円と同じ面積を持つ正方形は作図できるか?
古代ギリシャにおける三大作図問題の1つである円積問題を考え始めたのは、天文学者アナクサゴラスでした。
この記事では、アナクサゴラスがどういった人物で、何をきっかけに円積問題に取り組み始めたのかを解説!
アナクサゴラスを円積問題へと導いたのは、神をも恐れない彼の探求心でした。
時代 | 紀元前500年頃~紀元前428年頃 |
場所 | ギリシャ |

アナクサゴラスの生涯
アナクサゴラス(Anaxagoras, B.C.500頃~B.C.428頃)は、イオニア地方のクラゾメナイで生まれた天文学者です。
多才な人物であり、天文学者以外にも哲学者や数学者の顔も持っています。

(出典:Eduard Lebiedzki, after a design by Carl Rahl, Public domain, via Wikimedia Commons)
アナクサゴラスの年譜
この時代の偉人たちに共通しているのは、細かい情報が残っていないこと。
しかし、アナクサゴラスの場合は、彼の思想の影響力や、アテネの有力政治家ペリクレスとの親交により、そこそこの量の情報が今に伝わっています。
クラゾメナイで生まれる
アテネに移る
太陽や月についての研究を行う
不敬罪として起訴され、牢獄暮らしとなる
神として扱われていた太陽を「石」と表現したことで、哲学者として異端扱いされた。
円積問題を考え始める
その中で楕円についても言及した。
友人ペリクレスにより釈放される
アテネから離れることを余儀なくされたため、ランプサコスへ移住した。
ランプサコスにて死亡
アナクサゴラスの活動場所
アナクサゴラスは、イオニア地方のクラゾメナイで生まれたため、「クラゾメナイのアナクサゴラス」と呼ばれることもあります。
若いときから財産をかえりみずに学問に専心し、当時のギリシャ文化の中心地であるアテネに移住しました。
不敬罪で投獄され、約16年の獄中生活を送った後、ランプサコスで余生を過ごしました。
アナクサゴラスの功績:円積問題を考え始めた
アナクサゴラスの数学的な功績は、三大作図問題の1つである円積問題を考え始めたことにあります。

円積問題とは円を正方形にする作図
円積問題は、次のような問題です。
1つの円の面積と等しい面積をもつ正方形を作図しなさい。

この問題は、古代エジプトの『リンド・パピルス』でも興味を持たれていたものです。
アナクサゴラスの後も、アンティフォンやヒポクラテス、ディノストラトスなどが円積問題を考えましたが、解決には至りませんでした。
1882年にドイツのフェルディナント・フォン・リンデマン(Ferdinand von Lindemann , 1852~1939)によって、作図不可能と結論付けられました。
アナクサゴラスは牢屋で考えた
アナクサゴラスは太陽と月を研究する中で、次のように述べました。

太陽はペロポネソス半島より大きい赤熱した石である。


この発言によって、当時の政治家たちはアナクサゴラスを不敬罪(神聖なものに対して敬意を欠いた罪)として起訴します。



自然は神々の力で成り立っているのだ。
太陽という神の偉大な力の賜物を「石」などとは……。
これは神への冒涜だ!!
このことをきっかけにアナクサゴラスは牢屋に入りました。
しかし、その飽くなき探求心から円積問題を考えるに至ったのです。
アナクサゴラスは、量を限りなく分割できるという意見も持っており、円積問題を解こうとする上で応用されたと考えられています。
アナクサゴラスのエピソード:ペリクレスによって捕まった?
紀元前443年から紀元前429年までアテネの将軍を務めたペリクレス。
アナクサゴラスは彼と、それ以前より懇意にしていました。


(出典:Vatican Museums, Public domain, via Wikimedia Commons)
ペリクレスのことをよく思っていなかった政治家たちが、ペリクレスを間接的に攻撃するためにアナクサゴラスを訴えて、牢獄に入れたという説があります。
そのため、アナクサゴラスはペリクレスによって釈放されたものの、ペリクレスがいなければ、そもそも目立たずに捕まることはなかったとも推測できます。



その場合、牢屋で円積問題を考えることもなくなり、アナクサゴラスという人物は数学史からは消えていたかもしれません。
まとめ
円積問題を考え始めた天文学者アナクサゴラスについて解説しました。
- アナクサゴラスは、太陽を科学的に考察した天文学者。
- 天文学の発表により、逮捕されたことで、円積問題が考えられ始めた。



アナクサゴラスは、月が太陽の光を反射して輝いていることまで見抜いていたよ。



科学によって現象を追究する姿勢がペリクレスの目にとまり、周りの目にもついたんだね。
参考文献(本の紹介ページにリンクしています)
- 『メルツバッハ&ボイヤー数学の歴史Ⅰー数学の萌芽から17世紀前期までー』,pp.59-61.
- 『世界数学者事典』,pp.9-10.
- 『ギリシャ数学史』,pp.92-93.
- 『学習まんが 世界の歴史②』, p.173
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