数学史5-3 ~紀元前の中国(算木)~

 古代中国では、数の計算に「さん」という道具を用いていました。
 その使い方について解説します。

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目次

Ⅰ 算木とは?

 古代中国で使われていた計算道具が、現代のそろばんの基にもなっている「さん」です。
 
 木製の短い棒を、一の位、十の位、百の位、・・・と位ごとに並べることで数を表すことができました。
 
 $~1~$から$~9~$を表す数字は2パターンあり、一の位、百の位、・・・といった$~10~$の偶数乗を表すときには、以下のような「縦式」の並べ方を使いました。
算木1~9(縦式)
 $~6~$以降では、$~5~$の向きが変わっているのが、そろばんと似た雰囲気を感じます。
 
 縦式に対し、十の位、千の位、・・・といった$~10~$の奇数乗を表すときには、以下のような「横式」の並べ方を使いました。
算木1~9(横式)
 位ごとに縦横交互に並べることで、ケタの見間違いを防ぐと共に、算木を置かないことで”$0$”を表すこともできました。
 
 また、赤い算木は正の数を、黒い算木は負の数を表します。
 数の例をいくつか見てみましょう。
いろいろな数
 ちなみに、一の位が縦式、十の位が横式、百の位が縦式、・・・となったのは、紀元後400年頃からで、算木が使われていた証拠の残る紀元前2世紀頃は、一の位が横式、十の位が縦式、・・・と真逆の置き方をしていました。
 
 また、一の位の右側にも算木を置くことで小数点以下の位を表したり、碁盤のようなマス目上で算木を使ったりと、時代を経るごとにより便利で応用力の高い道具へと変化していきました。


Ⅱ 計算方法

 算木を用いることで、たし算ひき算だけでなく、かけ算わり算や方程式等まで幅広く計算を行うことができました。
 
 ここでは、たし算とかけ算の仕方について図説します。

$~27+6~$の計算

① $~27~$と$~6~$を1行目と2行目にそれぞれ置く。
和の例①
② 一の位の$~7~$と$~6~$を足すと$~13~$なので、十の位に$~1~$、一の位に$~3~$を置く。
和の例②
③ 十の位の$~2~$と$~1~$を足すと$~3~$なので、十の位に$~3~$を置く。
和の例③
④ 3行目から、$~27+6=33~$とわかる。

 繰り上がりの考え方も含め、今の筆算と同じように計算しています。

$~52+ \times 9~$の計算

① 1行目に$~52~$、3行目に$~9~$をそれぞれ置く。
積の例①
② 十の位の$~5~$と$~9~$をかけると$~45~$なので、2行目の百の位に$~4~$、十の位に$~5~$を置く。
積の例②
③ かける数である$~9~$を一の位に移す。
積の例③
④ 一の位の$~2~$と$~9~$をかけると、$~18~$なので、2行目の十の位に$~1~$を加え、一の位に$~8~$を置く。
積の例④
⑤ 2行目から、$~52+ \times 9=468~$とわかる。

 こちらも筆算と同じ原理ですね。
\begin{align}
52 \times 9 &=(50+2) \times 9 \\
&=450+18 \\
&=468
\end{align}
で計算しています。
 筆算のように、数字を書きながらの計算ではないものの、計算結果は漢数字で記録されました。
 
 『九章算術』にも負の数が登場していて、どの文明も言及しなかった負の数の概念に、古代の中国人は慣れていたと推察できます。


 横式の$~1~$から$~4~$、甲骨文字の$~1~$から$~4~$と似ているね。
ふくすけ笑顔
 それもそのはず。算木を並べた形をそのまま文字にしたからだよ。
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◇参考文献等
・ヴィクターJカッツ著,上野健爾・三浦信夫監訳,中根美知代・高橋秀裕・林知宏・大谷卓史・佐藤賢一・東慎一郎・中澤聡訳(2009)『カッツ 数学の歴史』,p.9,共立出版.
・中村滋・室井和男(2015)『数学史ーー数学5000年の歩み』,pp.135-137,共立出版.
・三浦伸夫・三宅克哉監訳,久村典子訳(2018)『メルツバッハ&ボイヤー 数学の歴史Ⅰー数学の萌芽から17世紀前期までー』,pp.195-198,朝倉書店.
・中村滋(2019)『ずかん 数字』,pp.70-77,技術評論社.
・ジョニー・ボール著,水谷淳訳(2018)『数学の歴史物語』,pp.174-177,SB Creative.

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