数学史4-1 ~紀元前のインド(歴史と数字)~

 現代数学を語るうえでは欠かせないインド。その紀元前の歴史と、当時使われていた数字について解説します。

←前回
数学史3-8 ~バビロニアの数学(平方根)~
次回→
数学史4-2 ~紀元前のインド(シュルバスートラ)~

目次

Ⅰ インダス文明を起源として

 エジプト文明やメソポタミア文明と同様、四大文明の1つであるインダス文明。
 その高度な文明は、紀元前 3000 年頃にはインダス川流域に興っていました。

インダス文明 地図
出典:Avantiputra7, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

 しかし、インダス文明は、紀元前1900年頃から衰退していきました。
 その原因の1つとして挙げられるのは、バラモン教との遊牧民であるアーリア人(アーリアン)による征服です。
 
 紀元前1000年頃に、アーリア人の言語で書かれた宗教書『シュルバスートラ』が、紀元前のインドの数学を伝える貴重な文献となっています。(ただし、現存しているのは、紀元前6~2世紀頃に編纂されたもの)
 
 「シュルバ」は「測定用の縄」を、「スートラ」は「宗教的儀式」を意味します。
 宗教的儀式のために縄を張る必要があり、そのときの縄の長さや囲まれた面積を考える中で、インドにおける数学が生まれたと考えられています。
儀式シルエット
 
 仏教が生まれた紀元前500年頃より、アーリアンの宗教的数学は衰退していき、順列・組合せ論へとインドの数学が変わっていきました。
 
 そして、紀元前3世紀頃からは異民族の侵入が繰り返され、紀元前のインド特有の数学は廃れていきました。


Ⅱ ブラーフミー数字

 現在見つかっている、インドで使われていた最も古い数字は、「ブラーフミー数字」と呼ばれ、現在我々が使っているアラビア数字($~1~,~2~,~3~,~\cdots~$)の直接の祖先となる数字です。
 
 紀元前4世紀頃には、このブラーフミー数字が使われていたことが確認でき、$~1~$から$~9~$に加え、$~10~,~20~,~30~,~\cdots~,~90~$、さらには$~100~,~1000~$を表す数字(記号)が用意されていました。
ブラーフミー数字
 エジプトやバビロニアと違い、$~1~$から$~9~$までの数字が用意されていたという点で、今のアラビア数字と親近感が沸くかと思います。
 
 これら以外の数は、乗法的記数法により表現されていました。
 
 乗法的記数法とは、その名の通り、かけ算によって数を表す方法です。
 下の例では、$~400=100\times 4~$,$~6000=1000 \times 6~$,$~10000=1000 \times 10~$というように、数字と数字を組み合わせた新たな数字(合字)でそれぞれの数を表しています。
ブラーフミー数字3
 ただし、$~200~$や$~300~$を表す数字は次のようになります。
ブラーフミー数字2
 「$~100~$は横棒$~0~$本追加されている」と考え、$~200~$なら横棒を$~1~$本、$~300~$なら横棒を$~2~$本、追加するため、上のような数字となります。($~2000~$や$~3000~$も同様の考え方です。)
 $~400~$以降は先の例で示した通り、$~400=100 \times 4~,~500=100 \times 5$と考えるので注意が必要です。
 
 この乗法的記数法は、多少の違いはあるものの、紀元前の中国と同じ記数法でした。
 
 ちなみに、$~0~$を表す数字や記号は無かったものの、紀元前と紀元後の境目くらいの時期に、黒い点を打つことで、$~0~$を意味するという文化があったようです。


 合字だと、微妙にもとの数字から変化しているのが気になるにゃ。
ふくすけ笑顔
 勝手な予想だけど、そうすることで合字であるということがわかりやすかったのでは?
 $~500=100 \times 5~$を分けて書くと、$~105~$になっちゃうから。 
←前回
数学史3-8 ~バビロニアの数学(平方根)~
次回→
数学史4-2 ~紀元前のインド(シュルバスートラ)~

◇参考文献等
・ヴィクターJカッツ著,上野健爾・三浦信夫監訳,中根美知代・高橋秀裕・林知宏・大谷卓史・佐藤賢一・東慎一郎・中澤聡訳(2009)『カッツ 数学の歴史』,pp.7,10,11,共立出版.
・中村滋・室井和男(2015)『数学史ーー数学5000年の歩み』,pp.130-131,共立出版.
・三浦伸夫・三宅克哉監訳,久村典子訳(2018)『メルツバッハ&ボイヤー 数学の歴史Ⅰー数学の萌芽から17世紀前期までー』,pp.205-207,朝倉書店.
・中村滋(2019)『ずかん 数字』,pp.86-87,技術評論社.
・西野芳治(2003)『古代インドにおける数字と記数法に関する一考察』(http://www.osaka-shinai.ac.jp/library/kiyo/37/nishino.pdf)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

数学の歴史 [ ヴィクター・J.カッツ ]
価格:20900円(税込、送料無料) (2020/12/13時点)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

数学史 数学5000年の歩み [ 中村滋 ]
価格:2200円(税込、送料無料) (2020/12/13時点)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

数字 [ 中村滋=監修 ]
価格:2948円(税込、送料無料) (2020/12/13時点)

よかったらシェアしてね!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次
閉じる