてもらった礼として、賃金を渡すということをした。つまり、少年にとっては、授業を受けられるし、お金ももらえるというバイトであった。
そのため、ピタゴラスの貯金は底をつき、少年に「授業は今日で終わり」と告げると、少年は「お金を払うので授業を続けてください」とピタゴラスに言ったという。


平方の定理については有名ですが、ピタゴラスは他にもいろいろなことを研究したようですね。特に最後のエピソードについては、ピタゴラスの教えたがりな姿勢、そして教え方の上手さが表れています。

   
 
 


☆参考文献等
・マイケル・J・ブラッドリー(2009)『数学を切りひらいた人びと1-数学を生んだ父母たち』,pp.29-48,松浦俊輔訳,青土社.
・ピタゴラスの画像→©Wikipedia(パブリックドメイン)
・「ピタゴラス音階」,< http://www004.upp.so-net.ne.jp/s_honma/music/music.htm > 2017年3月5日アクセス
・「Geogebra  ピタゴラスの定理(三平方の定理)の証明」<https://www.geogebra.org/m/XUjDX2A2#material/rqFBfWbx> 2017年3月5日アクセス

数学者数学者

Posted by Fuku